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ドリトル先生の林檎園

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第四幕その六

「殺し合いまではなかったからね」
「殺し合わないだけましよね」
「身内同士でそんなことがないだけ」
「やっぱりそうしたことあったら酷いから」
「周りから見ても」
「そう、だから僕は源氏より平家の方が好きかな」
 どちらかというと、というお顔でした。
「そして清盛さんがね」
「先生頼朝さん好きじゃないしね」
「そのことははっきりわかるよ」
「自分でも言ってたしね」
「そうしたことを」
「悪い人とはね」
 決してというのです。
「本当に思わないからね」
「義仲さんと同じで平家物語じゃ悪く書かれていても」
「やっぱり物語は物語で」
「史実を読むと悪い人じゃない」
「だからだね」
「そうなんだ、物語は面白くて」
 それでというのです。
「読んでいて楽しいしこれも学問だけれど」
「文学だよね」
「そうだよね」
「だから先生も読んでるよね」
「平家物語も」
「だからいいけれど」 
 それでもというのです。
「史実はまた違うんだ」
「物語と史実はだね」
「また違うんだね」
「そこをわかっていないとね」
「駄目っていうんだね」
「そうだよ、物語に罹れていることを全部史実と思うと」
 こうしたことをすると、というのです。
「駄目なんだよ」
「そういうことだね」
「つまりはね」
「先生もそのことがわかってるから」
「それでだね」
「今こう言うんだね」
「そうなんだ、平家物語の清盛さんは悪人だけれど」
 物語を通じての悪役とです、先生は思っています。
「けれどね」
「その実はだね」
「清盛さんは悪人じゃなくて」
「実はいい人なんだね」
「木曽義仲さんも物語と違う人だね」
「そう、物語は物語で」
 遠くを見る目になって言う先生でした。
「史実は史実なんだよ」
「その違いをわかっておかないとだね」
「間違えるんだね」
「清盛さんも義仲さんも誤解する」
「物語みたいに悪人と思ってしまうんだね」
「そうだよ、ただ頼朝さんは」
 この人はといいますと。
「平家物語でも史実でもね」
「いい人じゃないんだね」
「あの人については」
「まず身内を殺して」
「敵を根絶やしにする人で」
「そうなんだ、いい人とはね」
 到底というのです。
「思えないよ、陰気な人だね」
「史実でもそうなんだね」
「頼朝さんの場合は」
「先生が言うには物語と史実は違っているけれど」
「頼朝さんは違うんだ」
「敵は絶対に許さないで陰気な人なんだ」
「そうなんだよね、織田信長さんみたいなところもね」
 そうしたところもないというのです。
「ないしね」
「先生が言うには信長さんは降った敵は許してるしね」
「先生が言うには」
「敵を根絶やしにまではしないから」
「だから頼朝さんよりずっといいんだ」
 この人についてはというのです。 
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