戦国異伝供書
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第六十四話 婚礼の話その七
「麿にも」
「それは何よりです」
「まだ先かと思っていたでおじゃるが」
それがというのだ。
「それがでおじゃる」
「急にですな」
「そして元服もでおじゃる」
このこともというのだ。
「決まったでおじゃる」
「そのことも」
「そなたと同じでおじゃるな」
「左様ですな」
「さて、それででおじゃるが」
「奥方様を迎えられ」
「元服したらでおじゃる」
それからのこともだ。彦五郎は竹千代に話した。
「麿もいよいよでおじゃる」
「今川家の次のご当主として」
「政や戦に入っていくでおじゃる」
「学ばれるだけでなく」
「そうなるでおじゃる、ただ」
ここで彦五郎は難しい顔になって話した。
「麿は戦では」
「剣術はお得意ですな」
「好きおじゃるしな、しかし」
「大将のすべきことはです」
「兵法でおじゃるな」
「その通りです」
「しかし兵法は」
どうしてもというのだ。
「好きになれずでおじゃる」
「兵法については」
「どうしてもでおじゃる」
学んでもというのだ。
「身につかないでおじゃる」
「それでもです」
竹千代は眉を顰めさせる彦五郎にさらに話した。
「剣術だけでなく」
「兵法もでおじゃるな」
「もっと言えば剣術よりも」
「馬術に水練でおじゃるな」
「そちらはお好きで」
彦五郎はというのだ。
「お見事ですが」
「やはり兵法でおじゃるな」
「そのことです」
彦五郎が元服してからも学ぶことはというのだ。
「そう思いまするが」
「竹千代の言う通りでおじゃる」
彦五郎は竹千代のその言葉をよしとして述べた。
「ではでおじゃる」
「はい、学ばれて下さい」
兵法もというのだ。
「その様に」
「それでは」
「はい、これからは」
「そうするな」
彦五郎は素直に頷いた、そうして彼も兵法を学んだが雪斎は義元に彼のそちらのことについて話した。
「兵法はどうも」
「左様か」
「幸い政のことはお見事ですが」
「戦のことはじゃな」
「剣術はお得意で馬術や水練も出来まするが」
それでもというのだ。
「こと兵法は」
「そこは麿似いや」
義元はここで自分の言葉をあらためて述べた。
「麿の癖が一層な」
「出ているとですか」
「思ったが」
「左様でありますか」
「どうであろうか」
「お言葉ですが」
こう前置きしてだった、雪斎は義元に答えた。
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