戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
戦姫絶唱シンフォギア
第0楽章~前日譚~
はじまりは何気なく
前書き
今回はハーメルン時代、あやひーさん結婚記念回として書いたクリスの幼少期エピソード。
クリス、そして彼女の王子様となるオリキャラの「はじまり」をどうかご覧あれ!
今でもあの日を、僕は鮮明に思い出す。
それは、約束の日。幼き日の遠い記憶の中。
僕が今の僕を目指したスタート地点。そんな、とある日曜日のお話。
「ジュンく~ん、これどうするの?」
集めたシロツメクサを束ねながら、彼女がそう聞いてくる。
日曜日のお昼下がり、公園の端っこにあるクローバーの密集地帯。
青空を彩る柔らかな陽射しが照らす中で、小さな2人が遊んでいた。
1人は金髪をショートにした碧眼で、大人しそうな顔つきをした男の子。小さい頃の僕だ。
もう1人は銀髪を後頭部でツインテールにまとめた、お人形のような可愛らしさを振りまく女の子。クリスちゃんだ。
バイオリン奏者のお父さんと、声楽家で外国人のお母さんの間に生まれたクリスちゃんは、ピアニストの父さんと、声楽教師の母さんを持つ僕の家とは、家族ぐるみで仲が良かった。
今日もこうして、公園でシロツメクサの冠を作って遊んでいる。
「そこはね、ここをこうして……」
「わぁ、すご~い!」
本当に、僕はあの頃から彼女が好きだったんだろう。
だって、彼女が喜ぶ顔が見たくて、次に会える日までにって母さんと何度も練習して、コツを覚えたんだから。
出来上がったシロツメクサの冠を、クリスちゃんの頭にのせる。
クリスちゃんは大喜びで、その大きな目を輝かせた。
「クリスちゃん、まるでおひめさまみたい」
「本当!?あたし、おひめさま?」
「うん。とってもにあってるよ」
シロツメクサの冠を頭に、くるりと回って見せる彼女に微笑みながら、僕はそう答えた。
するとクリスちゃんは、何か思いついたような顔でもう一度座り、自分が作っていたシロツメクサの冠を手に取ると、再びその茎を編み始める。
「できた!」
やがて、クリスちゃんの冠も完成した。
僕が作ったものに比べて、少し形が崩れてはいるけれど、彼女が一生懸命作ったのはよく伝わってきていた。
「はい、ジュンくん。これあげる!」
「これ、ボクに?」
「うん!ほら、これでおそろい!」
そう言って立ち上がった彼女は、僕の頭にそれをのせた。
雪のような銀髪を春風になびかせ、その小さな顔に満面の笑みを浮かべながら。
「あたしがおひめさまだから、ジュンくんはおーじさま!」
「おうじさま?ボクが、クリスちゃんの?」
「うん!だってジュンくん、とってもおーじさまっぽいんだもん!」
「ボクが、おうじさま……。うん、それならボク、クリスちゃんのおうじさまになる!」
あの頃の僕らは幼かったから、この言葉にも特に深い意味はなかった。
でも、この時の言葉がこの後、僕に大きな影響を与えることになるなんて、この頃の僕は知る由もなかった。
それはきっと、彼女も同じだったと思う。もっとも、それを知ったのはかなり後になってからだったんだけど。
「クリスちゃん、手を出して」
「え?」
クリスちゃんの指に、余ったシロツメクサで作った指輪をはめる。
母さんから作り方を教わった時に、相手の左手の薬指にはめるのが決まりだって聞いてたから、その意味を知らなかった僕は迷わずクリスちゃんの左手の薬指に、その指輪をはめた。
「わあ……」
「やくそく。おおきくなったらボク、ほんもののおうじさまになる。そして、クリスちゃんをむかえにいくよ!」
「ほんとう!?じゃあ、やくそくね!あたしもおおきくなるまでに、もっときれーになってまってるから!」
ゆびきりげんまん、交わした約束。
子ども同士の何気ない、ただの無邪気さの表れだったはずのそれは……いつか、僕と彼女の心を繋ぎ止める支えになった。
どれだけ離れていても、どれだけ挫けそうでも。
寝ても冷めても忘れられなくても、心の片隅に忘れていても。
「幸運」と「約束」の花が飾る記憶は、「復讐」に駆られて引き金に指をかける彼女の胸にもきっと、僕の存在を強く刻み込んでいる。
後書き
シロツメクサの指輪って定番ネタだけど、シロツメクサの花言葉までは知ってる人分かれる気がする。
「幸運」「約束」「復讐」、そして「私を思って」の4つ。
ここに四つ葉のクローバーを加えると、「希望」「信仰」「愛情」「幸福」の意味が加わります。
そして指輪も当然、はめる指によって意味が変わりますし、左右でも意味が変わります。
左手の薬指の指輪、その本来の意味は……おっと、これは改めて調べてもらえばなと。
それではまた、次の更新で会いましょう。
ページ上へ戻る