渾沌の死
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第三章
次の日はもう片方の目、耳を片方ずつに鼻もそうした。すると渾沌は匂いを直接嗅ぐことが出来て聞くこともだった。
直接聞くことが出来る様になってこう述べた。
「これはいい」
「そうか、ではな」
「いよいよ最後だ」
「最後は口だ」
「直接話せる様にしよう」
「楽しみだ、しかし」
口だけがない、それで喋ることは出来ずそれだけは心で直接話した。
「何かありそうだ」
「あるとは?」
「どうしたのだ?」
「私は目も耳も鼻も口もないのが普通だ」
それでというのだ。
「そこにこうして加えるとな」
「何かあるとか」
「そう思うのか」
「ふとそう思うが」
それでもと言うのだった。
「どうだろうか」
「いや、別にだ」
「何もないだろう」
「それよりも明日は口だ」
「これで貴殿は直接喋られる様になるぞ」
二人の天帝はもう一人の天帝である渾沌に笑って話した、そして最後の日にだった。二人でその顔に口も入れたが。
その瞬間にだった、渾沌はゆっくりと後ろに倒れ。
そのまま動かなくなった、二人はそれを観て驚いて話した。
「死んだか」
「その様だな」
「うむ、これはな」
「死んでしまったぞ」
「これはどういうことだ」
「何故死んだのだ」
「どうもだ」
ここで渾沌の身体から何かが出て来た、見れば元の何もない顔のままの渾沌だった。その渾沌の魂が二人に言ってきた。
「本来ないものを入れてだ」
「見や耳や鼻や口か」
「それをか」
「それを入れたからか」
「貴殿は死んだのか」
「そうだ」
こう二人に話すのだった。
「どうやらな」
「では口や鼻を消すとか」
「そうなるとか」
「貴殿は蘇るのか」
「そうなるのか」
「そうかも知れない、ではな」
こう話してだ、そうしてだった。
渾沌は二人にこれまで入れた目や耳を消す様に申し出た、二人はその申し出に従ってそのうえでだった。
目や耳を消すとだ、実際にだった。
渾沌は蘇った、そのうえで二人に心から話した。
「思った通りだったな」
「うむ、そうだな」
「実際にだったな」
「貴殿は目や耳を入れるとよくなかったな」
「それで死んでしまったな」
「七つの穴を全て入れると」
「そうなったな」
二人の天帝も話した。
「実際にな」
「これはよくないな」
「そうだな」
「このことはな」
「私はもう見聞き出来る」
心でだ、それが出来ているというのだ。
「そして死なないし死んでも生き返る神だから食べる必要もない」
「ならだな」
「最初から必要なかったな」
「それを入れたからか」
「余計なことをしたからだな」
「かえってよくなかった」
「そういうことだな」
二人も納得した顔で述べた。
「このことでよくわかった」
「変に付け加えたりすることはよくない」
「かえってよくないことになったりもする」
「貴殿を一度死なせてもらってよくわかった」
「では返礼は別の形でしよう」
「何か考えよう」
「そうか、ではそのお礼を楽しみにしている」
渾沌は二人の善意はわかった、それが強いことも。それでこう答えたのだ。
かくして三人の天帝は別の形でお礼を受けて取り親睦を深めていった。そしてこの度のことで得た教訓を深く心に刻むのだった。最初からあるものに変に付け加えたりすることよくはないそれで問題ないのなら自然のままでいいということを。
渾沌の死 完
2019・2・13
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