| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

オコジョガール

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第七章

「お前礼儀正しいな」
「そうですか?」
「ああ、まだ若いのにな」
 それでもというのだ。
「しっかりしてるな」
「そうですか」
「元気もいいしな」
 このことは持ち前のことだった。
「見どころあるな」
「それで、ですね」
「これからも頑張っていけよ」
「そうさせてもらいます」
「こっちこそな」
 こう職場の先輩に声をかけられた、そしてだった。
 この先輩とやがて付き合うことになり結婚も決まった、それで真花は高校時代からの友人達に対して話した。
「礼儀正しいってね」
「そういう風になの」
「言われてなの」
「それでなの」
「そうなの、少なくともガサツとはね」
 その様にはというのだ。
「言われてないから」
「結婚する人に」
「そうなの」
「言われてないの」
「そうなの、高校時代と違って」
 その頃はというのだ。
「元気がいいっては言われるけれどね」
「それはまたね」
「随分とね」
「変わったのね」
「ええ、礼儀正しくて」
 実際に職場ではこう言われている。
「元気がいいって」
「そうなのね」
「そう言われてるのね」
「職場だと」
「ええ、お家の中でもね」
 そこでもというのだ。
「礼儀正しくなったって」
「お行儀がどうかじゃなくて」
「礼儀作法なのね」
「それがよくなったっていうのね」
「学生時代本当にね」
 実際にというのだ。
「ガサツだけだったけれど」
「あの時茶道して」
「マナーやエチケットの本も読んで」
「そういうの勉強して」
「結局お行儀はよくならなかったけれど」
 それでもというのだ。
「いや、本当にね」
「礼儀作法は身に着けて」
「それがいいって言われて」
「ご主人にもなのね」
「褒められて」
 そしてというのだ。
「一緒になったの」
「そうなのね」
「それは何よりね」
「本当に」
「ええ、オコジョのままでも」
 それでもというのだ。
「礼儀作法がよかったら」
「それでよし」
「そういうことね」
「ガサツでも」
「そのガサツさもよくなってるでしょ」
 真花はこうも言った、今彼女は友人達と共にカレー屋でカレーを食べながら話している。真花はカツカレーを食べつつ友人達に尋ねた。
「そうでしょ」
「まあね」
「高校時代は頬っぺたにご飯粒付いてたけれど」
「それもなくなったし」
「ましになったわ、だからオコジョでもね」
 ガサツでもというのだ。
「やるだけやってみるべきよ」
「多少でもよくなるし」
「他のいいものも備わったりするから」
「やってみることね」
「そういうことだと思うわ、じゃあ式の時またね」
 笑顔でだ、真花は友人達に話してだった。
 右手のスプーンでカレーを食べた、その動きはお世辞にもお嬢様のものではないがそれでもだった。頬っぺたに米粒は付いていないし口元も然程汚れてはいない。高校時代の彼女とは確かに違っていた。マナーを学んだ分だけ。


オコジョガール   完


                 2019・6・15 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧