架空戦記~東洋海戦争1941~
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第七話「帰還」
~イハワ王国side~
「回避しろ!決して直線的に艦を動かすな!」
戦艦カウアイ艦長、第一主力艦隊臨時司令は怒鳴り声をあげながら指示をしていく。本来ならうるさいと思うその声量も先ほどから降り注いでいる敵艦隊の砲弾の雨でかき消されていた。
敵の大編隊が撤退としたとおもったら新たに現れた艦隊。撤退行動に移っていた第一主力艦隊は満足な反撃も出来ず今は戦線の離脱を急いで行っているところであった。しかし、敵は執拗に追いかけてきており軽、重巡洋艦が一隻ずつ沈んでいた。戦艦カウアイも被弾しており速度も低下していた。それでも逃げ切れると信じて指示を出し続ける。
その一方で葦原中国の第三戦隊はイハワ王国海軍を守るように殿を務めていた。戦艦がいない第三戦隊だが重巡洋艦愛宕を中心に大口径の主砲を持つ重巡洋艦が中心となって敵にダメージを与えたりこちら側に攻撃を誘導してくれていたりした。
しかし、そんな第三戦隊を無視するような形で一部の艦がイハワ王国へと追撃を行っていた。
「くっ!(敵との距離が近すぎる!これでは振り切る事など…)全艦隊に通達!回避航行を止めて全速で離脱するのだ!」
遂に臨時司令はこの決断を下した。現状回避航行をしているせいで距離は開かずこのままでは引きはがす事は不可能と判断したからである。この命令を受け第一主力艦隊は全速離脱を図る。
そんな第一主力艦隊を逃がすまいと第三東洋艦隊は執拗なまでの砲撃を行ってくる。艦の脇に着弾する度に当たらないでくれと船員たちは願っていた。しかし、彼らの願いは新たな艦隊の出現と言う方により叶う事は無かった。
「新たな敵艦隊を発見!巡洋艦10!駆逐艦15!…その後方に空母5!敵の機動艦隊です!」
「何だと!?」
その報告に臨時司令は驚く。なぜならここにいないはずの空母機動艦隊が出現したのだから。
現在神星ルドワ帝国の空母は全て侵略している中央海に展開していた。ブリテンタニア連合王国の植民地であるインディアに攻め入ったためブリテンタニア連合王国が誇る国王の艦隊に対処する為に全て中央海に配置されたからである。
その為敵の空母機動艦隊の出現に驚いたのである。
「くそっ!どおりで敵の大編隊が来たわけだ!空母がいるなら我らは三次元で攻撃を受ける事になる…」
臨時司令の額を汗が流れる。
「ここから離脱するのに一体何隻が沈むのか…」
臨時司令は自分たちの生存確率が低いと薄々感じながらも必死で離脱する。そうしている間にも空母からは艦載機が出てくる。そして二度目の敵航空機による攻撃を第一主力艦隊は受ける事になるのだった。
統合歴1941・4/30・17:00
陽が沈み始めた頃第一主力艦隊は真珠湾へと帰還した。しかし、その規模は艦隊と呼べるほどではなくなっていた。戦艦3、重巡洋艦3、軽巡洋艦5、駆逐艦5。これらは沈められた艦の数である。結局敵艦載機の猛攻の前に戦艦オワフ、カウアイは撃沈、巡洋艦も防ぎきれず残ったのは足の速く一番先頭にいた五隻のみだった。その五隻も小破以上のダメージを受けておりドックで修理しなければいけない状況にあった。ここにイハワ王国は主力艦隊の全てを失い海軍戦力を大幅に低下させるのであった。
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