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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第十七話




――あのルバーブ連山の出来事から数日、事態は大きく進展していた。

まず一つ。リタの研究で、以前から生物変化をしていたコクヨウ玉虫のドクメントが侵食されている事が分かった。
それで分かった事は、赤い煙はこの世界には存在しない『異質なドクメント』という事であった。
しかも自分も相手も、ドクメントを自在に変化させてしまう。それはまるで、『願いを叶える』事によって相手の想いに触れ、ドクメントを覗き見、学び、進化しているようにも見えるらしい。


そして、もう一つ。それは……。



「――国の方でそんな事が……」


「――えぇ、相当、大変みたいよ」

アンジュから聞いた話に僕がそう呟くと、アンジュはそれに溜め息して応えた。

つい先程このアドリビトムに来た、『ジアビス』で有名なジェイド、ティア、ナタリアの国、『ライマ国』で、『暁の従者』の導引による、暴動が起こったらしいのだ。
聞けば、暁の従者の信者は皆、人を超えた異様な力を持っていたらしく、国民はそれによって信者に煽られ、城を攻めたらしい。
異様な力……多分、あの赤い人影から受け取ったんだろう。


『――貴様等、ディセンダー様を私欲に使い、独占する気だな!?――』


不意に脳裏をよぎった、ルバーブ連山で暁の従者に言われた言葉を思い出して舌打ちする。

くそっ……独占して私欲に溺れてるのは…アンタ達の方じゃないかっ!!


「――それで、ジェイドから話を聞いて暁の従者の拠点が分かったわ。それで今、その場所に向かうのにメンバーを決めてるんだけど……衛司はどうする?」


僕が小さく俯いていると、アンジュがそう言葉を出した。
暁の従者の拠点……多分、あの赤い人影の正体が今度こそ分かるんだろう。
だけど……僕はそれ以前に……。


「――うん、それじゃあ、僕も行くよ。『暁の従者』に……面と向かって、はっきり…言いたい事があるから」


僕の返答に、アンジュは一言、『分かった』と言うと他のメンバーを探しに歩き出した。
そう、僕はただはっきりと、あの暁の従者に言わなきゃいけない……『国の為を思ってディセンダーの力を借りて、国を救おう』と言う言葉の『矛盾』を言ってやる為に…。









――――――――――――


――『アルマナック遺跡』。過去にディセンダーを祀っていた遺跡らしく、暁の従者は此処を拠点にしているらしい。

結局、メンバーは僕、メリア、アンジュ、ジェイドとなった。


それにしても……。



「…………なぁんか……イライラする」


思わず、溜め息を出すと同時にそんな言葉が漏れた。
つい先程、このアルマナック遺跡に入って暁の従者の会話を立ち聞きしたけど……『手から金を出した』、『裏切り者に罰を与えて下さいと願った』、『司祭クラスの許可がないと会えない』……どいつもこいつもふざけてるんじゃないだろうか…?



「――……衛司…大…丈夫……?」


ふと、そんな声の後、服の袖を引っ張られる感覚に見ると、メリアが心配そうに此方を見ていた。
…いけない、また顔に出ちゃってたかな…。


「……うん、僕なら大丈夫だよ。……ありがとう、メリア」


「……ん……」


心配そうな表情をするメリアの頭を撫でてそう言っておく。メリアもそれで分かったのか小さく頷いた後、心地良さそうに頭を撫でられていた。
と、言うか……メリアって本当、頭を撫でられるの好きだな。


「――はいはーい、そこのお二方。いちゃついてるのも構いませんが、先に進みますよー」



「ブッ!?」


此方をかなり悪そうな笑みを浮かべたジェイドが出したそんな言葉に思わず吹き出す。


「あのですね、ジェイドさん……僕は別にメリアとはそうそう関係じゃ…」


「おや、違いましたか?こんな場所でやけに仲良く頭を撫でていたのでそう思ったんですが……いやいや、若いとはいいですねー」


「――だから違うんですってっ!!」


いらぬ誤解を生み出しているジェイドに、それを否定する僕。クスクスとジェイドの隣で笑うアンジュに、否定している僕をどこか不機嫌そうに見ているメリア。
はっきり言おう……なんだ、このカオス。

そんな感じで…僕達はアルマナック遺跡を奥へと歩き続けていた。









―――――――――――――

『――おい、これ見てくれよっ!!』


「――…今のは……?」


「――…どうやら、奥からのようですね…」


暫く歩いていると、広いエリアにつき、不意に奥から聞こえた声にそう言うと、警戒しながら奥を覗き込む。すると目に入ったのは……二人の暁の従者が居て、片方が大きな岩を浮かしている姿であった。


「……あれは……」


「恐らく、『ディセンダー様』とやらの力でしょう。我々の国で暁の従者が使っていた異様な力と似てますし」



「そうみたいね……とりあえず、あの人達からその『ディセンダー様』の事を聞きましょうか」


そうアンジュが言った僕達は頷くと、暁の従者の二人に歩み寄っていった。
暁の従者もそれで僕達に気付き此方を振り向く。


「んっ、何だお前達は?我々の同志になりに来たのか?」


「いいえ、そうではないの」


「じゃあ、何の目的で来たんだ?」


「あなた方がディセンダーと呼んでいるものを引き渡してもらいます」


ジェイドのその一言で、暁の従者の目が変わり、此方を警戒するように睨み付けてきた。


「あれは、ディセンダーなんかじゃないの。もっと得体の知れない何かよ」

「そう、危険な存在かもしれませんよ」


「危険な存在だと?バカな事を…今は誕生されたばかりで、予言通り名前以外何も記憶はない。だが、今この奥でこの世の事を学んでおられるのだ。それが終わるまで、誰もこの先へは通すわけにはいかないのだ!!」


「この腐敗した世の中を正す為に降臨されたディセンダー様だ。じきに、自ら立ち上がられ、この世界を理想郷へと造り変えられる。邪魔はさせないぞ!!」

ジェイドとアンジュの言葉に、暁の従者は鼻で笑い、そう言って戦闘体勢に入る。
思わずアンジュは苦い表情に、ジェイドは『やれやれ』と言わんばかりの溜め息を出した。


ただ、僕は……何故か本気で……この人達に怒りを覚えていた。『予言通り名前以外何も記憶のない』存在を…言わばこの人達は『兵器』として利用しているんだ。


だから…………。



「――もう、いい」


自分でも正直驚く位低いそんな声が、自分から出た。
その声にジェイド以外の皆が何か、と此方を見る。ジェイドはジェイドで意味深に此方を見てるけど。



「――アンタ達のそのくだらない理想も、言葉も聞くのはもううんざりだ……アンタ達は……今、此処でその矛盾した現実ごと潰してやる」


「貴様……我々の理想がくだらない…だとっ!?」

僕の言葉に、暁の従者が敵意を増してそう言ってくる。
ディセンダーの事を知ってんのにまだ…分からないのかよ…。


「……あぁ、くだらないよ。はっきり言ってやる…今のアンタ達は…帝国や星晶を独占する国よりよっぽど屑だよ」


「貴様……一体何を――」



「――分からないなら教えてあげるよ。僕が…力ずくで、全力で…!!」


――僕のその言葉を同時に、戦闘は始まった――




 
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