曇天に哭く修羅
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第一部
邂逅
前書き
_〆(。。)
【刻名館学園/こくめいかんがくえん】の男子達から逃走を続ける《立華紫闇/たちばなしあん》は前方に曲がり角を見つけ、そこに飛び込もうとする。
しかし突然そこから人が出てきた。
今度は先頃の老人と少女の二人のように避けさせてもらえずぶつかってしまう。
紫闇はぶつかった衝撃でグラつき倒れそうになるが相手はびくともしていない。
下半身が鍛えられているだけでなく、平衡感覚も良いのだろうその人物は紫闇の手を掴んで彼が転ぶのを防いでくれた。
「大丈夫か? 不注意だったようで済まん」
紫闇と同じ15才くらいの学生。
175cmほどの身長で大人びた雰囲気の男子は長い黒髪を後ろで束ね眼鏡を掛けていた。
目付きが鋭く顔は仏頂面で表情は変わらない彼は見るからに堅く真面目そう。
(考えてる場合じゃない!)
そうこうしている内に刻名館の男子が追い付き息を切らしながら恨み節をぶつけてきた。
「ハァ……ハァ……」
「ゲホッ」
「……て、てめぇ……!」
「やっと追い付いたぜ」
「半殺しで済むと思うなよぉ!?」
紫闇は彼等の様子を見て気付く。
(この疲れ方、恐らく学校でもまともに鍛えてない連中なんだろうな……)
紫闇のように走り込みもしてなさそうだ。
かと言ってまともに喧嘩したことが無く、何時も罠に嵌めたり逃げたりしてきた彼には幾ら体力が無いとは言え、殴り合いに慣れている刻名館の不良に敵わない。
どうするべきか考えていたその時。
「何故かは知らないが追われているのか。ここで会ったのも何かの縁。助太刀する」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
紫闇がぶつかった男子は全身に白銀の【魔晄】を纏い、体の真横に現れた赤い、何処か魔法陣のような幾何学模様から漆黒の鞘に納まった長い直刀を引き出して構えた。
彼からは冷然とした気配が漂いその目は刻名館の生徒達を睨み据え視線を外さない。
「御託は不要。掛かって来い」
挑発に乗った刻名の五人はいきり立つ。
そして各々の【魔晄外装】を振り翳して猪突猛進に走ってくる。
彼等の動きに合わせて眼鏡男子も踏み込みあっと言う間に間合いへ入るがそこからは静かで鋭く速い歩法で一直線に集団の間を通り抜けた。
眼鏡男子が過ぎ去った直後に五人の不良は突然動きを止め、まるで糸が切れてしまった操り人形が落ちるように地面へ倒れ伏す。
完全に意識を失っているようだ。
紫闇には何をしたのか解らない。
だがこれだけは言える。
「強い……」
「貴君も【魔術師】であるか」
自身の外装を消した眼鏡の男子は紫闇に近付いてじっと見詰めてきた。
(こいつ、エンドや聖持より強い?)
紫闇は自身の周りに居る人間の中で最も強いだろう者達と眼鏡の男子を比較した。
後書き
_〆(。。)
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