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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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Duel:22 優しい嘘の続き

――sideフェイト――

「二人が、本当に遠くへ行ってしまったんだなって。それが……俺は辛いんだ……辛い」

 そんな筈は無い。
 
 そう声を掛けようにも……どうして響がその結論に至ったのか解らない。
 顔を伏せて、今にも泣き出しそうで……屋上につれて来たけれど……。
 
 いや、今はとにかく。
 
「まだ。可能性はあるよ? 私達の世界の二人は、必ず帰ってくるって約束したし。まだ――」

「……予感はあった。あの日あの時の震離の声。アイツが嘘を言う時と一致してた。
 だけど……状況的にも引けない。でも、帰ると言っていたから信じてた……でも」
 
 顔を上げて、涙を零して。
 
「あの日の二人が本気の嘘をついたのを察したから、可能性があるって言葉を濁してるんだよ?」

 ボロボロと涙を流す。
 ゆっくりと小さな響の側に寄って、抱きしめる。
 
 あの日、響が倒れた後……奏達も相当参ってたのを思い出す。
 アースラに動ける皆が集まった後、震離たちと付き合いの長い皆は寂しそうにしていた。
 
 奏を筆頭に、時雨と紗雪も集まって話していたけれど。私達の前ではいつか帰ってくるから大丈夫と気丈に振る舞って、三人だけの時には皆落ち込んでた。
 
 ある程度経って、奏がフレイ中将の元へ戻る前に少し話をしたけど……。
 
 ――やっぱり寂しい。いつか遠くに行っちゃいそうな子だとは思ってたけれど。それはずっとずっと先の事だって思ってたから。
 ――流も居るから大丈夫だろうけど……あぁ、寂しいなぁ。
 
 そう言っていたのも記憶に新しい。
 それでも。皆生存を信じてたからこそまだ堪える事が出来ていた。
 
 響だって、目覚めてから……あれ?
 
 響はまだ、そのことについて整理をつけられていない? 

 そうだ。目覚めてから、リュウキと会って、その後なのはとヴィヴィオの部屋に居て……。
 だとすれば、
 
「ヒントはあった。サトが俺達の世界に居るとするなら、どうしてあのタイミングで援護に来なかったのか。
 加えて、キャディ店長の所で見た写真が、サトだとするのなら、キャディ店長の元から離れたのも公開陳述会の直前。あの事件が起きると知ってて、居たら助けてしまうから離れたとしたら……。
 関わってはいけないと理解していたら、俺達をこの世界に行かせる条件のためにそれが必要なら、俺はそうする」 
 
 話が飛躍しすぎている。傍から聞けば、そんな事は無いはずだと思う……でも、自身が経験したサトというイレギュラーを加えると話は変わってくる。
 その可能性も出てくる……けど。
 
「やっぱり鋭いですね。響さんは」 

 第三者の声が聞こえて、私の視線はそこを引っ張られて。
 
「先に出たはずの二人が居ないので心配しましたが……そうですか」

 困ったように寂しそうに笑う流がそこに居た。

「……人払いの魔法はこちらで展開し直しました。震離さん以外は来れないですよ」

 寂しそうに笑いながら、光りに包まれるとともに機動六課に居た頃の流の姿へと変わる。
 いや、この場合は戻るが正しいのかな?
 
 でも、今言った言葉って……まさかそんな。
 
「……なんでだ? なんであの二人が」

「……そちらの世界でもゆりかごを落とせる武装は少なく、ゆりかごが飛んだ時点で動かせるものは次元船に取り付けられていたアルカンシェルのみ。
 だけど、その発射プログラムには細工が施された。しかもどの世界線でもその改変は異なり、対策は確認してからではないと不可能という。
 ご丁寧にバックアップも改変されているから即時修正は不可能」
 
 響の言葉に応える事無く、流は言葉を続ける。
 
「……その結果ゆりかごを止める手段は、内部からレリックを動力炉で爆発させるか、それ以上の魔力を持って極大魔法を展開させるかの何方か。
 ただ、何方にせよ誰かが犠牲になる。
 温泉地でゆりかごを爆破させたと聞いた時、すぐに理解しましたが……そうですか。私がポカしたのならまだしも……震離さんの嘘を察してばれるとは思いませんでした」
 
 ……それじゃあ。
 
「まさか、本当に……二人は居なくなってしまったの?」  
 
 声が震える。響もそれを察してか静かに顔を伏せて。
 
「もしかしたら、という可能性もありますが。よほどの事が無い限りは。
 その日、その時に風鈴流と叶望震離の両名は死んでいます」
 
「で、でも! こうして流と震離みたいに、他の世界で!」

「……無いんですよ。たくさん世界を巡って、いろんな世界を見てきました。
 平行世界の私と震離さんが生き残ろうと思ったら、そもそも私達は出会ってはいけなかったんです」
 
「そんなことって!」

 思わず声を荒げてしまう。対象的に響は。
 
「……そうか。震離の自殺を止められなかった世界。そんな分岐点の世界もあったんだな」

 冷静にそのことを受け止めていたけれど、

「……響? 自殺って……震離が?」

 響達の過去のお話を聞いたことなかったということがここに来て仇になった。その事が悔しい。
 でも、なんでそんな事が?
 
「響さんの言う通り、その世界線ならば私は生きていました。と言っても、その例は一度しか見てませんが、その例外を除いて出会い方こそバラバラでも、ゆりかごが飛んて大気圏を超えたらその例外以外は死んでます。
 私と震離さんは、ゆりかごを破壊した後の世界を観測出来ていませんので……もしかしたらとは思いますが」
 
 ……そんなことって。  

「……震離が魔法世界に来た時点で、流とは出会うのは確定なのか?」

「……えぇ。形は違えど、六課が出来て少しするまでには必ず」

「……そっか。やっぱりあの子は遠くに行くのか」

 今までとは違う、優しそうな声で響が言う。その変化に驚く。

「……初めて会った時からだけど、いつか遠くへ行くだろうって思ってたが……そっか、二択だったのか」

 ポロポロと涙を流しながら響は言う。
 対して流は、ちょっとだけ悔しそうにため息をついて。
 
「やっぱり、一番付き合い長いだけあって、まだまだ響さんには及ばないですね」
 
「……12年の付き合いだからな。今の震離を理解してる流には及ばないけど、ある程度理解はできるよ。
 ……やっぱり、震離が流を選んだタイミングは六課の間だったのか」
 
 ……え? 待って? 震離と流がよく一緒に居るとは思ってたけれど、そういう関係だったの?
 
「えぇ。タイミングは違えど六課の間に……未来のサトさん曰く、見てたらすぐに分かったそうで」

「だろうね。見てりゃわかるよアイツは。今まで適度に距離とってた子が少しずつ距離を詰めていって、女性らしさを獲得してたんだから」 

 言われてみれば、確かに。満遍なく笑って接する反面、ずっとその態度が崩れることがなかった震離。
 ああいう態度は見覚えがあって、すぐに人見知りだということに気づいてはいた。
 
 でも、こちらが思ってた以上に上手く立ち回っていたし、響達も居るからと様子を見てたんだっけ。
 そのうちなのはが震離は大丈夫だよって言ってたっけ。
 
 ……あれ? こちらの二人はいつ引っ付いて……あれ? そもそも引っ付いたのかな?
 
「でも、そうか。あの二人はもう居ないのか……そっか」

「気休めになりますが、それでもゆりかごが消えた後を観測できていない以上……」

「……あぁ。それでも、きっと……あの二人の本気の嘘を尊重するよ。
 そうだ、フェイト?」
 
 クルッとこちらを向いて、少しだけ悲しそうにはにかんで、
 
「フェイト。この事、皆に内緒にできる?」

 驚いたという事と、響のその選択は。
 
「元の世界へ戻った時、きっと皆は探し続ける。ヴィヴィオもずっと待ち続けるし、はやてもずっと気に病むよ。
 それでも響は耐えられる? 唯一真実を知ってて、二人の嘘を護るためにとはいえ、それを黙っていられる?」
 
「……うん。ほんの僅かな可能性も信じたい。死んで会うその時まで胸にしまうし……死んだという事実を、はやてさんが知ればもっと気に病んでしまう。
 今、あの二人が死んだということを知っているのは、俺とフェイトだけ。
 だから……一人じゃ抱えきれないから、一緒に抱えてほしいんだ」
 
 泣き止んだはずの涙がまた溢れている。
 
 思うところはたくさんある。だけど……。
 
「分かった。一緒に抱えるよ」 
   
 誰よりも付き合いの長い響が決めたことならば、私はそれを尊重するだけだ。
 
 ――――
 
「……あーまだ心がざわつく。辛ぇ」

 涙の跡がようやく引いた所で響がポツリと呟いて、ちょっとおかしくて笑ってしまう。
 
「……私からバレたのなら隠しようがあったんですが、まさか震離さんで察するとは思いませんでした」

「……まぁ付き合い長いしね。それよりも、震離が居ない世界ってどんな?」

「あ、私も気になる。その世界の響達ってどんな感じなの?」

 と、響と二人で流に質問をすれば、しぶそうに眉間にシワを寄せて、小さく唸ってる。
 そんな様子に二人で顔を見合わせて首を傾げていると。
 
「……響さんが絶対に怒らないって言うなら少しだけ」

「? うん、別に怒らんよ。よほどな事に……って、どうしたの?」

 眉間を押さえるポーズを取る流がおかしくてつい笑ってしまうけど……そんなポーズを取るってことは、もしかして。
 
「相当アレな性格でしたということだけ先に伝えますね」

「マジカヨ。平行世界でも俺なんじゃないの?」

 私もそう考えてたけれど、そんなに不味い性格なのかな?

「……まず、幼少期の震離さんが自殺してしまった事により、優夜さんや煌さん、時雨さんと紗雪さんと出会わなかった世界です」

「「……エッ!?」」

 思わず声が被ってしまった。でも、え? 震離が居ないのはなんとなく分かってたけど、他の4人も? どうして?
 響も考え込んで、ぱっと顔を上げたと思えば。
  
「……そうか。それが記事に成った結果、優夜の家の引っ越しがなくなって、煌も父方の実家に送られず、時雨の家も地元に戻らない選択を取って、紗雪の家もそれに従ったのか……うっわ、マジカヨ」 

「え? ちょ、え?」

 新しい単語というか、なんでそうなるのかわからなくて首を傾げていると、それを察したらしく。

「……震離って一応でも何でも天才としてそれなりに名前が知られてるんですよ。俺と出会った時、確かなんか難しい数式を証明したとかなんとかで有名だったんですよ。
 そんなときに自殺した結果、着物店を開こうとしてた優夜の実家の話がなくなり、同じく地元に戻ろうとした時雨の家の話もなくなる。ちなみに紗雪の実家は時雨の家のお付きということもあって大体一緒に居ますが……まさかそんな世界もあるとは」
 
 両手で顔を覆う響になんて声をかけて良いのか分からない。
 
 あれ? でもそうすると……。
 
「奏は居るんだよね?」

「えぇ。奏さんが幼馴染として一緒にいました、が」

 流の言葉が止まるとともに嫌な汗が出てくる。響もなんとなく察しているのか顔を覆ったままだ。
 
「基本的に喧嘩ばかりでした。特に響さんはティアさんの暴走してた時期よりも酷く力を追い求めていましたし、夜天の書の事情を知らないので、魔力を奪ったシグナムさんに恨みを抱いてましたし。
 奏さんも全然違って、あまり人が好きではない……引っ込み思案な方に」
 
「ぜ、全然想像がつかない」

 何がどうしてそうなったんだろう?
 こちらの二人とは全く違うということに驚きしか無い。
 
「その世界に限らず、基本的にあまり介入しない方向だったんですが、響さんがあまりにも見てられないと。震離さん怒り狂って、介入して……殴り飛ばしました」

「……だろうなぁ。力追い求める俺って何だ……?」

「そして年相応に性に興味ありました」

「うわやめて」 

 そう言えば、響からってなかったなーと。まだ日が浅いからなのかな?
 
 確か私と一緒に海鳴の実家へ帰った時、温泉で一緒になったけど……あまり意識されてなかったような?
 
「もっと色々ありましたが聞きます?」

「うんやめて?」

 顔を覆ってるけど、真っ赤に成ってるっていうのがよく分かる。自分のことじゃないけど、言われてるようで恥ずかしいんだろうなーって。
 
「ちなみにシグナムさんとゴールしかけてました」

「……は!? なんで!?」

「流、その世界のシグナムのことちょっと詳しく」

 そういうことなら、話は変わってくるんだ。
 
「待って待って、それはおいおい……というかフェイトも震離達の家に泊まる時があるでしょう? そのときに聞いて……俺は聞きたくない」

「む、残念」

「そうしましょう。私も震離さんもあまりフェイトさんとは話したこと無いですしね」

 クスクスと笑うのを見て、本当に変わったんだなーとしみじみ思う。
 
「大丈夫ですか響さん? きっと今頃皆さん揃って待ってる頃ですし、そろそろ」

「……うん、なんとか飲み込めたよ。こっちの姿だとすぐに感情が溢れちまう」

 そう言って目元を拭って、空を見上げる。
 私もつられて見上げれば、薄明の彼方にいくつか星がきらめいてる。
 
「なぁ流? いつか俺達の世界にも来てくれよ。本当のことを知っているんだ、少し協力してくれ」

 空を見上げながら響は言って、流はポカンとしたかと思えば。
 
「えぇ。いつか必ず。その時は……私が私を演じましょう」 

「……ゴメンな?」

「謝るくらいなら、嘘だと決めつけてくださいよ」

 お互いに笑って、
 
「さ、行く……か!」

「えぇ。今日はまだありますからねぇ。ところでお昼はお二人でどんな美味しいものを食べたんですか?」

「つけ麺。サトのお陰で久しぶりにガッツリしたもの食べれたわー」

「ぁー、麺類大好きですもんねぇ」

 なんてこと無いように二人して出入り口に行くのを見ている。
 
 ちょっぴり羨ましいと思うのは、やっぱりあの二人も男の子なんだなぁって。
 
 
   
 

 
後書き
 私情とはいえ、更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありませんでした。
 とりあえず、被害を受けていますが知人宅へと移動し、なんとか生活基盤を整えました。

 色々ありますが、なかなか……治安は悪くなるとは思っていましたがまさかまぁ……えぇ。

 まだまだ更新は不安定ですが、どうかお付き合い頂けると幸いです。 

 長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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