夫を救ってから
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第三章
「もうだ」
「死罪はですか」
「決めてだ」
そのうえでというのだ。
「書にしてだ」
「それをですか」
「送ったのだ」
「だからですか」
「それをあらためることはな」
出来ぬと言おうとした、しかしだった。
文姫は曹操に対して必死の顔で言うのだった。
「丞相様には一万の名馬の林を為す程の将がおられます」
「だからか」
「はい、それで早馬一騎を惜しまれるのですか」
尚も必死に言うのだった。
「そうされるのですか」
「それは」
「そうではないですね」
「そなたの言う通りだ」
曹操は文姫に感じ入った声のまま答えた。
「まことにな」
「それでは」
「死罪を取り消す早馬を送る」
董祀に対してというのだ。
「そうする」
「それでは」
「それでな」
こうして分姫は夫を助けた、だが。
曹操はあらためてだ、文姫に話した。
「それでだが」
「何でしょうか」
「そなたの父君だが」
学者として名高かった彼のことを話すのだった。
「多くの書を持っていたな」
「はい」
「そなたの夫の助命とは違う、これは余が決めたことだ」
それでというのだ。
「もう終わった、早馬を出したからな」
「左様ですか」
「それとは別の話だ」
このことも断ってだ、曹操は文姫に話した。
「その書の内容を覚えているか」
「そのことですか」
「うむ、どうなのだ」
「実は」
文姫は曹操にあらためて答えた。
「父上から四千巻ばかりの書を授かりました」
「四千か」
「はい、ですが」
それでもとだ、文姫は曹操に申し訳のない顔で答えた。
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