蒼と紅の雷霆
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蒼紅:第二十四話 新装
前書き
オコワ読むと、謡精状態のシアンは人間性を失ってたようなんで、もしシアンが人間として生きていたら、嫉妬しつつもオウカに懐いたりするかも
飛天の暴走事件から数日後、モルフォが小さく、そして幼くなってからシアンは眠ったきりだったが、ようやく目を覚ました。
誰もが目を覚まさないシアンを心配していたので、シアンが目を覚ましたことは素直に喜んだ。
シャオ曰く、第七波動の力の大半を急激に失ったことによる反動らしく、シアンの命に別状はないらしい。
実際に能力因子を宝剣に移植して生きている能力者もいるのだからその辺の心配は要らないのだろう。
ソウとGVは前回の潜入の時の反省もあり、新しい戦闘服…新型のプロテクトアーマーを用意してもらったのだ。
エデンはソウの紅き雷霆を用いたかつてない強敵だと感じた2人は今までの装備では不充分だと判断してシャオに新しい戦闘服を頼んだのだ。
シャオが2人のためにオーダーメイドしたこのプロテクトアーマーは2人の第七波動に反応し、プロテクターの強度や耐性をある程度変化させることが出来る。
その上に磁力を帯びた弾丸をコントロールする技法を応用することで敵の磁力を帯びた弾丸を反発させて防ぐことも可能になった。
因みに2人のアーマーは色違いで、GVは黒でソウは白を基調にしている。
「どうですか、お2人共。新しいお洋服は?」
「“お洋服”って…一応ソレ、戦闘用なんだけど…耐久性の向上とか、軽量化とか。前着てたのよりも数段強化されてるんだから」
オウカの発言に苦笑しながらシャオは新装備のプロテクトアーマーのことを説明してくれた。
「まあ、着心地は悪くない」
「…似合ってるかな?」
「はい、お2人共、とても良く似合ってますよ」
どちらのプロテクトアーマーもGVとソウの雰囲気に絶妙にマッチしていた。
「うん、用意した僕が言うのもなんだけど、その戦闘服はとても似合ってるよ」
『凄く似合ってるわよ2人共。ね、シアン?』
「うん、GVもお兄さんも格好いい…テーラちゃんがここにいたら細かく評価してくれたかも」
まだパンテーラのしたことのショックを受け入れられてないのかシアンは椅子に座りながら小さく呟いた。
「それにしても僕がここに通うようになるまで代わりにいたのがまさかエデンのリーダーだったなんて…エデンの方針はいくらか変わったようだけど相変わらず危険過ぎる」
今の時代、差別意識を持たない無能力者は数少ないので、事実上無能力者を殲滅して能力者が完全に支配することに変わりはないというのがシャオの感想だ。
「…どうしてこうなるんだろう…」
隠れ家での穏やかで幸せだった暮らしが脳裏を過ぎてシアンの表情は暗くなる。
GVとソウがミッションでいない時、心細かった自分の話し相手になってくれたのはパンテーラであったし、色々なことを教えてくれたのもパンテーラであった。
「シアン……とにかく、シャオ。他に必要な物があったらまた頼むよ。よろしく」
「任せてよ!あの紫電を倒したGVとソウなら、きっと奴らにも対抗出来る…打倒エデンのため、協力は惜しまないからね!」
「…………」
そんなGV達をシアンは何処か他人事のように見つめていた。
時間も遅くなったので行動は明日からと言うことにしてシャオは屋敷を後にして、GV達は寝静まっていた。
「シアンさん、眠れないんですね?どうぞ」
「オウカさん…」
シアンにオウカが差し出したのは温めたミルクであった。
カップに入ったそれを受け取りながら一口啜る。
砂糖が入っているためか、少し気持ちが落ち着いたような気がする。
「美味しい…」
体がじんわりと暖かくなるような感覚にシアンは表情を綻ばせた。
「良かった…テーラさんとモルフォさんのことがあってからシアンさん…元気がありませんでしたから」
パンテーラの偽名が出てきた次の瞬間にシアンの表情は曇る。
「本当に…GV達とテーラちゃん…戦わないといけないのかな?テーラちゃん、お兄さんのこと…きっと…」
ソウのために手作りのペンダントまで送り、時々ソウに送る視線は自分とオウカがGVに向けるものと同じなのだ。
そして結果的にその手作りのペンダントはアシモフの凶弾からパンテーラを庇ったソウの命を守った。
そして今ではそのペンダントもシャオによって修復され、カゲロウ発動用のフェザー製のペンダントの機能を持って今でもソウが持っている。
互いに大切にしているはずなのに敵対している現状がシアンには悲しくて仕方がなかった。
「…シアンさん……そうですね、どちらも大切な…譲れないものを背負い過ぎちゃってるんですね…きっと」
パンテーラはエデンの同志達、ソウは家族。
どちらも根が真面目な性格だから余計に手放せないのだろう。
「あんなに近かったテーラちゃんが今じゃ物凄く遠い人に見えるの…」
エデンには無能力者に虐げられた能力者が集まった組織で、それはシャオが言うにはかなりの規模であり、それを背負うパンテーラ。
皇神の強制から逃げてGV達に守られてきた自分にはその重圧は理解出来ない。
「大丈夫です。私もテーラさんとはあまり接したことはありませんでしたが、とても優しい人なのは分かります。今は無理かもしれませんが、何時か…きっと…」
「オウカ…さん…」
抱き締めて優しく囁いてくれるオウカの優しさが嬉しいのと同時にこれがGVの傷付いた心を癒していることに嫉妬を覚えてシアンは自己嫌悪に陥るのであった。
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