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レーヴァティン

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第百二十一話 即位その九

「増産しましょう」
「ナイル川流域でな」
 久志も頷いてだ、そしてだった。
 久志は皇帝になることが決まってすぐに政にあたった、そうしてナイル川流域での家畜用の飼料の増産とだった。
 船の大幅な増築も決定した、その政を行い他の政も同じ様にしてだった。
 彼はローマの護民官の宮殿でナポリ王やエジプト王、南岸の諸部族の長達ローマや各都市の有力者、各宗教の第一の地位にある者達そして市民達に推挙されてだった。
 皇帝になった、自らこの時の為に作らせた帝冠を頭に被せてだった。
 これまで護民官の座だった皇帝の玉座に座った、だがそれでもだった。
 玉座からすぐに立ち上がり政務に入ってこんなことを言った。
「何かな」
「皇帝になってもですね」
「ああ、皇帝っていうと贅沢だよな」
 こう順一に言ったのだった。
「最高権力者だからな」
「酒池肉林ですね」
「その生活だよな、けれどな」
 それでもというのだ。
「何かな」
「貴方としてはですね」
「これまで通りでいいな」
 その暮らしはというのだ。
「別に」
「護民官の時の様ですね」
「これでいいな」
「そうなのですね」
「食いものも酒も服もな」
「そして住居も」
「全部な」
 それこそというのだ。
「このままでいいな」
「では天幕のベッドは」
 順一は笑って贅沢のシンボルの一つであるこれを出した。
「どうでしょうか」
「おいおい、俺がか」
「はい、あのベッドは」
「あれもな」
「いいですね」
「このままでいいさ」
 ベッドもというのだ。
「ずっとな」
「質素なままで、ですね」
「だってな、贅沢っていってもな」
 それこそとだ、久志は順一に応えて話した。
「天幕のベッドとか絹の服とかな」
「お好きでないですか」
「ああ、昔宿屋で一番高価な部屋に泊まっただろ」
 順一にかつて冒険者として仲間達を集めていた時のことを話した。
「そこで実際に天幕のベッドで寝てな」
「絹の服も着られましたね」
「けれどどちらもな」
「馴染めなかったですね」
「ああ、馴染めない贅沢ってな」
 それこそと言うのだった。
「楽しめないだろ」
「そして楽しめない贅沢は」
「意味がないからな」
「だからですか」
「そういうのはいいんだよ」
 それこそというのだ。
「俺にとってはな」
「そうですか、では」
「これからもな」
「この宮殿において」
「そのまま暮らすな、立派な宮殿を新たに築くのもな」
 そうしたこともというのだ。
「しないからな」
「そういえば建築はあれやったな」
 美奈代が久志が宮殿を新たに建てることはしないと言ったのを聞いて述べた。
「権力者の病やってな」
「ああ、言われるよな」
 久志もこう美奈代に返した。 
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