蒼と紅の雷霆
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蒼紅:第十七話 天主
前書き
ラスボス戦です。
GV達が軌道エレベーター・アメノサカホコに乗り込んでからしばらくして…。
「GV達からの通信、途絶えたわ…衛星拠点アメノウキハシ…無事侵入出来ているといいんだけど」
「あいつらのことだ、心配ないさ。おまけにテーラちゃんみたいな激強な味方までいるんだ。また、シアンちゃんを連れてスカした顔で戻ってくるに違いねぇ…」
「…ええ、きっとそうよね…(アシモフ、もしあなたもその場所にいるのなら…どうか、あの子達のことを守ってあげて…)」
モニカがこの場にいないアシモフがGV達を助けてくれることを祈りながらアメノサカホコを見上げるのであった。
そして宇宙ステーション・アメノウキハシ内部では、GVがシアンの元に急いでいた。
「フフ…囚われの姫巫女を助けに来たようだね…。ねえ、モルフォ…いや、シアンと呼んだ方がいいかな?」
『GV…お兄さん…テーラちゃん…』
当然それは紫電も把握しており、不敵な笑みを浮かべながら機械に繋がれているシアンに振り返る。
機械に繋がれたことで声を出せないシアンはテレパシーでGV達の名前を呼んだ。
「シアン…!!兄さんやテーラの厚意…無駄にはしない!!必ず…必ず僕が…」
シアンのテレパシーはGVに届き、そしてこの場にいないソウやテーラにも届いていた。
雷撃鱗のホバリングで慎重に下に降りながら着地し、再び一気に駆け出すと科学工場で見た忍者が再び立ち塞がる。
「紫電様の元へは行かせんぞ!皇神グループ万歳!!」
「…どけ!僕の邪魔をするな!!」
カートリッジをナーガに切り替えてチャージショットを放って避雷針を当てると雷撃を流し込んで忍者を蹴散らすとGVはシアンの元に。
『GV…私…は…』
「…シアン…無事でいてくれ…!」
『…私…は…あなたの…ことが…』
「助ける…僕が、必ず…!」
ゲートモノリスを破壊して奥に進むと、シアンの歌…第七波動を感じた。
「感じる…彼女の歌の波動を…この先にシアンが…」
導かれるように進むと、そこには1人の少年が不敵な笑みを浮かべていた。
「ようこそ、ガンヴォルト。雷霆兄弟の片割れ君…こうして会うのは初めてだね」
あの時、通信機越しに聴いた声…。
忘れはしない…こいつが…。
「紫電…!」
「覚えていてくれて光栄だよ。」
笑みを浮かべる紫電の後ろには、機械に繋がれたシアンの姿があった。
「…ああ、これかい?これは、電子の謡精の力を制御する装置さ。ここに来る途中、アキュラ君に出会っただろう?この装置だけじゃない…。皇神が保有する能力者関連の技術…その基盤を作ったのがアキュラ君のお父様なんだ。全く…今の皇神があるのは彼のお父様のおかげだよ…アキュラ君には今度お礼でも…」
「お前と無駄話をするつもりはない…シアンを解放しろ」
「やれやれ、君のお兄さんよりは理性的なようだけど、兄弟揃ってせっかちだな…まあ、いいか。今から君は、この装置の優秀さを、身を以て知るんだから」
紫電の背後に現れたのは、モルフォだったが、どこか様子がおかしい。
『………』
目の前の彼女からは、かつての溌剌とした意志の強さは感じられない。
まるでそれは、感情の無いプログラムデータのように見える。
「モルフォに何をした…!」
「言っただろう?電子の謡精を制御する装置だって、今の僕には、モルフォの加護がある…いくら君でも勝ち目はないと思うよ?」
モルフォが歌うと紫電が念動力で浮遊し、障壁らしきものが紫電を包む。
「さあ、始めようか?ガンヴォルト」
「っ!!」
紫電は手のひらをGVに向けると念動力を利用した攻撃を仕掛けてくる。
それを何とか回避しながら避雷針を紫電に撃ち込もうとするが、障壁に阻まれてしまい、電子の刃がGVに襲い掛かる。
「モルフォが生み出すこの電子障壁(サイバーフィールド)がある限り、君の攻撃は僕に届かない。そして同時に、彼女の力が僕の第七波動・“念動力”を高めてくれている…“宝剣”を使わずにこのパワー、やっぱり彼女は凄いね!」
『…G…V…』
「…っ!」
『お願い…アタシを…止め……て……』
歌いたくもない歌を歌わされ、そしてGVに対して攻撃することを拒絶したい気持ちがモルフォの意識を呼び戻したのか、絞り出すような声を出す。
「まだ意識があるのか…でも、無駄なことさ。君の力は全て、僕の手中にあるんだから」
「シアン(モルフォ)の心を弄ぶ…お前だけは絶対に許さない!」
「テロリストの許しなんか最初から求めちゃいないさ、全ては平和のため……中途半端な覚悟ではないつもりだよ」
「平和…だと?」
「君も能力者なら言われたことがあるだろう?僕達、能力者は危険な化け物…1人1人が未知の兵器を所持しているようなものだよ…危険極まりない…。管理が必要なことぐらい、君にも分かるよね?」
「こんなやり方じゃなく他の方法だってあるはずだ…」
「時間をかければ或いは…ね?でも、ないんだよね…時間もさ。知っているかい?今、多くの海外企業や団体…果ては某国の政府までがこの国を支える能力者の…“皇神の技術”を狙っている…。」
GVは攻撃をかわしながらどうにか攻撃を当てようとカートリッジをナーガに切り替えて避雷針のチャージショットを撃つが、これも通用しない。
「皇神…いや、この国は色々と敵が多いんだ。フェザーだってその1つ… 国家存続のためにも、今は一刻も早く危険要因を取り除いて…兵力を蓄えなければいけない時なんだ。歌姫プロジェクトなら、そのどちらもが短時間で、同時に賄える。詰まるところ、これは正義の行いなんだよ」
この国は裏社会の闇、燻る不満や差別意識などはあるものの、表向きには普通の社会が営まれ、無能力者と能力者が共存している国である。
それを可能とする技術は外国からすれば喉から手が出る程に欲しいのだろう。
「そんな物が…そんな物が正義だというなら…僕は悪(テロリスト)でも構わない…!僕はシアンを救い出す…ただそれだけだ!迸れ!蒼き雷霆よ!!正義すらも貫き崩す雷光一閃の揺るぎない意志となれ!!」
「やれやれ…やっぱり君は根っからの悪者だね。プロジェクトを完遂するまで、ちょっと休んでいてもらうとしよう」
電子障壁を利用した体当たり。
まさか紫電が接近してくるとは思わなかったGVはカゲロウを使わされる。
「避けられるかな?」
連続で放たれる念動力のリングによってカゲロウが過度に発動し、オーバーヒートとなってしまう。
「うわっ!!」
「カゲロウは確かに厄介だけれど完全に無敵と言うわけじゃない。こうやってオーバーヒートさせてしまえば、君は満足に反撃も出来ない。」
追撃のリングを放つ紫電。
「くっ!チャージングアップ!!」
即座にサポートスキルのチャージングアップでオーバーヒートから復帰すると、カゲロウが発動して回避出来た。
「なるほど、流石にオーバーヒートした際の対策はしているようだね。でもそれはその場凌ぎにしかならないよ」
紫電の言う通り、紫電はGVの蒼き雷霆の弱点をしっかりと把握しており、チャージが間に合わない程の攻撃を放っていく。
「これならどうかな?」
念動力による光弾をGVに放つ。
EPエネルギーが限界だったGVはダメージを覚悟したが、鏡が両者の間に展開され、光弾を防いでくれた。
「間に合いましたね」
「情けないぞGV…」
「テーラ、兄さん…」
急いで駆け付けてくれた2人にGVは安堵の息を吐いた。
「おやおや、ガンヴォルトのお兄さんと可愛らしいお嬢さんのおでましだね」
ソウとテーラが加勢に来ても紫電の余裕の表情は変わらない。
「貴様が紫電か…何故GVが一方的にやられている?」
「モルフォが生み出す電子障壁がある限り、僕には一切の攻撃は通用しない…例えそれが蒼き雷霆でもね」
「電子障壁…電子の謡精の力か…」
「君が戦っていたアキュラ君はどうしたのかな?」
「さあな、全身の血が抜けて失血死したんじゃないのか?害虫のことなど知ったことではない。」
「……無能力者が嫌いなのは知っていたけどそこまでとは思わなかったよ」
「俺は貴様と無駄話をするつもりはない。シアンをさっさと解放しろ。そうすれば比較的苦しまないように息の根を止めてやろう。解放しなければ苦しみの末に息の根を止めてやるだけだがな」
銃を向けるソウに紫電は溜め息を吐く。
「結局渡したところで殺すんじゃないか」
「当然だ、貴様は俺の大事な物に手を出したからな。貴様を生かしておく道理はない」
「彼女がこの国の存続に必要だとしてもかい?」
「だから何だと言うんだ?俺達は世間的にテロリストだぞ?この国とは無関係の存在だ。この国がどうなろうと知ったことか。」
「やれやれ…兄弟揃って根っからの悪者だね…君はどうかな?お嬢さん?」
紫電の問いに対して、テーラの答えは既に決まっている。
「電子の謡精の力で全ての能力者を洗脳・統治すると言うおぞましい計画を許すわけにはいきません」
「ふう…やっぱり話は通じないか…僕としては平和的な解決がしたいんだけど」
「歌姫プロジェクトのどこが平和的だ。能力者の人権を完全に踏みにじっている時点で平和的じゃないだろう。」
チャージショットが紫電に向けて放たれるが、電子障壁によって阻まれ、電子の刃がソウに迫る。
「僕だってこれが理想的だとは思ってないさ。ガンヴォルトにも話したけど、この国には敵が多いのさ。時間もない現状では歌姫プロジェクトは出来る限りの最善・妥協策なんだ。このプロジェクトの完遂は能力者の未来を守ることにも繋がるんだよ?」
「人としての最低限の自由さえも奪われた状態で未来を守れるわけがないだろう。その結果、無能力者が図に乗り、更に能力者への差別が広がることは確実だ。」
ソウと紫電が互いに凄まじい攻防を繰り広げるが、モルフォの電子障壁によって護られている紫電にソウの攻撃は届かない。
「それを言われると痛いね…でもそれは仕方のないことだよ。アキュラ君が言っていたように僕達能力者は化け物。ソウ君、君が個人で紅き雷霆のような並みの軍事力を上回る力を持っているのは他者からすれば恐ろしいんだよ。」
「………俺達…人工能力者を勝手な理由で造り出し、勝手な理由で廃棄するような塵共が我が物顔でいる国など滅べばいい…!!」
ソウの脳裏を過ぎるのは研究施設での地獄のような日々。
あの時の怒りと憎しみは今でも忘れていない。
「…僕もかつては被献体で実験によって死にかけたこともある身だ。君の…いや、君達兄弟や研究の過程で潰された能力者達の境遇には同情はするし、理解もする。けど、今は個人的感情で動いている場合ではないんだ。人としての自由を一時的に失ってでもこのプロジェクトはこの国には必要なんだ。」
「ふざけるな…!!これ以上お前達、皇神の思い通りにさせるか!!」
雷撃鱗を展開して一気に距離を詰め、紫電に殴り掛かる。
「特攻かい?無駄だよ…」
しかしソウの拳は電子障壁を素通りし、紫電に叩き込まれる。
「ぐっ!?何…!?」
「攻撃が通った…そうか、電子の謡精の力は紅き雷霆と同じ電子の力…雷撃鱗で電子障壁をクラッキングさせれば…!!」
雷撃鱗を展開した状態で雷撃ショットを放っていく。
電子障壁を雷撃鱗でクラッキングされたことにより、攻撃が紫電に通用している。
「今なら僕達の攻撃も通用するはず…行こう!!」
「はい!!」
GVとテーラも攻撃に加わり、紫電への攻撃は熾烈な物となる。
3対1と言う状況は見ようによっては卑怯に見えるかもしれないが、紫電は電子の謡精の力で強化されており、その気になれば更なる強化も出来る可能性もある。
紫電が次の手を打つ前に早く倒してしまいたいのがソウ達の本音である。
「くっ…3人がかりとはいえ、モルフォの加護を受けた僕がここまで追い詰められるとはね…ならば見るといい…!天が意思、皇の神気!仇なす輩を狩り立てん!!サイコフュージョン!!」
紫電がSPスキルを発動し、3人に四方向からの念動力の光弾が放たれる。
何とか回避に徹したことで四方向からの攻撃は回避できたものの、最後の巨大な弾に3人が飲み込まれた。
「お別れだよ…」
「それはどうだろうな?」
紫電の近くに展開されていた鏡からGV達が飛び出し、GVは雷撃鱗を展開してモルフォの電子障壁を無力化すると、渾身のSPスキルを放つ。
「迸れ!蒼き雷霆よ!!天体の如く揺蕩え雷!是に到る総てを打ち払わん!!ライトニングスフィア!!」
雷球が紫電に炸裂し、一気にダメージを与える。
「うわあああ…!!」
「これでとどめだ!!」
「愛の一撃を受けなさい!!」
ソウのチャージセイバーとテーラの光弾が紫電に直撃し、ダメージを受けすぎた紫電は膝を着く。
紫電にモルフォを使役するだけの力を失ったのかモルフォが消えていく。
3人がかりでようやくモルフォの加護を得た紫電を追い詰めることに成功したGV達。
問い詰められた紫電の表情には最早余裕がなくなっている。
「驚いた、強いね…君達は、流石は皇神の最高傑作と最悪の失敗作…そしてパンテーラと同じ能力の持ち主。僕も本気を出さざるを得ないようだ。見るといい…これが僕の真の力だ…!」
3本の宝剣とシアンが浮かび上がり、紫電の元へ引き寄せられていく…。
「うおおおおおおっ!!!」
宝剣の力とシアンの力を解放し、紫電は変身現象を起こした。
「「「……っ!!」」」
今までの能力者とは桁違いの…圧倒的な巨体とプレッシャーに3人は息を飲む…。
まさか、シアンを取り込んだ…?
これが紫電の第七波動の力だと言うのか?
八咫烏と黒豹と言う宝剣が攻撃ユニットとなって出現する。
「神にも等しきこの力…全ては守るべき民と国土のために!僕の正義が、悪を挫くっ!!」
「これが…紫電の変身現象…おまけに電子の謡精の力でここまでに…」
テーラの声が若干震えている。
無理もない、GV達も気を抜いたら恐怖を抱く程のプレッシャーを感じているのだから。
紫電が3人を吹き飛ばそうと八咫烏による突風を発生させる。
「ぐっ!!」
「きゃっ!?」
「うわっ!!」
3人は吹き飛ばされないように何とか踏ん張るものの、一番小柄なテーラは吹き飛ばされそうになり、ソウが捕まえることで飛ばされずに済む。
「“精神”に干渉して操る彼女の“電子の謡精”と “物質”に干渉して操る僕の“念動力”。精神と物質…全ての生物を構成するこの、2つからなる要素を支配出来る僕は正に全能の存在だ!この力を使い、僕は全世界の第七波動能力者を支配する。能力者も、無能力者も、この僕の前では等しく弱者…。絶対なる統治が、全ての弱者(民草)を守り平和へと導くだろう。そう、僕は…天を統べる神の皇(ザ・ラストエンペラー)僕こそが“皇神”なんだっ!!」
「何だあいつは?さっきとは別人のようなんだが?エリーゼと同じ多重人格か?」
「恐らく宝剣の影響でしょう。宝剣は強大な力と共に精神を高揚させるので、恐らく紫電も…おまけに電子の謡精の力の影響も受けているのでそれは普通の変身現象の比ではないはず」
「なるほどな…」
「神の力に…全てを統べる力の前に散れ!!」
黒豹の衝撃波が3人に襲い掛かる。
「…驕るな!そんな権限は、お前にない!」
衝撃波をかわしながら、今まで紫電の言葉を聞いていたGVが叫ぶ。
「なら、君にはあるというのかい?僕を否定する権限が」
「権限なんて…誰にもない…だけど…言ったはずだ!僕はお前を許せない…!シアンを弄び、利用するお前を!かつて兄さんが僕に自由を、アシモフが僕達に居場所をくれたように…今度は僕が彼女の翼(力)になる。紫電…お前がシアンを捕らえる檻ならば…僕の雷撃で打ち砕く!」
今でもシアンの願いは覚えている。
外の世界で自分の歌を歌いたいと…その願いがある限り、GVは何があってもシアンを助ける。
「全く…底抜けのお人好しが…」
「ふふふ、でもGVらしいと思います…能力者達の自由のために…私も負けられません」
3人の第七波動が高まる。
必ずシアンを助けると言う意志の力が3人の第七波動の力を高めていく。
「迸れ!蒼き雷霆よ!!シアンとの約束(誓い)…果たすための翼(力)となれ!!」
「全く…世界の平和より、たかが一人の少女を選ぶとは…浅はかだよ、ガンヴォルト!皇神の御名の元、この僕が…君に神罰を下そう!!僕の意志は、星をも動かす!」
「させると思うか?迸れ!紅き雷霆よ!!シアンを縛る呪縛を俺の紅き雷刃で叩き斬る!!」
「私の第七波動…夢幻鏡の力よ…シアンを…私の家族を救う力となって…!!」
テーラが鏡で足場を作ってくれたので、落ちる危険性は大分減ったが、此方の攻撃は通用しない。
電子障壁に護られているコアが弱点なのだろうが、雷撃鱗を当ててもシアンを取り込んだためか、モルフォの時のようにはいかない。
八咫烏と黒豹が同時に襲い掛かる。
「邪魔だ!!」
八咫烏と黒豹にチャージショットを当てると、一瞬だけ電子障壁が解除された。
「電子障壁が解除された…今ですGV!!」
「分かった!」
GVが八咫烏と黒豹に避雷針を当てて、雷撃を流し込むとコアを護る電子障壁が解除されてしまい、弱点が露出してしまう。
「喰らえ!!」
即座にソウがチャージセイバーをコアに直撃させ、紫電にダメージを与える。
「無礼な男だ!!」
ソウに向けて連続で繰り出されるパンチなどの肉弾攻撃。
あまりの激しさにカゲロウを使わされ、オーバーヒートを起こしてしまう。
「奈落へ落ちろ!!」
「ぐあっ!!」
紫電の張り手を諸に喰らってしまい、ソウは落下していくが、テーラが足場を作ってくれたおかげで助かった。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、すまん…助かっ…上だ!!」
「えっ!?」
上を見上げると巨大な光弾がテーラに落ちようとしていた。
「させない!!」
GVが空中ダッシュを駆使してテーラを抱えて光弾から逃れる。
「よし、良いぞGV!!」
GVが八咫烏と黒豹に再び雷撃を流してくれたことで再びコアが露出する。
そしてソウがコアにチャージショットを直撃させる。
「くっ…穿て、星々の煌きよ!そして愚者よ、闇へ還れ!光に散れ!!」
人工衛星・“星晨”を利用したレーザーと八咫烏と黒豹がレーザーを放つなど、紫電の攻撃も熾烈となっていく。
「アンリミテッドヴォルト!!」
アンリミテッドヴォルトを発動して攻撃力を倍化すると、八咫烏と黒豹に雷撃を流し込み、そしてコアに避雷針を当てて紫電の体力を削る。
「ぐああああ…っ!!」
「シアンは絶対に取り返す…彼女の明日のためにも!!」
「明日…だと…?悪である君達に明日はない!!天統べる神の帝!銀河の彼方より招来れ天星!これが神罰、滅びよ愚者よ!!鳴動の虚空、彼方より招来れ!!……天津星よ!!!」
上を見上げると巨大な星がGV達目掛けて落ちてくる。
「あれは…!!」
「何という規模…あれは夢幻鏡でも避けられません…」
あまりのことに絶句するGVとテーラ。
紫電の体力を考えれば星が落ちる前に倒せるかどうか疑わしい。
せめて八咫烏と黒豹が無ければ話は別なのだが。
「……出来ればあまり使いたくはなかったが。GV、俺があのユニットと紫電をほぼ同時に攻撃してあいつの体力を一気に削る…最後の一撃を決めろ…」
「兄さん…」
「チャンスは一度きりだ。これが失敗したら俺達の負けだ。行くぞ」
「うん」
「気をつけて下さい、ソウ」
「ああ…迸れ、紅き雷霆よ!雷光の如き光速さを見せてやろう!!アクセルヴォルト!!」
紅き雷霆の力の身体強化を極限まで行い、生体電流も超活性化させ、全身に雷撃の膜を纏う。
そして足に力を入れて駆け出すとソウの姿が掻き消えた。
八咫烏と黒豹を斬り刻み、紫電のコアを露出させ、そして生体電流の超活性によりチャージが不要になった超高速移動でのチャージセイバーでの連続攻撃で一気に紫電の体力を削っていった。
「ぐおおおおおおっ!?」
八咫烏と黒豹が機能停止に陥り、紫電の弱点は常に露出することになるが、ソウの方も無事ではなかった。
超高速移動での超絶的な速さで酷使された銃は負担に耐えきれずにバラバラになり、ソウも10秒間能力を酷使して全ての力を使い果たしてしまい、オーバーヒートを起こしてしまっている。
「今だ…決めろ…GV!!」
「ありがとう兄さん…迸れ!蒼き雷霆よ!!煌くは雷纏いし聖剣!蒼雷の暴虐よ、敵を貫け!!スパークカリバーーーッ!!!」
アンリミテッドヴォルトで強化されたスパークカリバーが紫電のコアを粉砕した。
「馬鹿な…この僕を…秩序を…砕くか…!愚かだ…君達は…実に…愚かしい……。その先に待つのは…混沌と…破滅…だけだと…いうのに……秩序を失った能力者は…叛乱を起こすぞ…!」
「…!!」
「…ふん、それによって世界が滅びるならそれがこの世界の運命だと言うことだろう…未来は誰かに決められるものではない。自分の未来は自分でどうにかするものだ。貴様は大人しく死に果てていろ」
「ソウ…」
テーラがソウを見上げながら呟くが、ソウは紫電を睨むだけである。
「…無知と言うのは…愚かだ…僕だけが…この国を…ぐああああああっ!!」
断末魔の叫びを上げながら、紫電の肉体は崩壊し、大爆発を起こすのであった。
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