蒼と紅の雷霆
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蒼紅:第五話 爆炎
前書き
無印の倒錯枠です。
ソウのフェザーの制服はハードモードのカラーです。
因みにヘソ出しではありません。
あの電子の謡精抹殺ミッションから半年が経過した。
「こちらGV。フェザーへ、任務完了しました」
今日の仕事を終えて、帰宅したGVは依頼人(クライアント)に任務完了の報告を入れる。
GVとソウがフェザーを辞めて、フリーの傭兵…何でも屋のようなことをするようになってから、半年が経過してこの生活もそれなりに板についてきたのではないだろう。
たった半年ではあるけど、同居人も増えてこの生活が気に入りつつあった。
『お疲れ様、GV。ソウにもよろしく伝えておいて…まあ、必要ないでしょうけど……ねぇ、GV?これはソウにも言えることだけど結局のところ、あなた達が受ける依頼って殆どうちからのものなんだし…また、フェザーに帰ってくる気はないの…?それにシアンちゃんも…ソウと一緒にいるの大変じゃない?』
モニカはソウとシアンの関係に不安を感じているようだ。
ソウは無愛想で他人を拒絶する雰囲気もあってフェザー内でもあまり印象は良くない。
モニカも無能力者であるためかミッション以外は徹底的に避けられている。
「大丈夫ですよ。寧ろシアンは兄さんを慕っているし、兄さんも何だかんだでシアンの面倒を見てくれてるくらいですし。それに新しい同居人も兄さんが保護して連れてきたんですよ」
『ええ!?嘘っ!?』
やはり信じられないようだ。
GVも直接見なければ信じられなかったと思うし。
「本当ですよ。シアンも兄さんのことを自分の兄さんのように思ってくれてますから、多分シアンに関しては大丈夫だと思います。そろそろ兄さんの夕食が出来る頃ですから失礼します」
『え、ええ…お疲れ様…次の依頼までゆっくり休んでね』
モニカの引き攣った表情に苦笑しながらGVは家族の元に足を運んだ。
それから数日後、兄弟にアシモフから新たな依頼が舞い込んできた。
『今回、お前達に依頼したいのは皇神の工場施設への奇襲攻撃だ。目標である工場施設の最深部にこちらで用意する小型爆弾を仕掛けて欲しい』
「了解、施設内にはどう侵入すれば?」
『目標施設は、定期的に複数での自動運転の列車によって燃料物資の搬入を行っている。その列車に別々に乗り込めば戦力を分断しながら施設内部まで侵入出来るはずだ。頼んだぞGV、ソウ』
装備を整えるとアシモフの指示を受け、GVとソウは別々の列車に乗り込んで目標の施設である科学工場まで向かう。
GVは久しぶりでの単独行動となり、アシモフからの通信に応じる。
『皇神のソルジャーを乗せたヘリが、そちらへ向かったのを確認した。どうやら敵に気付かれてしまったようだ…。こちらでも邀撃はするが、全ては落としきれない。何人かのソルジャーは列車に取り付くことになるだろう』
「了解、何時ものことだけど、そう上手くはいかないね…取り付いた敵は片っ端から倒すしかない…か…こうなると兄さんの方にもかなりの敵が来ているんだろうな」
『ソウなら心配は要らんだろう。紅き雷霆の力なら多少の数の不利はお前同様にどうとでもなる。幸いなことに、列車は自動運転だ。敵さえ排除してしまえば目標施設までオートで運んでくれるはず…グッドラック、GV』
GVはダートリーダーの避雷針をチェックすると、一気に駆け出す。
襲い掛かる取り付いた皇神兵とロボットを雷撃で薙ぎ払いながら先に進むと赤いコンテナが視界に入った。
『その先に見える赤いコンテナは、可燃性の燃料を内包しているようだ。衝撃を与えれば爆発してしまう…気をつけろ』
「了解…なら雷撃鱗は使えないな…ここでは雷撃鱗のホバリングで攻撃をかわすしかないか」
赤いコンテナの上と近くを走っている時は雷撃鱗のホバリングを駆使して回避し、赤いコンテナから離れた場所からの避雷針発射とそれによる雷撃で敵を倒していく。
「侵入者!止められません!!」
「チィ…こうなったらスパイダーを出せっ!」
「そんな!まだアレは試験運用段階ですよ!?」
「構わん!奴らを仕留められれば、試験としても箔がつく!」
能力SSランクと言う世界トップクラスの能力者達を仕留めることが出来れば兵器としての性能の高さを知らしめることも出来る。
その言葉に反論していた皇神兵も押し黙り、スパイダーの発進準備を始めた。
「了解…スパイダー発進シークェンス!」
それにより皇神兵は士気を取り戻してGVを攻撃してくるが、実力差は埋めようがなく、GVの雷撃で全滅してしまう。
しかし、スパイダー発進の時間稼ぎにはなったのか先頭車輌に到達した瞬間にアシモフから通信が来た。
『このレーダーパターンは…!GV、気をつけろ…線路上に敵のタンクらしき反応だ。』
その言い方にGVは疑問符を浮かべる。
アシモフはミッションに置いては慎重に慎重を重ねる人物で、敵の情報収集について怠るような人物ではないのだ。
「“らしき”?…“らしく”ない言い方だね」
『該当パターンが見当たらない…気をつけろ、新型かもしれん』
次の瞬間、まるで蜘蛛を彷彿とさせる兵器がGVの前に姿を現した。
「確かに…見たことがないタイプだね」
『第十世代戦車(ジェネレーションテン)か…?…そいつに関してはまだデータが何もない。充分に注意してくれ』
「了解…帰ったらついでに戦闘レポートも出しておくよ」
『サンクス、いつもすまんな…』
アシモフとの通信を終えるとGVはスパイダーの攻撃をかわしながら露出するコアに避雷針を的確に当てて雷撃を流し込む。
しかし、流石は第十世代戦車と言うべきか、GVの雷撃をコアに受けてもまだ余裕がありそうだ。
「流石は最新型と言ったところかな…?でもどうしようもないわけじゃない!!次の一撃で決める!!」
レーザーをかわして露出したコアに新たなSPスキルの射程範囲に入ると、詠唱を始める。
「迸れ!蒼き雷霆よ!!煌くは雷纏いし聖剣!蒼雷の暴虐よ、敵を貫け!スパークカリバー!!」
蒼き雷霆の聖剣がスパイダーのコアを貫き、コアを破壊されたスパイダーは爆散した。
『グレイトだ、GV。そのままゲートモノリスを破壊し、工場施設まで潜入してくれ。ソウは第十世代戦車による妨害が無かった分、早く工場施設に潜入している。今なら敵の戦力がソウに集中していて潜入も容易いはずだ』
「了解…兄さん、無事だといいけど」
GVは一度も訓練でソウに勝ったことはないが、それでも心配するのだ。
作られた能力者であるGVからすれば同じ血を流す唯一の家族なのだから。
そして工場施設に潜入すると、凄まじい熱気によってGVは表情を顰める。
皇神の化学工場は運び込まれた燃料を燃焼させているのだろう。
施設内は肌を刺すような、強烈な熱気に満ち溢れており、普通の人間ならば、すぐに脱水症状を引き起こすだろう。
蒼き雷霆の力で熱をある程度遮断出来なければGVも長時間この施設にいることは不可能だ。
『潜入に成功したか…そのまま奥へ向かってくれ』
「了解…(やっぱり兄さんが先に来ていたからかな…こちらの警備が予想以上に薄い…つまりそれだけ兄さんにここの戦力が集中しているということだけど…)」
ソウならきっと大丈夫と確信しているGVは施設内を駆ける。
警備が手薄なので攻撃を受ける心配もなく溶鉱炉を雷撃鱗のホバリングで飛び越えることが出来た。
「それにしてもこの暑さはこの溶鉱炉のせいか…お約束といえば、お約束だけど…何に使っているんだ?」
些細な疑問を感じながらもGVは先に進み、パイプから漏れているスチームに表情を顰める。
『如何にお前といえど、触れるとダメージだ。ジャンプで回避しろ』
「了解…」
そしてGVは次の溶鉱炉も飛び越え、コンテナやロボットを蹴散らしながら進んでいく。
そしてセキュリティシステムのある部屋に辿り着き、コンベアのある慣れない足場での戦闘を余儀なくされる。
『トラップのようだな。各個撃破だ』
『聞こえるかGV?俺も似たような部屋に入ったが、そいつは警報装置を破壊すれば停止する。クードス狙いではないのならさっさと破壊してしまえ』
「ありがとう兄さん…」
ソウのアドバイス通りに警報装置に避雷針を撃ち込み、雷撃を流し込んで破壊する。
それによってコンベアは停止し、ロボットは送られなくなった。
『グッジョブ、GV。無事抜けられたようだな』
そして部屋を後にして先に進み、コンテナを破壊しながら進むとそこには小さな宝石があった。
「これは…こんな場所に宝石が… シアンにあげれば喜ぶかもしれないな…」
宝石をしまうとGVは雷撃鱗のホバリングで壁のスチームを避けながら降下していく。
そして支援物資を手に取って即座に水分を補給し、先に進もうとするが。
「侵入者め!ここから先へは通さんっ! その首…貰い受ける!」
『忍…忍者かっ!』
「くっ!!」
避雷針を撃つが、刀で弾かれてしまう。
「なら!!」
蒼き雷霆の身体強化と雷撃鱗を展開した状態で忍者に突っ込む。
雷撃鱗を受けて仰け反った忍者に雷撃を纏わせた拳による一撃を見舞う。
「ぐはっ!!己…」
「避雷針が当たらない時の対策くらいはしているさ」
そしてプラズマリフターに乗り込み、雷撃鱗を展開しながら先に進むとまた忍者が現れた。
「また忍者か…でもどうってことはない!!」
雷撃鱗で怯ませ、その隙に避雷針を当てて雷撃を流し込んで忍者を撃破する。
『グレイトだ、GV…皇神の前身は平安時代より続く陰陽師の一族だ…。忍法を使える者がいたとしてもおかしくはない…ということだな』
「…アシモフ…陰陽師と忍者を混同していない?」
学校でこの国の歴史を学んだGVはアシモフの知識がおかしいことに微妙な表情を浮かべる。
『その場所から更に進んだ所にこの施設の要とも言えるメイン動力炉がある。メイン動力炉さえ爆破してしまえば大量の燃料を積み込んだこの工場のことだ…イグニッション!!…一巻の終わりだろう。ゲートモノリスを破壊して奥へ進んでくれ』
「了解」
道を塞ぐゲートモノリスを破壊してGVは奥に進むと、アシモフから通信が入る。
『動力炉まであと少しだ。気を抜くなよ、GV』
「アシモフも意外に心配性だね」
『プロフェッショナルは常に警戒を怠らないものだ』
奥に進むと何者かの気配を感じる。
そこには皇神に所属している能力者らしき人物がGVを鋭く見据えていた。
この熱気に満ちた空間で何の装備もせずに平然としていると言うことは相当の能力者のようだ。
「アシモフ、敵だ。通信を切るよ…皇神の能力者か…そこを退け」
「退くものかよガンヴォルト…てめぇら兄弟が俺の管轄エリアにいるって聞いてよぉ…爆速でかっ跳んで来たぜっ。てめぇが行くのは…この先の動力炉じゃねぇ…地獄だっ!!俺はデイトナ!愛しのシアンちゃんを奪ったてめぇら兄弟を、俺は絶対ぇ許さねぇ…!」
「シアンが…何だって…?」
デイトナと名乗った能力者がシアンの名前を出したことでGVは思わず目を見開く。
「人の恋路を邪魔する奴らは…馬に蹴られてゴー・トゥ・ヘルだぜっ!!」
何もない空間から剣のような物が出現し、デイトナがそれを掴むと肉体が変質していく。
その姿は鎧を纏い、頭に一角獣の角のような物が生えている様な外見だった。
それと同時に、GVの撤退を妨害するかのように火柱が展開される。
「それは一体…!?」
初めて見る現象にGVが戸惑う。
「冥土の土産に教えてやるぜ!こいつが宝剣持ちの能力者の変身現象(アームドフェノメン)だ!!これは第七波動を制御するための触媒。普通の能力者は第七波動の“能力因子”を体の中に宿しているんだけどよ…皇神に管理されている能力者は、因子の大半を体外へ摘出して過度な能力が発動しないように色々と制約がかけられてんだ。その際に摘出された能力因子を隔離管理するための“器”がさっきの宝剣だ…そして変身現象は能力者が能力を使う時に体を最適な状態にするのさ…そろそろ始めるぜ…俺の愛しのシアンちゃんを奪ったてめぇら兄弟はここで蹴り潰す!!」
そして両腰の武装から炸裂弾を放ってきた。
「っ!!」
「オラオラオラァッ!!」
咄嗟に雷撃鱗を展開して炸裂弾を防御し、次はスライディングを繰り出してきたデイトナをジャンプでかわす。
「恋路…シアンにか!」
「決まってんだろぉが!それをてめぇら兄弟はシアンちゃんを連れ去りやがって…何してくれてんだよっ!!」
その言葉にGVは表情を顰めて、デイトナに向かって言い返す。
「シアンを道具として扱う…皇神の人間が何を言う!お前がシアンを慕っているというなら…何故彼女を救い出してあげなかった!」
その言葉にデイトナは鼻で笑うとGVに向かって言い放つ。
「ハンッ!てめぇもテロリストなんてやってんだ!なら、分かってんだろうが!俺らみてぇな能力者(ゴロツキ)に対して世間様は冷てぇ…皇神にいる限り、シアンちゃんは安全だ。そりゃ、多少は不満もあるかもしれねぇ…けど、アイドルってぇのは…“仕事”ってのはそんなモンだろうが?皇神を抜けんのが救いだっつーのはてめぇの勝手な押し付けなんだよっ!!」
再び炸裂弾を発射するが、GVにかわされて逆に避雷針を撃ち込まれて雷撃を受ける。
「彼女は自由を望んでいた…!人を苦しめる歌は嫌だと言っていた…!彼女にずっと…籠の中の鳥でいろと言いたいのか!」
「っ…本人が望むことだけがっ…幸せとは限んねぇんだよっ!!」
雷撃の痛みに耐えながらデイトナはジャンプでGVの真上を取ると、落下の勢いを加算した踵落としを繰り出す。
GVはギリギリでかわすが、衝撃の余波で僅かに吹き飛ばされる。
「ぐっ…彼女の意志を無視して、何が幸せだ…!」
「うっせぇうっせぇ!!つーか…何よりっ!!機械に繋がれたシアンちゃんはなっ、最高に胸キュンなんだよっ!てめぇはその楽しみを…俺の目の保養を奪いやがった!!許さねぇ、許せねぇ…絶対ぇ蹴り殺すっ!!」
その言葉にGVは危機感を抱いた。
「…倒錯しているのか!(危険な男だ…生かしておくわけにはいかない…!)お前の私欲の炎、僕の蒼き雷霆が掻き散らす!!」
「うるせぇっ!その雷ごと俺が燃やし尽くすっ!!燃え上がれ!俺の脚ぃっ!!」
GVの雷とデイトナの炎が激しくなっていく。
「迸れ!蒼き雷霆よ!!」
「スカシ野郎を蹴り貫けぇっ!!!」
「業深き炎を払う、雷鳴の衝撃となれ!!」
GVの雷撃とデイトナの炎が何度もぶつかり合うが、カゲロウによる攻撃無効化による差が出てきたのかデイトナのダメージが深くなっていく。
「塵すら残さねぇ…!!キレたぜ!太陽の如く燃え盛れ熱波!激情の灼熱、うねる猛火!煉獄の焔に残るは灰燼!!サンシャインノヴァ!!」
ダメージの蓄積によってキレたデイトナが切り札を切る。
火柱に突っ込んだかと思えば、それを足場にしてGVの真上に移動すると全身から周囲を埋め尽くす凄まじい炎の弾幕攻撃。
「(避けきれない…!!)」
カゲロウで攻撃を防げるものの、このままではEPエネルギーが底をついてしまう。
「ヒャッハァ!」
最後の攻撃が放たれ、その弾幕攻撃によって床は火の海となる。
「ハンッ!ようやく消し炭になりやがったか…なっ!?」
「まだ戦いは終わっていない!迸れ!蒼き雷霆よ!煌くは雷纏いし聖剣!蒼雷の暴虐よ、敵を貫け!スパークカリバー!!」
炎から飛び出してきたのは五体満足のGVであった。
一度はチャージが間に合わずに何発か受けてしまったが、何とか耐えきってサポートスキルのチャージングアップでEPエネルギーを回復してやり過ごしたのだ。
蒼き雷霆の聖剣がデイトナを貫く。
「あぁっ!シアンちゃ~んっ!」
聖剣に貫かれたデイトナの体が膨張し爆発を起こした後に宝剣の形に戻ると宝剣に亀裂が入る。
そして宝剣が砕ける寸前に、何処かへ転移してしまった。
それを確認したGVはアシモフに通信を繋ぐ。
『敵の能力者を倒したか』
「爆弾を仕掛けたら、すぐに脱出するよ」
『最後まで気を抜くなよ…ソウには私から伝えておく。お前は早く爆弾を仕掛けるんだ』
「…了解」
こうしてGVは動力炉に爆弾を仕掛けると、工場施設から脱出した。
後書き
デイトナって強いですよね…SPスキルを完全回避出来る人を尊敬します。
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