ある晴れた日に
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722部分:清き若者来るならばその八
清き若者来るならばその八
あらためて正道に話す。それぞれの言葉で。
「行こうぜ、なあ」
「未晴、行きましょう」
「あそこに」
「植物園にね」
こんなことを言ってであった。皆彼女を外に連れて行こうとする。そして彼女の母親であるせい海はそれに対してどうかというとだ。
「有り難う」
「いいんですね、それで」
「ええ、有り難う」
正道に礼を言うのだった。
続いて奈々瀬に顔を向けてだ。彼女にも声をかけた。
「奈々瀬ちゃんも」
「はい?」
「立派になったのね」
微笑んでいるが今にも泣きそうになっている。その顔での言葉だった。
「本当にね。立派にね」
「立派にですか」
「ええ、なったのね」
こう彼女に言うのである。
「いつも未晴に助けてもらっていたのに」
「だからです」
それが理由だと話す奈々瀬だった。
「私いつも未晴に助けてもらっていて」
「それでなのね」
「それで。そのことをいつも覚えていて」
昔のことを思い出しながらだ。そのうえで話すのだった。
「それでなんです」
「それでだったの」
「逃げようと思った時もあります」
その時のことも話すのだった。正直にだ。
「けれどそれでも」
「それでもなのね」
「逃げませんでした」
結果としてだ。正道と未晴の方を見てだ。そうして話すのだった。
そして二人に顔を向けてだ。こう話したのである。
「この二人を見ていると」
「逃げなかったのね」
「逃げられませんでした」
そうだったというのである。
「とても」
「そうだったの」
「未晴のことを。絶対に」
「それはね」
「それは?」
晴海は奈々瀬の言葉を聞いた。そしてそれをそのまま話すのだった。
「奈々瀬ちゃんがわかってくれていたからよ」
「私がですか」
「ええ、未晴のことをね」
こう奈々瀬に話していくのだった。
「大切に思ってくれていたのよね」
「それは」
その通りだった。言葉は一言でこくりと頷いたのだった。
「確かに」
「だからよ。有り難う」
「いえ、そんな」
「未晴はわかってくれているわ」
そしてこう話すのだった。
「ちゃんとね」
「そうですね。今はそれがわかります」
「だから言ったの。奈々瀬ちゃんは立派になったって」
「だからですか」
「これからも未晴を御願いね」
今度の言葉はこれだった。
「これからも。本当にね」
「わかりました。それじゃあ」
「皆も」
そしてであった。晴海の言葉は広いものになった。正道達全員にだというのだ。
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