人徳?いいえモフ徳です。
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五十三匹目
シュリッセル家のお婆様の部屋。
そこで僕はお婆様にプレゼンをしていた。
「という訳で新しい事業として『猫カフェ』というのを考えました。
衛生面とかそこら辺は魔法でどうにかするので問題ないかと」
「うむ。よかろ」
いろいろ考えた結果、新しい事業は猫カフェに決まった。
「してその猫はどこから持ってくる?」
「僕が街で手懐けた猫を使います」
「ほう」
「まぁ、話のわかるいいやつらです」
「そうか……では近日中に連れてくるのじゃ。
それまでに土地は買うておこう」
「はい。お婆様」
翌日、俺は話をつけていた街のボス猫の下を訪れた。
貴族街の路地裏にある空白。
そこには猫の楽園があるのだ。
「こゃーん!(来たよー!)」
猫の衛兵に案内され、王座のように一段高くなった場所の前へ。
「にゃぅ(あら、お早いお着きね。ご主人様)」
そこに寝そべる大きな猫。
前に色々あって調伏した猫だ。
「きゅぅん(お婆様があっさりとOK出したからね)」
「にゃぁ?(あのタマモ様が?)」
「きゅ?(知ってるの?)」
「にー(だって……いえ。その内わかるわ)」
「うきゅー?(どういうことー?)」
「うにゃ、にゃ?(それはそうと、用件は?)」
「きゅぁー(お婆様が君に会いたいってさ)」
「ふにゃ……にゃぁ(そう…わかったわ)」
「きゅーん?(いつこれる?)」
「にゃー(いまからでもいいわよ)」
「うきゅ!(なら決まりだね!)」
お婆様の下に猫を連れてきた。
「ほぅ? これはまた………」
お婆様がボス猫を見て目を細めた。
「久しいのぅ、バースト?」
「ええ、まぁ。貴方の孫は面白いわねタマモ。ところで私の娘は元気?」
「ぴんぴんしとるぞ」
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」
「本当面白いわね」
「いや、え? うそ? 話せたの君?」
「いつから話せにゃいと錯覚していたの?」
「なんっ…だとっ…!?」
次の瞬間、猫が立った。
後ろ足で。
「え? え? 何? どゆこと? え?」
「こやつはケットシー。精霊種の一種じゃよ。純血のな」
「精霊?」
「肉体ではなく精神を主体とする生命体じゃよ」
「聞いたことあるようなないような…?」
「まぁ、第一環から滅多に出てこんからのぅ。例外は…そうじゃの、風呂に居るヴァンニクとかかのぅ」
「へ~」
「こやつが統轄する猫であれば、問題ないじゃろ」
「宜しく頼むわよご主人様」
夏休み前に、お婆様に買ってもらった(お金は僕がポップコーンで稼いだけど手続きとかをしてくれたのはお婆様だ)土地で着工した。
王族や貴族の方々には猫好きが多いらしく、国王様もこの猫カフェ計画には賛同してくれた。
使う建材の一部は僕自身の魔法研究の成果である分子結合多重魔方陣素材(Multiple Magical Molecular bond Material)ことクォドム(4M)を使っている。
まだ目標には届いていないけど、それでも普通の建材よりも頑強だ。
ちなみに今シャクティが使ってる刀のディアマンタイトはこのクォドムだ。
「っていう話を定期試験前にしてていいの貴方?」
「え? だってしくじるような内容じゃないでしょ?」
今日から期末試験。
もうすぐ夏休みだ。
点が悪いと宿題が増える。
補習は無いらしい。
「とりあえず、上級生になるまではそんなに忙しくないだろうし、いくらでも魔法研究できるよ」
「そ。で、お父様達の協力は取り付けたの? さっきは『賛同』って言ってたけどもう少し詳しく聞きたいわ」
「国王様が国営化しようとしてツェツィーリア様に殴られてた」
「あー………」
「仕方ないから店の裏にシークレットルーム作ってる」
「ふーん……」
「あと上手く行けば貴族専用の店舗も作って欲しいとか…。その場合は国王様が全額持つとか言ってまた殴られてた」
「お祖父様どれだけ癒しに飢えてるのよ…」
「ちなみに今作ってる1号店は貴族も平民も平等だよ。
癒しを求める者に貴賎なし、ってね。
まぁ、さすがに王族は裏から通さないと不味いんだけどね」
「いっそ出張営業でもしたら?」
「いいね、それ。会員制にでもするかな。あー…でもなぁ、『貴賤なし』だもんなぁ」
「んー……いっそお婆様も説得して国営化するのは?」
「考えとくよ」
駄弁っていると俺達の番になった。
え? 場所?
魔法実技の試験会場…要するに運動場だよ。
「シラヌイ。貴方から行きなさい」
どうやら順序は俺かららしい。
「あ、ちょっとまってくださいシラヌイ君」
「「ん?」」
何故かレイ先生に止められた。
「お姫様と臣下は魔法実技は免除です」
「え?」
後ろを振り返ってくーちゃんとメリーちゃんとシャクティに視線で尋ねるが首を振る。
聞いてないようだ。
「いやー、試験の度に校庭壊されると困……げふんげふん。お姫様達は既に十分な練度ですから免除されます」
おい、本音漏れてっぞ。
「あ、そうですか。じゃぁ端っこであそんでまーす」
なんか免除らしいので、既に試験が終わっているグループの方に向かう。
で、地面に両手を触れる。
「錬成」
地面からズズズズズ…とベンチがせり上がる。
「どうぞお座りくださいお姫様」
「あらありがとう」
くーちゃんが座ると、直ぐに隣に座って尻尾を差し出す。
「はぁ…。拍子抜けね」
といいながらくーちゃんは僕の尻尾をもふもふする。
「仕方なかろう。私やメリーはともかく姫様と狐君は………うん……まぁ……」
「シャクティにさんせい。ぬいちゃんと姫様はもはや……うん…」
「はっきり言いなさいな」
「「人外レベルだとおもう」」
僕とくーちゃんが顔を見合わせる。
「「いや…人間じゃないし…」」
そういう事じゃねーよ、と言いたげな視線は無視する。
っていうか。
「異議あり!」
と僕が言うとくーちゃんが乗ってくれた。
「被告人どうぞ」
「メリーちゃんとシャクティも十分人外だと思います!」
と言うと二人が顔を見合わせた後にこそこそと小声で話始めた。
『どう思う?』
『確かに普通よりはできるけど、ぬいちゃんと姫様には劣る』
『同意見だ』
『私ガラスのゴーレムなんて作れないよ?』
『私も姫様のような戦略兵器染みた魔法は無理だ』
「聞こえてんぞー。おーい?」
狐耳だぞ。獣人だぞ。そんなひそひそ話聞こえないはず無いだろう。
「聞こえてるならわかるよね?」
とメリーちゃんに聞かれた。
「まぁ、そうなんだけども…」
なんか納得いかないなぁ。
「アンタ達二人も免除されてるって時点でわかりなさい。シャクティ、メリー」
「「えー……」」
僕達四人は無事に試験に合格した。
なお、『ほぼ』満点だった。
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