戦国異伝供書
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第五十二話 籠城戦その八
「甲斐の武田様や駿河の今川様が動いたというぞ」
「北条殿を助けに」
「こちらに兵を進めてくるという」
「そうなれば難儀だぞ」
「城を囲むどころではない」
「武田様も今川様も強いぞ」
「特に武田家の軍勢は鬼の様に強いというぞ」
晴信の名も聞いて余計に言うのだった、そうした話は城の方でも耳に入っていた。それでその話を聞いてだった。
氏康は笑ってだ、こんなことを言った。
「武田、今川に加えてじゃ」
「伊達殿ですな」
幻庵が応えた。
「あの御仁ですな」
「はい、近頃暴れておる伊達藤五郎殿です」
この名を出すのだった。
「あの独眼龍の」
「あの御仁の名をですな」
「出して」
そしてというのだ。
「関東を伺っていると」
「その様にですな」
「芦名氏を攻めようとしている」
「芦名家は佐竹家の縁戚ですからな」
「この話を聞けば佐竹家は浮足立ちますな」
「そして多くの兵を持つ佐竹家がそうなれば」
「他の家もとなりますので」
だからだというのだ。
「ここはです」
「伊達家の名もですな」
「出そうと思っていますが」
「よいかと」
幻庵は氏康に笑って答えた。
「それもまた」
「では」
「はい、ですが伊達殿については」
幻庵はその伊達の主のことについて話をした。
「あまり」
「安心出来ないですな」
「今奥羽は戦乱に覆われていますが」
「その戦乱の中心にいるのが」
「あの御仁です」
「伊達殿ですな」
「あの独眼龍殿です」
政宗その人だというのだ。
「まさに」
「どういった相手でも攻めていき」
「しかも我等もあまり持っていない鉄砲をです」
この武器をというのだ。
「あえて多く買い入れ戦の場に使っていますが」
「それも馬に乗って」
「そこから撃つという」
「誰も考えたことのない使い方をして」
「そうして戦われています、ですから」
それでとだ、幻庵は氏康に話した。
「あの御仁は」
「やがてですな」
「勢力を大きく伸ばし」
そしてというのだ。
「奥羽で大きな勢力となり」
「そのうえで」
「はい、この関東にもです」
「来ますな」
「今芦名殿とも戦っておられます」
このこともだ、幻庵は話した。
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