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東方果実鎧『紅』

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4.住み込みとバイトと執事長

紅魔館が誇るメイド長、十六夜咲夜の朝は早い。だが、この日は遅くなってしまった。そう、訪問者である智幸との戦闘で意識を失ってしまったからだ。いつもだったら日の昇る前から行動を起こす彼女だが、今日に限っては比較的に遅い目覚めとなってしまった。
「んん。ここ、は………私は、一体?」
寝惚けが入っているのか昨晩の戦闘のことを思い出すのに時間がかかってしまったことは否めないだろう。
「ハッ!そうだわ!お嬢さっ!」
主人の安否確認の為身体を起こそうとするも少し痛みが走る。
痛みで冷静を取り戻し一度周りを見渡す。
「ここは、客室?」
なぜ客室に寝ていたのか?そもそも誰が寝かせたのか?あの男はどうしたのか?等の疑問が堂々巡りしていると、扉が開かれる。
「お!目を覚ましたのか!いや~よかった~」
とひと安心と言いたげな顔をした智幸を見て咲夜は目を見開かせて驚いた。え?こいつ何してるの?と。それはそうだろう。何せ自分等を叩きのめした男が―――口ぶりから察して―――自分を治療し、あまつさえ執事服を来ているのだから。
「あなた!何故!っ()!」
「おいおい、あんまり無理すんなよ?順を追って説明するから。な?」
その言葉に渋々と咲夜も敵意を下げた。警戒は怠らないが。その様子に苦笑を浮かべるも、訳を話し始めた。



「あの後、すぐに目を覚ましたのはあんたの主、レミリアだった。俺は元々、ここの住人じゃないのはもう知っていると思うが、俺はある目的を果たすためにこの幻想郷にやって来たんだ。で、宿代わりに泊めてもらおうかと思ったら、喰われかけたと言うわけだ」
「吸血鬼の館にノコノコとやって来たあなたが悪いのですよ。で、その目的と言うのは?」
「幻想郷で今流行っているあれ。『インベスゲーム』を途絶えさせる。あわよくばすべてのロックシードを破棄する」
「インベスゲームをっ!?」
インベスゲーム。それは、弾幕ごっこと同様にこの幻想郷で流行っている決闘方式である。弾幕ごっこは本来力のある人間や妖怪、またはそれに準ずるものの決闘、自衛手段でしかなかった。逆説的に力のない人間は自衛手段すら持てないと言うことだ。だが、インベスゲームはその類いではない。インベスゲームとはロックシードを用いてインベス同士を戦わせるゲームだ。
つまり、極論ロックシードさえあれば誰でも決闘を行え、更にレミリア達のようにドライバーがあれば変身でき、自衛手段にもなる。これで平穏が訪れる。だが、幻想郷と言う場所はそれをよしとしない。
「幻想郷は『人は妖怪に脅かされ、妖怪は人を脅かす。そして人である博麗の巫女がこれを退治する』その概念によってバランスを保ち存在することができているはずだ」
「確かにその通りですが、それとこれになんの関係が」
「それをインベスゲームの名の元に人間が力を着ければバランスが崩れ幻想郷が消滅する」
「っ!?」
「そもそも、インベスゲームとロックシードはヘルヘイムの果実や植物に対抗するための苦肉の策による副産物とレミリアから聞いた」
「ええ、その通りです。幻想郷に突如として現れた謎の植物。通称『ヘルヘイムの植物』。そしてその果実をドライバーを通してもぎ取ることによってロックシードを作ることができる。そしてまた、ヘルヘイムの植物と共に現れたインベスたちに対抗するためのライダーシステムとロックシードなのです」
それもレミリアから聞いた、と言い一旦間を開け再度真剣な雰囲気を割り増しにして智幸は更なる結論を口にした。
「もし、幻想郷が消滅するような事態になればヘルヘイムの侵蝕が外の世界にも広がる。更にヘルヘイムへの対抗手段がない状態でそうなれば世界が滅びるのも秒読みだ」
「では、それを阻止するために?」
「ああ、そうだ。インベスゲームを終わらせる」
なるほど、と呟き今までの話を整理した。言っていることは突拍子もないことだが理に叶っている。それに信憑性もある。仮になかったとしても今や外の世界で暮らせない身。このリスクは見逃せない。
「それでなんだけど、その~思いっきり叩きのめしておきながらなんだけどよ。できれば、協力してもらえると、うれしいなーって」
さっきまでの雰囲気はどこにいったのか。今は申し訳なさそうにそして歯切れの悪い物言い。感情豊かな男だ。何とも不思議で面白そうな男だ。男性との交流が少ない咲夜は智幸に対しそんな感情を抱いた。
「ええ。わかりました。お嬢様の許しが降りた場合はあなたに協力ことを約束します」
「そうか!ありがとう!いや~マジよかった!」
心からの安堵の笑みを浮かべる彼を見て、彼の言ったことは嘘ではないんだと、直感したのであった。
「改めて、十六夜咲夜です。よろしくお願いします」
「ああ!葛葉智幸だ!よろしくな!咲夜!」









「そういえば、何故執事服を着てるんです?」
「いや、あんなことしちゃったしせめてもの償いとして、暫くは家事を手伝うって言ったら『なら、これを着なさい。そしてきっちり役割を果たすこと。いいわね?』って言われて」 
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