ある晴れた日に
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6部分:序曲その六
序曲その六
「俺も将来そうなるぜ。バイクに油でな」
「まあそうしな」
「っていうか御前まだバイク乗れないだろ」
このことを野茂と坂上に突っ込まれる。
「無免か?おい」
「ばれたらやばいぞ」
「馬鹿、ちげーーーよ」
それはすぐに否定する坪本だった。
「俺四月誕生日なんだよ。つうか明日だ」
「じゃあ明日になれば早速か」
「そうだよ。免許取りに行くぜ」
実に楽しげに一同に語る。
「明日からな」
「まあ頑張れよ」
「こけるなよ」
一応は声援を受ける。内容はあまりいいものではないが。ここで佐々がふとした感じで言ってきたのであった。
「そういえばあの北乃ってな」
「あいつがどうしたんだ?」
明日夢を指差すと皆も彼女に顔を向ける。
「カラオケ屋の娘だったよな」
「ああ、商店街のな」
「あのでっかい店のだろ。何階もある」
「スタープラチナだったか」
「あそこって飯美味いんだったよな」
語るその目が光っていた。
「結構な」
「飯はどうかわからねえがフリータイムは飲み放題だぜ」
野本が答える。
「結構安くてな。酒だって飲めるぜ」
「そうか、安いのかよ」
何故か佐々の目がさらに光るのだった。
「商売仇にならなきゃいいけれどな」
「商売仇!?」
正道が彼の言葉に顔を向ける。他の面々も。
「何だそりゃ」
「君の家もあれ?カラオケ屋?」
「いや、飯屋だよ」
こう桐生の問いに答えた。
「食い物なら何でも出せるぜ。無国籍料理ってやつだよ」
「そういうお店だったんだ」
「こいつの店の飯また凄いんだよ」
「凄いなんてものじゃねえぜ」
野本と坪本が笑いながら一同に述べる。
「本当に何でも出て来るし」
「しかも安い」
話を聞く限り確かにいい店である。
「味も悪くないしな」
「量がまた特にな」
「おいおい、それって凄くねえか?」
正道もここまで話を聞いてついつい笑顔になる。
「いいこと尽くめの店じゃねえかよ」
「そうだよ。だから来いよ」
佐々は笑って今の正道の言葉に応える。
「是非な。サービスしておくぜ」
「何か商売人多いクラスだな」
正道はギターを持ちながら上を見上げて呟いた。
「これも何かの縁か?」
「別にそれは普通だろ」
その佐々が正道に言う。
「だってよ。商店街もあるしな」
「ああ」
「そいじょそこいらに店なんてあるしな」
「それもそうか」
「そうだよ。しかし御前」
「今度は何だよ」
そのギターを手に佐々に言い返す。
「俺が何かおかしいか?」
「おかしいぞ」
「ああ、おかしいな」
野本も彼の言葉に頷く。
「いつもギター持ってな。ずっと持ってるのかよ」
「当たり前だろ」
平気な顔で答える。
「これは俺の命だぜ」
「命かよ」
「そうだよ、命だよ」
言いながらまだギターを持っている。
「これがないと生きていけないんだよ」
「まあこういう奴はよくいるな」
「音楽好きにはな」
野茂と坂上は一応はそれは認める。
「しかしな。それでもな」
「リアルで見ると結構な」
「引くってか」
今度はその二人に対して言う正道だった。
「まあ引くな」
「嘘言うのは嫌いだしな」
「ちぇっ、何なんだよ」
「とにかくさ。この一年」
桐生が話を纏めにかかってきた。
「皆で仲良くやろうよ。楽しくね」
「ああ、こちらこそな」
「宜しく」
野本と竹山が並んで応える。親戚同士でありながら実に対象的な二人の言葉が最後となりこの場は終わりとなったのであった。これがクラスのはじまりであった。
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