最も相応しい生贄
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第三章
「首環と手袋と球技の球が天井に吊るされていますよ」
「この家にか」
「そうなのか」
「前からお話しようと思っていましたけれどね」
それでもとだ、鼠は二人に話すのだった。
「お二人がいつも言われている」
「生贄か」
「その話か」
「はい、そのことがです」
「出来る時までか」
「お前は待っていたのか」
「そうなんです、そしてです」
まさにとだ、鼠は自分の前にいる二人に話した。
「私もその時が来たと思いまして」
「今か」
「このことを話してくれたか」
「この三つの道具を使われて」
そしてとだ、、鼠は二人に鋭い顔と声で話した。
「願いを果たされて下さい、私はこの家にずっと住んでいますから」
「俺達の味方か」
「そうしてくれるんだな」
「一緒に住んでいるから当然ですよ」
このことはというのだ、そして二人が家の天上を探すとだった。
確かにその三つの道具、首環と手袋と球があった。その三つを見付けた二人に鼠はさらに話した。
「お二人のお祖母様は隠していたんですよ」
「それは何故だ」
「どうしてだ」
「この三つの道具、特に球技の球のせいで」
「父上は生贄にされたからか」
「だからか」
「はい、それでなんです」
そのことを無念に思ってというのだ。
「隠していたんです、ですがこの三つの道具は」
「必ずだな」
「俺達の役に立つな」
「お二人の知恵があれば。ですから」
それでというのだ。
「後はです」
「この三つの道具を使ってだな」
「そうしてだな」
「ことを果たして下さい」
是非にと言ってだ、そしてだった。
二人はその三つの道具を手に取った、そうしてまずは父が遊んだ球戯場に行って二人で父の球を使って球技を毎日楽しんだ。するとだった。
その球技の見事さが評判になってだ、多くの者が話す様になり冥府シバルバの王の耳にも入った。
それでだ、王は周りに喜んで言った。
「次の生贄はだ」
「あの二人ですか」
「近頃球技の見事さで評判の」
「あの二人をですね」
「そうだ、生贄にする」
神々へのそれにというのだ。
「そうする、だからな」
「二人を呼びますか」
「このシバルバに」
「そうされますか」
「是非な」
こう言ってだった、王はフナフプとシュバランケをシバルバに呼んだ、二人は冥府からの使者に生贄のことは伏されて冥府の王が呼んでいることを伝えられるとだった。
まずは二人で無言で頷き合ってだ、それから使者に答えた。
「わかった、ではだ」
「今から行こう」
「そしてそのうえでだ」
「王に球技をお見せしよう」
二人は何も知らない顔で頷いた、それでだった。
二人で冥府に行くとだ、球技を見せたが。
玉座に座る王を見てだ、二人は秘かに話した。
「ではな」
「これからだな」
「生贄を捧げよう」
「その為に働こう」
こう言ってだった、何食わぬ顔で王の歓待を受けた。酒や馳走が連日連夜出されたが。
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