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夏のある日

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第五章

「やっぱり」
「お昼寝は長く寝た様でもね」
「実はあっという間なのね」
「そうした時が多いんだよ」
 祖母は起きたばかりの孫娘に笑って話した。
「お昼寝ってのはね、それで見る夢もね」
「変な夢が多いのね」
「そうしたものだよ」
「そうよね、ただ」
 その夢のことを思い出してだ、沙雪は言った。
「正夢もね」
「あるかも知れないよ」
「そうよね」
 沙雪は祖母に笑って応えた、そうしてから無意識のうちに自分の腹、そこにいる子供を摩った。それも優しい手の動きで。
 程なくして沙雪は出産した、生まれたのは女の子で。
 その娘の顔を見てだった、夫は笑って言った。
「母親似だね」
「そうね、まさかと思ったけれど」
 夢の話からだ、沙雪は応えた。
「私そっくりね」
「まさかか」
「ええ、若しかしてだったけれど」
 沙雪は今度はこう言った。
「もう一人の私みたいね」
「そうだね、じゃあこれからは」
「三人になったわね」
「これから楽しいな」
「そうね、それで名前だけれど」
 沙雪は夫に今度は娘の名前の話をした。
「夏希って私が言ったけれど」
「秋に生まれたのにかい?」
「ええ、夏希にしない?」
 こう夫に言うのだった。
「そうしない?」
「何で夏なのかな」
 夫にはそれがわからず聞き返した。
「最初に聞いた時から思っていたけれど」
「夏にこの娘と会ったからよ」
「夏に?」
「そう、夏にね」
 この時にというのだ、やはり夢のことを思い出しながら。それでこの機会に夫にその夢のことを話すと。
 夫も頷いてだ、沙雪に笑顔で答えた。
「それならな」
「いいわよね」
「そうだな、じゃあこの娘の名前はな」
「夏希ね」
「その名前にしようね」
「それじゃあね」
「ああ、宜しくな夏希」
 夫も笑顔で言った、そうしてだった。
 沙雪は夏希と名付けた自分の娘と夫の三人での生活をはじめた、夏希は成長するにつれて自分にそっくりになっていってだった。
 夢のことを思い出してだ、余計に愛おしくなり。 
 娘を可愛がって育てていた、夏希は心優しい娘になり余計に嬉しく思った。全てはあの夏の日にはじまり娘自身に教えてもらったことを思い出しながらだった、彼女は娘と共に幸せに暮らしていった。


夏のある日   完


                   2019・4・17 
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