英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第28話
~グランセル城・謁見の間~
「やれやれ…………エレボニア帝国の要求についての会議をする際、予想以上に荒れそうですな。」
「そうですね…………メンフィル・クロスベル連合に同盟を提案された事もそうですが、エレボニア帝国の貴族連合軍――――――いえ、ヴァイスラント決起軍までメンフィル・クロスベル連合についた事実はリベールもメンフィル・クロスベル連合と同盟を結んで”エレボニア帝国征伐”に加勢すきだという意見を加速させる事になるでしょうね……………………」
「……………………」
「陛下…………殿下…………」
シルフィエッタ達が去った後疲れた表情で溜息を吐いたカシウスの推測にアリシア女王は重々しい様子を纏って頷き、クローディア王太女は辛そうな表情で黙り込み、アリシア女王とクローディア王太女の様子をユリア准佐は心配そうな表情で見つめ
「ミルディーヌ公女だっけ。色々とこっちをイラッとさせる女の子だったけど、あのカイエン公とは比べ物にならない手強そうな人物だったね。」
「フィ、フィーちゃん。」
「うむ…………”アルノールの懐刀”と呼ばれた”ヴァンダール”を調略した上メンフィル・クロスベル連合とも交渉できる程の交渉能力に加えて、あのオーレリア将軍閣下に忠誠を誓わせる程の人望…………まさか、”カイエン公爵家”にユーディット嬢以外にもあのような優れた才女がいるとはな。」
「カイエン公と比べるとまさに”月とスッポン”よね。正直、あの公女が当時の貴族連合軍の”主宰”だったら、内戦は貴族連合軍が勝利したんじゃないかしら?」
「洒落になっていないわよ、その推測…………」
フィーの感想にエマが冷や汗をかいている中、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、呆れた表情で呟いたセリーヌの推測を聞いたサラは疲れた表情で溜息を吐いた。
「…………多分カイエン公は彼女の優秀さに気づいていなかったとは思うけど、ミュゼ君がカイエン公によってアストライアに封じられていた事は結果的に私達もそうだけど、オズボーン宰相達帝国政府からもマークされなかった事で”ヴァイスラント決起軍”をメンフィル・クロスベル連合側にする為に裏で動いていた彼女にとっては好都合な状況だったんだろうね。」
「え…………ミルディーヌ公女殿下がカイエン公によってアストライアに封じられていたってどういう事なの?」
アンゼリカの話を聞いたトワは不思議そうな表情でアンゼリカに訊ねた。
「彼女の亡くなった父親――――――アルフレッド公子はカイエン公にとっては兄君に当たる人物でね。海難事故で奥方と共に亡くならなかったら、アルフレッド公子が”カイエン公爵家”の当主の座についていたと言われていたんだ。」
「そしてカイエン公がカイエン公爵家を継いだ際、アルフレッド公子の忘れ形見である彼女が自分の地位を脅かす事を警戒した為、ミルディーヌ君は幼い頃からカイエン公によってオルディスから追放される形で聖アストライア女学院に入学させられて、カイエン公爵家が主催する社交界等にも呼ばれる事は滅多になかったそうだ。」
「ミルディーヌ殿にそのような経緯が…………」
アンゼリカとオリヴァルト皇子の説明を聞いたアルゼイド子爵は驚きの表情を浮かべた。
「でも実際ミルディーヌ公女は私達よりも年下なのに残党だった貴族連合軍を纏め上げて、メンフィル・クロスベル連合と交渉してヴァイスラント決起軍をメンフィル・クロスベル連合側にする事ができたから、ミルディーヌ公女の存在を警戒していたカイエン公の判断は間違っていなかった証拠よね…………」
「うん…………そしてそんなミルディーヌ公女もリィンの”部下”になって、メンフィル・クロスベル連合軍の一員として僕達と敵対する事になるんだよね…………」
「ちょっ、まだ僕達がメンフィル・クロスベル連合軍と敵対する事になったと決まった訳じゃないんだから、そんな縁起でもない事を言わないでくれよ…………」
アリサと共に複雑そうな表情を浮かべて呟いたエリオットの言葉を聞いたマキアスは不安そうな表情で指摘し
「もしかしたらある意味ルーファスさんよりも手強い人物かもしれないな、ミルディーヌ公女は…………――――――すまない、ユーシス。不躾にも亡くなったルーファスさんの名前を出してしまって。」
ガイウスは静かな表情で推測した後戦死したルーファスの名前を出した事にすぐに気づいてユーシスに謝罪し
「――――――気にするな。兄上の死は既に受け入れている。」
謝罪されたユーシスは全く動じていない様子で謝罪が不要である事をガイウスに答えた。
「そういえばクローディア。パント大使との会談を切り上げてこちらに戻ってきたとの事ですが、交渉の結果はやはり芳しくなかったのでしょうか?」
「はい…………パント大使達から説明された事で判明した事実も踏まえて報告させて頂きます――――――」
ある事を思い出したアリシア女王の問いかけに辛そうな表情で頷いたクローディア王太女はオリヴァルト皇子と共にメンフィル大使館での出来事を報告した。
「ミルディーヌ公女も仰っていましたがリィンさん達もそうですが、まさかアルフィン殿下がエレボニア帝国を存続させる為に敢えてメンフィル帝国軍としてエレボニア帝国と戦う事を決められたとは…………」
「確かにメンフィルは実力と信用を備わった人物であれば、例えその人物が年若い人物であろうとも相応の評価をするでしょうな。――――――実際、娘と孫娘もメンフィルによって”侯爵”と”伯爵”の爵位を授けられたましたし、リィン師弟は先日のクロスベル迎撃戦での活躍で”少佐”に昇進したとの事ですし、エリゼも若年でありながらもリフィア殿下の専属侍女長を務めている事で、リウイ陛下達の信頼を掴み取り、それによってメンフィル方面に対して強力な”コネ”を手に入れましたしな。」
報告を聞き終えたアリシア女王とカシウスはそれぞれ重々しい様子を纏って呟いた。
「…………アリシア女王陛下、クローディア王太女殿下。”アルスター襲撃”の調査の件も含めて我々もそろそろ失礼させて頂きます。」
「そうですか…………メンフィル・クロスベル連合との和解に何の御力にもなれなくて申し訳ございませんでした。」
オリヴァルト皇子が自分達もリベールから去る事を伝えるとアリシア女王は静かな表情でオリヴァルト皇子に謝罪した。
「その件は全て私の力不足やエレボニア帝国政府の愚かさに非がありますので、どうかお気になさらないでください。――――――それよりもリベールまでエレボニア帝国政府の謀で”百日戦役”以来の国家存亡の危機に陥ってしまった以上、どうか私達の事は気にせずリベールにとって”最良の判断”をしてください。…………私を含めたエレボニア帝国はリベール王国に散々お世話になっておきながら、その”恩”を”仇”で返すような余りにも道理に反する愚かな国家に堕ちるくらいならば、いっそ滅亡した方が世の為、人の為でしょう。」
「オリヴァルト殿下…………」
「…………我が国へのお心遣い、ありがとうございます。――――――殿下達の今後の活動に女神の加護があらん事を。」
「どうかお気を付けて。」
オリヴァルト皇子の話にユリア准佐が辛そうな表情を浮かべている中、アリシア女王とクローディア王太女はオリヴァルト皇子達に別れと応援の言葉をかけた。
その後アリサ達はグランセル城を後にして空港に向かって空港に停泊させている”カレイジャス”の停泊場所に到着した時、ある人物がアリサ達の後ろに現れて声をかけた。
~グランセル国際空港~
「――――――どうやらちょうどいいタイミングだったようだな。」
「へ…………」
ある人物の声を聞いたアリサが呆けた声を上げて仲間達と共に振り向くとそこにはミュラーがいた。
「ミュラー少佐…………!」
「どうしてミュラー少佐がリベールに…………」
ミュラーの登場にエリオットは驚きの声を上げ、ガイウスは不思議そうな表情でミュラーを見つめた。
「”第七”が解体された後、お前達に合流しようと四苦八苦していたんだが…………ある人物がエレボニア帝国からの離脱とリベール王国への入国に手を貸してくれてな。グランセルに到着した際に”カレイジャス”が停泊している事も確認できたから、こちらに向かったのだ。」
「”第七機甲師団”まで解体されていたのか…………ちなみにミュラー、宰相殿達によってヴァンダールの役目を解かれた事は?」
ミュラーの話にその場にいる者達が全員血相を変えて驚いている中重々しい様子を纏って呟いたオリヴァルト皇子はミュラーにある事を訊ね
「ああ…………ヴァンダール家の皇族の守護職の任が解かれた事も聞いている。」
「そうか…………フッ、ヴァンダールの役目が解かれたにも関わらず、僕の元に駆け付けるとはさすがは我が親愛なる友!さあ、君の愛に応えてあげるから、遠慮なくボクの胸に飛び込んできたまえ!」
ミュラーの答えを聞くといつものお調子者な様子を見せ、その様子を見たその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。
「ほう、ならば遠慮なくこの魔剣で貴様のその腐った性根を叩き斬らせるか、反省するまで凍らせるてもらえるか?」
「ゴメンなさい。ふざけた事は謝りますから、ウィル君を始めとしたチート技術者メンバーによる共同開発のその魔剣で突っ込むのはマジで勘弁してください…………」
顔に青筋を立てて魔剣を収めている鞘に手を当てたミュラーの言葉に対して疲れた表情で謝罪したオリヴァルト皇子の様子にその場にいる全員は再び冷や汗をかいて脱力した。
その後、オリヴァルト皇子達はミュラーと共にカレイジャスに乗り込み、”アルスター襲撃”について調べる為にカレイジャスが”アルスター”に向かい始めている中、オリヴァルト皇子達はこれまでの経緯をミュラーに説明した。
~カレイジャス・ブリーフィングルーム~
「…………そうか。継母上とクルトがメンフィル・クロスベル連合側についたアルフィン皇女殿下をお守りする為にメンフィル・クロスベル連合に…………」
「――――――すまない、ミュラー。アルノール、カイエンに続いて”ヴァンダール”まで二つに分かれる事になってしまった事も元を正せば、メンフィル・クロスベル連合との戦争を望む宰相殿の考えに賛同した父上や内戦の最中、”ユミル襲撃”の件についてもっと重く受け止めてメンフィル帝国に謝罪や賠償についての交渉を行わなかった私達アルノール皇家に責がある。」
事情を聞き終えて重々しい様子を纏って呟いたミュラーにオリヴァルト皇子は謝罪し
「…………気にするな。メンフィル帝国の件に関してはお前同様”ユミル襲撃”が起こった事を軽く見ていた俺にも非がある。…………それに恐らくだが父上はメンフィル・クロスベル連合との戦争で最悪皇家の守護職についていたヴァンダール家が滅ばないようにせめて継母上とクルトに生き残ってもらう為にも、二人をメンフィル・クロスベル連合へと送り出したのかもしれん。」
「メ、”メンフィル・クロスベル連合との戦争でヴァンダール家が滅ばないように”って…………」
「…………まあ、メンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”が本格的になれば、メンフィル・クロスベル連合の刃はいずれアルノール皇家に近づいて、”アルノールの懐刀”と呼ばれたヴァンダール家もそれを阻止する為にメンフィル・クロスベル連合と戦う可能性に発展する事は十分に考えられるだろうね。」
「しかもゼクス中将は第三機甲師団の団長だから、エレボニア帝国を守る為にいずれメンフィル・クロスベル連合とぶつかる事になるのだろうな…………」
「普通に考えて、今回の戦争、メンフィル・クロスベル連合が圧倒的に優勢なのはわかりきっていたから、そんなメンフィル・クロスベル連合につけば、メンフィル・クロスベル連合に送り出したヴァンダール家の二人の生存率も格段には上がる事になるとわかっていたから、あの二人をメンフィル・クロスベル連合に送り出したという訳ね…………」
ミュラーの推測を聞いたエリオットが不安そうな表情を浮かべている中、アンゼリカは重々しい様子を纏って呟き、ガイウスとサラは複雑そうな表情を浮かべて呟いた。
「…………それにしてもミルディーヌ公女が貴族連合軍の残党――――――いや、ヴァイスラント決起軍の”総主宰”か。聖アストライア女学院に在学していた頃の彼女とはアルフィン皇女殿下の縁でお前共々知人の関係だったが…………彼女には完全に欺かれていたようだな。」
「ハハ…………彼女もそうだがユーディット君も結果的にカイエン公の存在が隠れ蓑になっていたお陰で、私達にもそうだが宰相殿達の裏をつけたのかもしれないね。――――――そういえばミュラー、帝国軍を出奔した君はどうやってリベールに入国できたんだい?」
重々しい様子を纏って呟いたミュラーの言葉に疲れた表情で答えたオリヴァルト皇子はある事が気になり、ミュラーに訊ねた。
「ケビン神父だ。教会の情報網で俺の状況を知ったらしくてな。彼から用事で自分達がリベールに向かうついでに俺も教会が保有している飛行艇に便乗しないかと申し出てくれ、その申し出を受けた俺はケビン神父の飛行艇でグランセル近郊の街道まで送ってもらえた。」
「そうか…………ケビン神父が…………」
「あの…………七耀教会って飛行艇まで保有しているんですか…………?」
ミュラーとオリヴァルト皇子の会話内容が気になったマキアスは不思議そうな表情で訊ねた。
「多分その二人の話に出てきた神父は話の流れからして守護騎士でしょうから、”天の車”を使ってリベールに入国したんじゃないかしら?」
「”天の車”…………?」
「それに守護騎士というのは確か…………」
「”星杯騎士団”を束ねる12人の特別な騎士とやらか。」
セリーヌの話から出た聞きなれない言葉にトワが不思議そうな表情で首を傾げている中、ラウラとユーシスは真剣な表情で呟いた。
「”天の車”っていうのは守護騎士全員に与えられるアーティファクトを利用した特殊飛行艇らしくてね。エプスタイン財団の協力で作られたそうよ。」
「ええっ!?エプスタイン財団がその飛行艇の開発の協力を…………!?」
「それもアーティファクトを利用した飛行艇ですか………」
「という事はあのワジって守護騎士もその”天の車”って飛行艇も持っているんだ。」
サラの説明を聞いたアリサは驚き、エマが考え込んでいる中フィーは静かな表情で呟いた。
「ミュラー少佐はそのケビン神父という人物のお陰で我々と合流できたとの事だが、その神父のリベールの”用事”というのはよもや、現代のゼムリア大陸に降臨し、現在リベール王国の領土内に滞在しておられる”空の女神”関係なのか?」
「ええ、子爵閣下もご存知のように”アルスター襲撃”の件でリベール王国までエレボニア帝国との関係が緊張状態に陥ってしまった為、”七耀教会”はエレボニア帝国の諜報関係者やエレボニア帝国が雇った猟兵がリベール王国に潜入して”空の女神”やその一族を拉致し、政治利用する可能性を警戒して”空の女神”とその一族の護衛を増やす為にケビン神父達も”空の女神”達の護衛を担当する事になったとの事です。」
「エ、エレボニア帝国が女神様達を拉致して政治利用するって…………」
「まあ、”空の女神”は何といっても遥か昔からゼムリア大陸全土で崇められてきた唯一の”女神”なのだから、メンフィル・クロスベル連合、そしてリベールとも戦争するつもりでいるエレボニア帝国が掲げる”大義”として利用できれば、メンフィルはともかくクロスベル、リベールの国民達に衝撃を与えて両国を混乱に陥らせる事はできるだろうね。」
「うん…………それにミュラー少佐の話だと七耀教会はリベール王国が女神様を政治利用するような事はないと信じている事に対して、エレボニア帝国は女神様を政治利用しようとする事を疑っている事にもなるから国家間の関係が戦争状態になった際に”中立の立場”として仲介する立場である七耀教会――――――アルテリア法国にとってもエレボニア帝国の印象は相当悪い事になっている証拠だよね…………」
「それは…………」
アルゼイド子爵の質問に答えたミュラーの説明を聞いたエリオットが不安そうな表情をしている中、重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの推測に悲しそうな表情で頷いたトワの推測を聞いたラウラは複雑そうな表情を浮かべた。
「ああ…………二人の言う通り、七耀教会は既にエレボニア帝国を”要警戒対象”と見ているとの事だ。――――――最もケビン神父曰く、”空の女神”もそうだが”空の女神”の一族達も全員最低でも”執行者”クラスの使い手の為、例えエレボニア帝国の諜報関係者や猟兵が”空の女神”達を拉致しようとした所で全員”返り討ち”に遭う事は目に見えているから、無意味な心配だと苦笑していたがな。」
「め、女神様達が最低でも”執行者”クラスって…………!あの人達、そんなに滅茶苦茶強いんですか!?」
「オーブメント無しかつ無詠唱で最高位アーツも放つ事ができる”空の女神”やその母親の”女神”、それとその二人の先祖の女の方と傍にいた妖精は化物じみた霊力が感じられていたから、その連中は相当な術者である事は予想できていたけど…………他の連中も本当にそんなに強いのかしら?」
ミュラーの説明を聞いて仲間達と共に血相を変えたマキアスは信じられない表情で声を上げ、目を丸くしたセリーヌは困惑の表情で訊ねた。
「ああ。まずナユタ君はノイ君とたった二人で遥か昔のゼムリア大陸――――――いやこの”星”の”意志”が遥か昔の人間の愚かさに絶望して人間を滅ぼそうとした際に、”星の意志”や”星の意志”に従う精霊のような存在と戦って勝利し、人間には存続する価値がある事を認めてもらって”星自身”を救った”星の英雄”なんだよ。」
「ほ、”星の意志”と戦って勝った”星の英雄”って………!」
「一体どのようにして”星の意志”や”星の意志”に従う精霊のような存在とたった二人で戦って勝利したのでしょうね…………?」
「フム…………見た限りは我らとそれほど変わらない少年に見えたが、まさかそのような偉業を成し遂げていたとはな。」
「さすがは非常識な”空の女神”の一族だけあって、先祖も非常識なようだな。」
「ハッハッハッ、さすがはトワの先祖だけあって、とんでもない経歴だね♪」
「だからあのナユタ君って人とわたしはたまたまファミリーネームが一緒なだけで、先祖と子孫の関係じゃないって言っているじゃない、アンちゃん!」
オリヴァルト皇子の話を聞いたアリサとエマは信じられない表情をし、ラウラは感心した様子でナユタを思い浮かべ、ユーシスは呆れた表情で呟き、暢気に笑いながら呟いたアンゼリカにトワは疲れた表情で指摘した。
「そしてアドル君は君達もご存知の”赤毛の冒険家の冒険日誌”の主人公だから、彼もあの冒険日誌の内容通り、様々な”冒険という名の修羅場”を潜り抜けた事は容易に想像できるだろう?」
「た、確かに言われてみればあの物語の内容ってそれこそ”おとぎ話”で出てくるような非現実的な内容だったよな…………?」
「話通りの使い手だったらどう考えても護衛よりも強い連中じゃない…………」
オリヴァルト皇子の指摘にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中マキアスは表情を引き攣らせて呟き、サラは呆れた表情で溜息を吐いた。
「その意見には同感だ。――――――ちなみに実際に”碧の大樹”で”空の女神”が戦う所を傍で見た事もあるケビン神父の話によると、”空の女神”は”神槍”を得物とする槍使いとしても相当な使い手で、”空の女神”の槍術は”人の身では絶対に敵わない”事を思わせるような絶技の上、ゼムリア大陸自身が”空の女神”を常に祝福し続けている為”空の女神”は”戦う場所がゼムリア大陸であれば、常にゼムリア大陸からの加護を受け続ける事ができる”との事だ。」
「……………………」
「ゼムリア大陸が空の女神に加護を…………」
「つ、つまり”空の女神”はゼムリア大陸自身から常に霊力を供給され続ける事にもなりますから、アーツを始めとした魔法も無限に発動させる事も可能なのでしょうね…………」
「それどころかその話通りだと”空の女神”はゼムリア大陸の霊脈に直接干渉できるという事にもなるから、それこそ火山の噴火、大地震、津波等と言った”天災”を人為的に起こすことも可能なのでしょうね。」
「しかも戦士としての実力も計測不可能クラスって、色々とふざけた女神だけど、実力は間違いなく化物――――――ううん、言葉通り”神クラス”のようだね。」
ミュラーの話を聞いて仲間達と共に驚いたアリサは驚きのあまり口をパクパクさせ、ガイウスは呆けた表情で呟き、エマは信じられない表情で呟き、セリーヌは目を細めて推測し、フィーは静かな表情で呟いた。
「フッ、さすがはエステル君やカシウスさんの先祖だね…………――――――そういえばミュラー。”空の女神”の話が出た時から気になっていたが、今回の戦争、”七耀教会”も信仰対象である”空の女神”とその一族が動かない以上、やはり彼らも和解に向けて動くつもりはないのかい?」
「…………今の所はどの勢力からも和解を求められていない事から”中立の立場を保つ為”に静観に徹しているとの事だ。――――――が、リベールに滞在している”空の女神”とその一族にまでエレボニア帝国の関係者が害を為そうとした場合、”エレボニア帝国にとって最悪の状況”に陥る可能性はありえると言っていたな。」
「エ、”エレボニア帝国にとって最悪の状況”って、今以上に最悪の状況って一体どんな状況なんですか…………?」
オリヴァルト皇子の質問に答えたミュラーの話が気になったマキアスは不安そうな表情で訊ねた。
「…………恐らく”空の女神”とその一族にエレボニア帝国が手を出した場合、七耀教会が”エレボニア帝国自体を外法”――――――いえ、神に仇なす”神敵”と認定してエレボニア以外の世界各国にエレボニア帝国を滅ぼす呼びかけをする事だと思うわよ。」
「エ、エレボニア以外の世界各国にエレボニア帝国を滅ぼすように呼びかけるって事は…………!」
「エレボニア帝国以外の全ての国家とエレボニア帝国による世界大戦が勃発してしまう事になってしまう事になりますよね…………」
「…………それどころか、”空の女神”の信仰が篤いエレボニア帝国内の国民や貴族達、それに軍人達まで暴動を起こす事でエレボニア帝国国内でも内乱が勃発する事も十分に考えられるな…………」
「はい…………もしそんな事が起これば、今度は軍人達に限らず、エレボニア帝国の平民、貴族問わずに去年の内戦とは比べ物にならないくらいのおびただしい数の犠牲者を出すことになるでしょうね…………」
セリーヌの推測を聞いて仲間達と共に血相を変えたアリサとエマは表情を青ざめさせ、重々しい様子を纏って呟いたアルゼイド子爵の推測にトワは悲しそうな表情で頷いた。
「ハハ…………そんな事にならないように宰相殿達が”空の女神”達にまで手を出す事を”女神”に祈る――――――おっと、そんな事をすれば”空の女神本人”に嫌がられるだろうから、異世界の神々に祈るしかないね。」
「冗談抜きで洒落になっていませんよ…………――――――それよりもまずは襲撃された”アルスター”の状況がどうなっているかね。せめて”ハーメル”の時のように、生存者がいればいいのだけど…………」
疲れた表情で呟いた後冗談交じりで呟いたオリヴァルト皇子の言葉に仲間達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたサラは疲れた表情で溜息を吐いた後複雑そうな表情を浮かべ
「カイ君とティーリアちゃんもご無事だといいですね…………」
「ええ…………」
不安そうな表情で呟いたエマの推測にアリサは不安そうな表情で頷いた。
その後カレイジャスはアルスター近郊の街道に着陸し、カレイジャスから降りた後徒歩でアルスターに向かったアリサ達は襲撃の爪痕を残しているアルスターの景色を目にした――――――
後書き
という事でこの話にてようやくミュラーが合流、Ⅶ組側の仲間としてパーティーインしました。まあ、ミュラーが仲間になった所で、他の勢力の戦力と比べたら微々たるものでしょうが(オイッ!)
ページ上へ戻る