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レーヴァティン

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第百十四話 長田にてその五

「娘のところに行こう」
「そうされますね」
「棟梁の正室に相応しいと言われている方のところに」
「そうされますね」
「これからな」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 英雄はその娘がいるという呉服屋に向かった、娘はそこで働いているのだ。するとその店の入り口でだった。
 小柄で垂れ目で八重歯が目立つ娘が元気よく働いていた、愛想よく動きは的確で速く実によく働いている。
 その娘を見てだ、英雄は言った。
「いい感じだな」
「はい、明るくて活気があって」
「笑顔も眩しいですね」
「あれはいい娘ですね」
「実に」
「放っておいてもだ」
 それこそというのだ。
「誰かいい男とな」
「結ばれますね」
「あの娘ならば」
「器量もいいですし」
「それなら」
「ですから」
 供の者達も英雄に話した。
「ここはです」
「あの娘でいいかと」
「だからです」
「すぐにでも」
「声をかけるべきか、だが」
 ここでだ、こうも言った英雄だった。
「すぐにはな」
「声はかけられないですか」
「今すぐには」
「それは無理ですか」
「棟梁としては」
「いい目をしている、そして動きもな」
 その両方を見ての言葉である。
「いい、おそらく俺の正室になってもだ」
「大丈夫ですね」
「この浮島を統一して世界を救われる方のご正室になられても」
「それでもですね」
「このことは」
「そうだ、いい」
 こう言うのだった。
「間違いなく北政所の様になる」
「大坂の守り神の奥方である女神でしたね」
「気立てがよく働き者の女神です」
「良妻の守り神です」
 この世界ではねねはそうなっているのだ、大坂の守り神である豊臣秀吉の妻となったそのうえでだ。
「あの女神の様にですか」
「あの方はなられますか」
「そうですか」
「その様に」
「だからだ」
 そのことを見抜いたからだというのだ。
「俺は必ずだ」
「あの娘をですね」
「ご正室とされますね」
「そうされますね」
「俺は秀吉公ではないが」
 それでもというのだ。
「必ずだ」
「あの方を迎えられますか」
「そしてその為に」
「今は、ですか」
「動かれませんか」
「確かにいい娘だが相手がいればな」
 既にというのだ。
「諦めるしかないしな」
「強引にとはされないですか」
「そこで」
「そうはされないですか」
「そうされることは」
「俺は人のものには興味がない」
 英雄はこのことは強く言い切った。 
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