英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第26話
1月16日、同日PM12:20――
グランセルに到着後、グランセル城にクローディア王太女と共に入城したアリサ達がアリシア女王がいる謁見の間に向かうと、謁見の間にはアリシア女王だけでなく、カシウスもアリシア女王の傍に控えていた。
~グランセル城・謁見の間~
「お祖母様…………!」
「クローディア…………それにオリヴァルト殿下達も。その様子ですと、貴女達も既に”アルスター”の件について聞き及んでいる様子ですね…………」
慌てた様子で謁見の間に入ってきたクローディア王太女達を見たアリシア女王は重々しい様子を纏って答え
「はい…………会談の最中にリウイ陛下からパント大使閣下に急遽連絡があり、その場で”アルスター襲撃”について軽く説明を受け、会談を切り上げてグランセルに帰還すべきだというパント大使閣下達のお心遣いに甘えて、こちらに急行したのですが…………」
「……………………やはり、パント大使閣下達が仰ったように、”アルスター襲撃”が実際に起こり、帝国政府はその犯人をリベール王国であると断定しているのでしょうか…………?」
アリシア女王の問いかけにクローディア王太女が答えた後オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏ってアリシア女王に問いかけた。
「誠に残念ながら、殿下達の仰る通りです。先程ダヴィル大使閣下がこちらに訪れ、”アルスター襲撃”の件についての説明を行い、帝国政府の決定に対して大変不服な様子を見せながらも帝国政府の要求をリベール王国に伝えました。」
「貴方は一体…………?」
アリシア女王の代わりに答えたカシウスの話を聞いたガイウスは不思議そうな表情でカシウスを見つめ
「フフッ、まさかこんな形で再会する事になるとはな。これも”空の女神”の悪戯かもしれませんな――――――オリヴァルト殿下、サラ。」
「ハハ、エイドス様はご自身が関係する言葉に関して随分と嫌がっているご様子でしたから、その言葉はご本人の前では口にしないほうがいいと思いますよ。」
「……………………お久しぶりです、カシウスさん。」
苦笑しながら話しかけたカシウスに対してオリヴァルト皇子も苦笑しながら答え、会釈をしたサラの言葉にアリサ達はそれぞれ驚いた。
「カ、”カシウス”ってまさか…………!」
「貴方が”百日戦役”で活躍したあのリベールの英雄――――――カシウス・ブライトなんですか………!?」
「ん。しかも”空の女神”の子孫でもあるね。」
「貴方があの”剣聖”――――――カシウス・ブライト卿…………」
エリオットとマキアスは信じられない表情でカシウスを見つめ、フィーは静かな表情で呟き、ラウラは呆けた表情でカシウスを見つめた。
「ハハ、”空の女神”関連に関しては俺も最近知った青天の霹靂の事実だから、正直今でも実感はないんだがな。――――――改めて名乗ろう。リベール王国軍総司令、カシウス・ブライト中将だ。時間が惜しい――――――早速になりますが、彼らにも”アルスター襲撃”の件でのリベール王国に要求したエレボニア帝国政府の要求について説明させていただいても構いませんか、陛下?」
「ええ、お願いします。」
軽く自己紹介をしたカシウスはアリシア女王に確認を取った後、アリサ達にリベール王国がエレボニア帝国政府に要求された内容を説明した。
エレボニア帝国による”アルスター襲撃”に対するリベール王国に要求する内容は以下の通り
1、メンフィル帝国との同盟を破棄
2、エレボニア帝国軍によるリベール・エレボニアの国境――――――ハーケン門の通過を無条件許可
3、エレボニア帝国軍がロレント市を前線基地として利用する無条件許可
4、エレボニア帝国軍が要求する支援物資の無償提供
以上の条件をエレボニア帝国軍によるリベール王国征伐が開始されるまでに全て実行するのであれば、エレボニア帝国は”アルスター襲撃”に対する報復内容であるエレボニア帝国軍によるリベール王国征伐を中止する。
「――――――以上の内容がエレボニア帝国政府がダヴィル大使を通じて伝えたリベール王国に対する要求内容だ。」
「そ、そんな…………エレボニア帝国政府がリベール王国にそんな要求を…………」
「内戦の間に、エレボニア帝国はリベール王国のお陰で、2度もメンフィル帝国との戦争勃発を避ける事ができたにも関わらず、どうしてそのような恩を仇で返すことを…………」
カシウスが説明を終えるとアリサとエマはそれぞれ悲痛そうな表情を浮かべ
「…………恐らくは――――――いや、要求内容からして間違いなくメンフィル・クロスベル連合との戦争に勝利する為だと思うよ。」
「うん…………メンフィル帝国との同盟を破棄させる事もそうだけど、何よりもゼムリア大陸に唯一存在しているメンフィル帝国の大使館にして、異世界と繋がっている場所でもあるロレント市郊外にあるメンフィル帝国の大使館を占領する為にロレント市を前線基地として使うことを要求しているもの…………」
「あ…………っ!」
「――――――なるほどね。異世界にあるメンフィル帝国の”本国”からの支援さえ封じる事ができれば、普通に考えて敗戦する可能性が高いメンフィル・クロスベル連合との戦争を逆転させる事ができると判断した訳ね。」
「ああ…………間違いなくそれが狙いなのだろう。」
「だからと言って、かつての”ハーメル”のようにリベールに冤罪を押し付けた挙句そのような理不尽な要求をするとは…………っ!」
「………………………………」
重々しい様子を纏ったアンゼリカと辛そうな表情を浮かべたトワの推測を聞いて仲間達と共に血相を変えたエリオットは声を上げ、静かな表情で呟いたセリーヌの言葉にアルゼイド子爵が頷き、ユリア准佐は怒りを抑えるかのように唇を噛み締め、拳を握りしめて呟き、クローディア王太女は辛そうな表情で黙り込んでいた。
「……………………――――――アリシア女王陛下、クローディア王太女殿下、そしてカシウスさん。我々の代わりに2度もメンフィル帝国の怒りを鎮めて頂いたにも関わらず、受けた恩を仇で返すというあまりにも卑劣な行いをした愚かなオズボーン宰相――――――いえ、エレボニア帝国政府の所業…………エレボニア帝国皇家を代表して、心からのお詫びを申し上げます…………誠に申し訳ございません…………っ!」
「殿下…………」
オリヴァルト皇子はその場で頭を深く下げて謝罪し、その様子をアルゼイド子爵は辛そうな表情で見つめた。
「…………どうか頭をお上げください、殿下。殿下と同じように謝罪をされたダヴィル大使にもお伝えしたように、今回の件も”百日戦役”の時のようにエレボニア帝国政府――――――いえ、オズボーン宰相を含めた一部の暴走であり、殿下達アルノール皇家の方々を含めたエレボニア帝国自身の意志ではないと信じております。」
「え…………ダヴィル大使も謝罪をされたのですか………?」
「そういえば帝国政府の決定に対して大変不服な様子を見せながら先程の要求内容をお伝えしたと仰っていましたが、ダヴィル大使閣下も帝国政府の決定に対して不信感等を持っておられるのでしょうか?」
アリシア女王はオリヴァルト皇子に頭を上げるように伝え、アリシア女王の話を聞いたクローディア王太女は戸惑いの表情を浮かべ、サラは真剣な表情で訊ねた。
「ええ…………要求内容を伝える際、ダヴィル大使閣下は辛そうなご様子で涙を流しながら帝国政府の要求を私達に伝え…………要求内容を伝え終えた後、額を地面に擦りつける程の深い謝罪をされました…………」
「涙を流しながら帝国政府の要求内容をアリシア女王陛下達に…………」
「し、しかも額を地面に擦りつける程の謝罪をしたって事は…………」
「”土下座”、か…………」
「ハハ…………私だって正直な所、泣きたいくらいだし、父上と共にアリシア女王陛下に土下座をしてでも謝罪したいくらいだからダヴィル大使の気持ちはよくわかるよ…………」
「殿下…………」
重々しい様子を纏って答えたアリシア女王の話を聞いたガイウス、マキアス、ユーシスはそれぞれ辛そうな表情を浮かべ、疲れた表情を浮かべて呟いたオリヴァルト皇子の様子をラウラは心配そうな表情で見つめた。
「…………それで、リベール王国はエレボニア帝国政府の要求に対して、どういう対応をされるおつもりなのでしょうか?」
「それについてはクローディアやデュナン、それに王国政府、軍部の上層部を交えて話し合うつもりですが…………間違いなくエレボニア帝国政府の要求を呑むような結論には至らないでしょう。私自身、リベール国王としてエレボニア帝国政府の要求を呑む訳にはいかないと思っております。」
「はい…………”百日戦役”の件も含めて様々な面でお世話になり、またリベールとは比べ物にならない大国でありながら対等の関係として友好を結び続けてくれているメンフィル帝国との関係を自ら破棄するような道理に反する事をする訳にはいきませんし、何よりもロレントの市民達――――――国民達に他国の軍が駐留し、リベールの友好国であるメンフィル帝国との戦争の前線基地にされる事によって発生する大きな負担をかける訳にはいきませんし…………」
「――――――加えて、”百日戦役”の時と唯一違う点がある。その点を考えると多くの者達は誤解を解くための話し合いによる解決に賛同しない可能性が十分に考えられますな。」
アルゼイド子爵の質問にアリシア女王、クローディア王太女、カシウスはそれぞれ重々しい様子を纏って答え
「”百日戦役”の時と唯一違う点――――――”メンフィル帝国との同盟関係”ですね…………それも、”話し合いによる解決に賛同しない”という事はリベール王国もメンフィル・クロスベル連合と同盟を組んで、エレボニア帝国との戦争に勝利する事による解決の可能性も考えられるという事ですよね…………」
「…………”百日戦役”の時点でメンフィル帝国のみで、エレボニア帝国軍を圧倒したという実績がありますからね…………そこに加えてメンフィル帝国と共にカルバード共和国を吞み込み、大国となったクロスベル帝国まで連合を組んでいる状況ですからね。メンフィル帝国と同盟を組んでいる以上、その関係を利用してメンフィル・クロスベル連合にリベールまで加わって”百日戦役”の復讐をするような意見が出るかもしれませんね…………」
「そ、それは…………」
「「……………………」」
複雑そうな表情で推測したサラとユリア准佐の推測を聞いたクローディア王太女が不安そうな表情を浮かべている中、アリシア女王とカシウスはそれぞれ重々しい様子を纏って黙り込んでいた。
「あの…………”アルスター襲撃”の件で何度か出てきた上、エイドス様との会談の際にも出てきた”ハーメルの惨劇”とは一体どういった内容なのでしょうか…………?オリヴァルト殿下は”アルスター襲撃”の件を”第二のハーメル”と仰っていましたが…………」
「エマ、それは…………!」
その時エマが質問し、エマの質問内容に血相を変えたセリーヌが声を上げかけたその時
「そうだね…………ちょうどいい機会だから、君達にも教えるよ。”百日戦役”に隠されていた”真実”にしてエレボニアが犯した”空の女神”であられるエイドス様自身も許さない”大罪”――――――”ハーメルの惨劇”について。」
オリヴァルト皇子がアリサ達に振り向いて静かな表情で答えた後、”ハーメルの惨劇”についての説明をした。
「そ、そんな……!”百日戦役”が勃発した理由がエレボニア帝国の自作自演だったなんて……!」
「しかも戦争を起こす為に内密に雇った猟兵達に自国の村を滅ぼさせるなんて……!」
「ひ、酷すぎるよ……!」
「リベールは完全に被害者だね……」
「余りにも卑劣で愚かすぎる話です……!」
「……そうね。人間はたまに信じられない程愚かな事をするのは確かね。」
事情を聞き終えたエリオットとマキアスは信じられない表情をし、トワは悲痛そうな表情を、アンゼリカは辛そうな表情を浮かべ、怒りの表情で声を上げたエマの意見にセリーヌは静かな表情で頷き
「父上、今の話は本当なのですか!?」
「ああ……残念ながらな。」
血相を変えたラウラに尋ねられたアルゼイド子爵は重々しい様子を纏って頷き
「多分、シャロンも知っているのでしょうね…………」
「間違いなく知っているでしょうね。何せ自身が所属している組織の幹部――――――”蛇の使徒”が関わっていたのだからね。それと多分だけど”鉄血の子供達”の連中も知っていると思うわ。」
「確かにミリアム達も知っていてもおかしくありませんね…………」
複雑そうな表情で呟いたアリサの推測に頷いた後答えたサラの推測を聞いたマキアスは複雑そうな表情で同意し
「……”百日戦役”にまさかそのような”真実”が隠されていたとは……」
「……猟兵達に虐殺されたハーメルの人達はどんな気持ちだったんだろう……」
ガイウスは真剣な表情で呟き、元”猟兵”であったフィーは複雑そうな表情をした。
「エイドス様が”ハーメルの惨劇”の”償い”もしていないエレボニア帝国には最初から協力するつもりはないというお言葉も、今の話を聞けば納得だな…………」
「そうだね…………――――――待てよ?そういえばオリヴァルト殿下は”アルスター襲撃”の件を”第二のハーメル”と仰っていましたが、まさか”アルスター襲撃”の”真犯人”は…………!」
重々しい様子を纏って呟いたラウラの言葉に頷いた後ある事に気づいたアンゼリカは厳しい表情を浮かべ
「ああ…………間違いなくエレボニア帝国政府の関係者――――――オズボーン宰相も何らかの形で関係している可能性は非常に高いだろう。――――――いや、それどころか最悪の場合メンフィル・クロスベル連合との戦争を望み、アルフィンを見捨てることを決めた宰相殿の考えに反対しない父上も関わっているかもしれないね。」
「ユ、ユーゲント皇帝陛下が…………っ!?」
「さすがにそれは考え過ぎかと思われるのですが…………」
(まさかとは思うけど、父さんまで関わっていないよな…………?)
アンゼリカの推測に頷いた後厳しい表情を浮かべたオリヴァルト皇子の推測に仲間達と共に驚いたエリオットは思わず声を上げ、ユーシスは信じられない表情で指摘し、マキアスは不安そうな表情で考え込んでいた。
「し、失礼します………!」
するとその時女官長のヒルダが慌てた様子で謁見の間に入って来た。
「ヒルダさん……?」
「女官長、いかがしました?貴女がそのように取り乱すのは珍しいですね。」
ヒルダの様子にクローディア王太女は不思議そうな表情をし、アリシア女王は戸惑いの表情で尋ねた。
「……失礼しました。今しがた、グランセル城に突然のご来客がございまして。それが、陛下達だけでなくかつてのオズボーン宰相閣下の時のようにオリヴァルト殿下達にもご挨拶をしたいと仰っているメンフィル・クロスベル連合の使者の方々とエレボニア帝国の貴族連合軍の”総主宰”と名乗る人物である為、お話中、失礼かと思ったのですが陛下たちのお耳に入れようかと……」
「な――――――」
「ええっ!?」
「”アルスター襲撃”の件を知ったメンフィル・クロスベル連合が接触してくることまでは想定していたが、まさかエレボニア帝国の貴族連合軍の残党の関係者まで、メンフィル・クロスベル連合と共に接触してくるとは…………」
「…………女官長、メンフィル・クロスベル連合、そして貴族連合軍の”総主宰”と名乗っている人物の名前は何という名前なのでしょうか?」
ヒルダの話を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えて驚いている中オリヴァルト皇子は絶句し、クローディア王太女は驚きの声を上げ、カシウスは真剣な表情で呟き、アリシア女王は表情を引き締めてヒルダに訊ねた。
「…………はい。メンフィル・クロスベル連合の使者の方々はクロスベル帝国第一側妃ユーディット・ド・カイエン、メンフィル帝国大使リウイ・マーシルンの側妃の一人、シルフィエッタ・ルアシア、貴族連合軍の”総主宰”はカイエン公爵令嬢ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエンと名乗っております。」
そして謁見の間に新たな客―――ユーディット、シルフィエッタ、ミルディーヌ公女に加えてそれぞれ護衛としてユーディットはミレイユ、シルフィエッタはセオビット、そしてミルディーヌ公女は姉弟に見える蒼灰色の髪の女性と男子を連れて謁見の間に現れた――――――
後書き
次回のBGMは閃4の”それぞれの覚悟”だと思ってください♪
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