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ある晴れた日に

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47部分:妙なる調和その八


妙なる調和その八

「刺身にしてよ。どうだ?」
「蛙のお刺身って」
 奈々瀬はそれを聞いて思いきり暗い、尚且つうんざりとした顔を見せた。
「そんなの食べるの」
「というかまずいわよ、それ」
 恵美はうんざりとした感じになっている奈々瀬と違って真剣な顔で佐々に言った。
「蛙のお刺身よね」
「ああ」
「それ、虫いるわよ」
「虫!?」
「おい、それマジかよ」
 それを聞いた野茂と坂上が思わず声をあげた。
「虫までいたらよ。それこそ」
「やばいだろ。回虫とかサナダ虫とかよ」
「その話止めろよ」
 見れば野本の手には寒イボが多量に立っている。
「気持ち悪いだろうがよ」
「回虫とかサナダ虫どころじゃないわよ」
 しかしそれでも恵美は言う。
「下手をしたら目に入って失明したり脳にいったりね」
「だから言うんじゃねえよ」
 どうも野本はこうした話が大嫌いのようである。
「鳥肌立ってるじゃねえかよ」
「ああ、大丈夫だぜ」
 しかし当の佐々は至って冷静に言葉を返す。
「それはな。ちゃんと信用できるところの養殖だからな」
「そうなの」
「まあ蛙が美味いのは確かだね」
「そうなの」  
 奈々瀬はそれを聞いてもあまり信じてはいない顔だった。
「蛙が。美味しいの」
「他に鰐だっていけるんだぜ」
 佐々は今度は鰐を出してきた。
「あれだってな。鶏肉みたいな味でな」
「それもあんたのお店にあるの?」
「勿論」
 茜の問いに胸を張って答える。
「俺の店は何だってあるんだよ」
「っていうかどういうルートで仕入れてるんだ?」
 坪本が突っ込むのはそこだった。
「そもそもな」
「まあそこは気にするなよ」
「絶対まともなルートじゃないわね」
「間違いないわね」
 静華と凛の言葉のように考えているのは彼女達だけではない。要するに全員である。
「とにかく。カレーだよね」
「ああ」
「それでどうやって作るの?」
 桐生は話を元に戻してきた。
「牛肉?鶏肉?それとも豚肉?」
「シーフードカレーができればしたいけれど」
 明日夢はそれを主張する。
「健康にもいいしね」
「野菜はジャガイモと人参と玉葱だよな」
 春華は野菜を言う。
「あと何入れる?」
「ピーマンとかも入れる?大蒜とかキャベツとかズッキーニも」
 咲は少し変わった野菜を出してきた。
「パイナップルもいいし。あとは林檎なんか入れても」
「何でもかんでも入れてもいいものじゃないけれどね」
「まあそれでも」
「ここはちょっと変わったカレーにしてみる?」
「トマトも入れて」
「じゃあ全部何でもかんでも入れたらどうだ?」
 正道はこう主張してきた。
「ここはな。どうだよ」
「何でもかんでも?」
「肉だってな。何でも入れてな」
 彼は言う。
「野菜だってな。それでも案外いけるんじゃないのか?」
「まあ確かに」
「結局カレーって何を入れてもいけるしね」
 この辺りはお好み焼きや鍋と同じである。
「じゃあそうする?」
「食材を適当に入れて」
「食材なら何でもあるわよ」
 皆が言っているところに田淵先生が述べてきた。
「とりあえず皆がどんなカレー作りたいって言うかわからなかったから。色々用意しておいたわ」
「そうなんですか」
「羊とか内臓もあるから」
 結構以上に色々とある。
「何でもね。ルーも甘口もあれば辛口もね」
「それじゃあそれをどんどん入れて」
「作る?何かやたらと大きなお鍋もあるしね」
「そうしようか。さて、と」
 皆これでカレーの話を終わらせにかかった。
「じゃあカレーは寄せ鍋カレーにするとして」
「とりあえずは今やってることだよ」
 野本は話をさらに戻してきた。
「このコンテスト。俺達が賞を総ナメにするぜ」
「おめえまだ言ってるのかよ」
「悪いかよ」
 むっとした顔で春華に返す。
 
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