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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第18話

~グランセル城・謁見の間~

「め、めめめめ、女神様が現代のゼムリア大陸に降臨して滞在しているって…………!」
「”空の女神”がこのゼムリア大陸に…………」
「しかも”空の女神”どころか、その”両親”や”先祖”までいるって一体どうなっているのよ!?」
「あの…………王太女殿下の話から察すると”空の女神”は私達”人”のように”親”や”先祖”が存在するような口ぶりでしたが…………」
マキアスは混乱した様子で声を上げ、ガイウスは呆けた表情で呟き、セリーヌは疲れた表情で声を上げ、エマは困惑の表情でクローディア王太女に訊ねた。
「フフ、実は私とユリアさんもオリビエさん――――オリヴァルト殿下やミュラーさんと共に”影の国事件”に巻き込まれたのですが…………その”影の国”で後のエイドス様のご両親や、そのご両親の内の母君にとって先祖にあたる人物も巻き込まれて、その方々が自分達の時代に帰還した際にその方々が”空の女神”のご両親と先祖であることが”影の国”を管理している方の情報によって判明したのです。」
「今の話は誠なのですか、殿下?」
「ああ。ハハ…………まさかヴァイスに続いて”彼ら”まで”空の女神”と共に現代のゼムリア大陸に現れたとはね…………この調子だと、その内シルフィアさん達の生まれ変わりやリセル君もゼムリア大陸に現れるかもしれないね。」
クローディア王太女の話を聞いて驚きの表情を浮かべたアルゼイド子爵に訊ねられたオリヴァルト皇子は頷いた後懐かしそうな表情を浮かべた。

「あ…………え、えっと………その、実はリセルさんも既にヴァイスさんのように転生前の記憶もそのままで生まれ変わって現代のゼムリア大陸に現れて、ヴァイスさんの元にいます。」
「そうか…………既にリセル君も生まれ変わって現代のゼムリア大陸にいるのか…………ハハ、メンフィル・クロスベル連合との件が終われば、できればエステル君達と共に”影の国”を共に乗り越えたメンバー同士による同窓会を開きたいものだね。」
「フフ、そうですね。それとエステルさん達の話によりますとティナさんとシルフィアさんはヴァイスさん達と違って別の人物として生まれ変わってはいますが、お二人とも転生前の記憶を取り戻してかつてのように再びリウイ陛下と結ばれたそうなのですが…………その、シルフィアさんが生まれ変わった人物がオリヴァルト殿下も驚愕する人物との事なのです。」
「私が?シルフィアさんは一体どのような人物に生まれ変わったのだい?」
「それが…………結社の”蛇の使徒”の第七柱――――”鋼の聖女”アリアンロードという人物との事です。」
オリヴァルト皇子の質問にクローディア王太女は気まずそうな表情を浮かべて驚愕の事実を答えた。

「な――――――――」
「何ですって!?」
「ハアッ!?あの”鋼の聖女”がメンフィルの関係者の転生者ですって!?」
「ほとんどが殺されたか生存がわからない結社の”蛇の使徒”の中で唯一生存が判明しているその”鋼の聖女”とやらが、まさかメンフィル帝国の関係者が生まれ変わった人物だったとは…………」
「なるほど。その”鋼の聖女”の裏切りは間違いなくその件が関係しているだろうね。」
「う、うん…………あの、王太女殿下。ちなみにその”シルフィア”という方はメンフィル帝国ではどのような立場だった方なのでしょうか?」
クローディア王太女の説明を聞いたオリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、サラとセリーヌは信じられない表情で声を上げ、ラウラは真剣な表情で呟き、静かな表情で呟いたフィーの推測に頷いたトワはクローディア王太女にある事を訊ねた。

「シルフィアさんはリウイ陛下による”メンフィル王国”建国時より、近衛騎士団長としてリウイ陛下に仕え、ファーミシルス大将軍閣下やペテレーネさんのようにリウイ陛下からも絶大な信頼が寄せられている重臣の一人であり、”メンフィルの守護神”とも呼ばれたメンフィル帝国の多くの人々に慕われ、尊敬された偉大なる聖騎士との事です。」
「更にシルフィア殿はリウイ陛下の側室の一人でもあり…………後にリウイ陛下の後を継がれたシルヴァン皇帝陛下の母君でもある御方だ。」
「な――――現メンフィル皇帝であられるシルヴァン皇帝陛下の!?」
「ハハ…………とんでもない事実の連続でさすがの私も頭がパンクしそうだよ。話が色々と逸れている為”エステル”という人物の話に戻しますが、何故エステルという人物の”SS級正遊撃士”への昇格がその”空の女神”の話とどうつながるのでしょうか?」
クローディア王太女とユリア准佐の話に仲間達が再び驚いている中ユーシスは驚きの声を上げ、疲れた表情で呟いたアンゼリカは気を取り直してクローディア王太女達に訊ねた。

「フフ…………実はエイドス様にも私達”人”のようにファミリーネームがあるのですが…………エイドス様のフルネームは”エイドス・クリスティン・ブライト”で、エステルさんの”貴族としての名前”を除いたフルネームは”エステル・ブライト”と言えば、皆さんも理解できるかと。」
「女神様と同じファミリーネームの”ブライト”って事は…………!」
「ええっ!?も、もしかしてそのエステルさんって人は”空の女神”の血縁者なのですか!?」
クローディア王太女の話を聞いてすぐにある事実に気づいてエリオットと共に信じられない表情をしたアリサはクローディア王太女に訊ねた。
「はい。――――――先祖代々”ブライト”の名を継ぎ続けたカシウスさんやエステルさんが”空の女神”であられるエイドス様の子孫である事も”影の国”で判明した事実です。」
「あのカシウス卿が”空の女神”の…………」
「まさか”空の女神”に”子孫”が存在していた上、その系譜が今も続いていたなんてね…………なるほどね、だから遊撃士協会はその”エステル”って娘を”SS級”なんていう史上初のランクにしたのね。――――それにしても七耀教会にとってはとんでもないスクープじゃない。もし、教会が知れば”ブライト”の血族達を教会の神輿として利用する為に何らかの画策をするんじゃないかしら?」
「セ、セリーヌ。」
クローディア王太女の話を聞いたアルゼイド子爵が驚いている中溜息を吐いた後呟いたセリーヌの推測にアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エマは気まずそうな表情をした。

「ふふっ、それに関してはエイドス様も予め想定していたのか、既に七耀教会の”教皇”を含めた上層部クラスにはカシウスさん達――――”ブライト家”を特別扱い―――――――例えば”ブライト家”の人々を七耀教会の神輿として利用したり、七耀教会の要職に就いてもらう要請等する事は”空の女神”であるエイドス様自身が許さないと念押し――――いえ、私達の知人である七耀教会の関係者達曰く”笑顔で脅迫した”との事ですから、そのような事は起こりませんよ。」
「め、女神様が七耀教会の偉い人達を”笑顔で脅迫した”って………」
「とても女神のやる事とは思えないね。」
「ふっ、どうやら”空の女神”は中々ユニークな性格のようだね。」
「ハハ、さすがはあのエステル君の先祖だけはあるね…………」
苦笑しながら答えたクローディア王太女の話にアリサ達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワは信じられない表情で呟き、フィーはジト目で呟き、アンゼリカは静かな笑みを浮かべ、オリヴァルト皇子は苦笑していた。

「あの…………そもそも女神様達は何の為に今のゼムリア大陸に現れたんでしょうか?」
「もしかして、混迷に満ちた今のゼムリア大陸を何とかする為だろうか?」
「いえ…………エイドス様達が現代のゼムリア大陸に降臨した理由はクロスベルでの”異変”が関係しているんです。」
エリオットとガイウスの疑問に答えたクローディア王太女の話を聞いたアリサ達は血相を変えた。

「ここでもクロスベルでの”異変”の話が出てくるなんて…………」
「女神まで直々に関わるとは、一体クロスベルでどのような”異変”が起こったのでしょうか?」
アリサは不安そうな表情で呟き、ユーシスは真剣な表情でクローディア王太女達に訊ねた。そしてクローディア王太女達はクロスベルでの”異変”の真実を説明した。

「まさかあの”碧の大樹”にそのような”力”があったなんて…………」
「”因果律を操作する事でゼムリア大陸の歴史自体を改変する”…………なるほどね。確かに幾ら自身の”至宝”の仕業ではないとはいえ、それ程の大事(おおごと)になるとさすがの”空の女神”も介入せざるを得なかったのね…………」
「しかもその件にあの”D∴G教団”まで関係していた上、その黒幕(スポンサー)がIBCのトップである”クロイス家”だったとはね…………」
事情を聞き終えたエマは真剣な表情で考え込み、セリーヌとサラはそれぞれ厳しい表情を浮かべた。

「…………あの、王太女殿下。女神様は今どこにいるか、わかりませんか?」
「トワ?どうして”空の女神”の居場所を聞きたいんだい?」
トワのクローディア王太女への質問内容が気になったアンゼリカはトワに訊ね
「うん。もし、これからオリヴァルト殿下達が臨むメンフィル帝国の大使館での交渉の際に女神様が第三者―――”中立の立場”として参加してくれれば、メンフィル帝国の要求内容についても口出しできるんじゃないかなって。」
「あ…………っ!」
「”空の女神”はゼムリアの多くの人々が崇める”女神”。七耀教会―――いや、ゼムリア大陸全土に対して絶大な発言権を持っているから、幾らメンフィル帝国が異世界の国であろうとも、”空の女神”の口出しまでは無視できないでしょうね…………!」
トワの推測を聞いたエリオットとマキアスはそれぞれ明るい表情を浮かべた。

「「………………………………」」
一方クローディア王太女とユリア准佐はそれぞれ複雑そうな表情で黙り込み
「?二人とも今の話に何か気になる事でもあるのかい?」
二人の様子が気になったオリヴァルト皇子は不思議そうな表情で訊ねた。

「………………実はエイドス様達は今、リベールの国内に滞在しておられるのですが…………メンフィル帝国よりグランセルのエレボニア帝国の大使館に貴族連合軍による2度に渡る”ユミル襲撃”に対してメンフィル帝国が要求した謝罪や賠償内容である”3度目の要求内容”が届いた翌日にダヴィル大使から相談や協力の嘆願をされた際に、私とお祖母様も皆さんのようにエイドス様達に御力なってもらおうと思い、エイドス様達の元を訪れて戦争勃発寸前のエレボニア帝国とメンフィル帝国の関係を和解に導く協力をして頂けるように嘆願したのですが…………」
「エイドス様は『私は現代のゼムリア大陸の(まつりごと)に介入する意思は全くなく、またその権限もありません』という理由で陛下と殿下の嘆願を断ったのです。」
「そ、そんな!?女神様が本当にそんな事を言ったんですか!?」
「何故”空の女神”は戦争を止める協力をする意思がないのだろうか?」
「それに”現代のゼムリア大陸の(まつりごと)に介入する権限もない”という言葉も気になるわね…………意思の件も併せて、何故”空の女神”は殿下達の嘆願を断られたのでしょうか?」
クローディア王太女とユリア准佐の答えを聞いて仲間達と共に血相を変えたアリサは表情を青ざめさせて声を上げ、ガイウスとサラはそれぞれ質問をした。

「いくつか理由はありますが…………一番の理由はエイドス様達はクロスベルの”異変”を解決する為に現代のゼムリア大陸に降臨しましたが、その理由はあくまで”ゼムリア大陸自身を護る為”であって、『女神である私は至宝も関わっていない現代のゼムリア大陸の人々の争いに介入するつもりは一切ありません』との事です。」
「それは……………………」
「要するに”空の女神”にとって”今のゼムリア大陸に生きるわたし達”―――ましてや自分の子孫の故郷であるリベールに戦争を仕掛けたエレボニアの人達の事はどうでもいいんだ。」
「フィー、さすがにそれは考え過ぎだと思うぞ。」
辛そうな表情を浮かべて答えたクローディア王太女の説明を聞いたオリヴァルト皇子が複雑そうな表情をしている中、厳しい表情で呟いたフィーにラウラは指摘した。

「殿下、例え”空の女神”にそのつもりがなくても、まだ殿下自身が”空の女神”にお会いして嘆願もせず、”空の女神”の協力を諦めるべきではないかと。」
「そうだね…………クローディア姫、どうか私達に今”空の女神”達が滞在している場所を教えてもらう事と、そこに行く許可を貰えないだろうか?」
アルゼイド子爵の提案に頷いたオリヴァルト皇子はクローディア王太女にある事を頼み
「……………わかりました。現在エイドス様達が滞在していらっしゃっている場所は―――」
そしてクローディア王太女はオリヴァルト皇子にエイドス達の居場所を伝えた。

「…………了解した。ちなみに話は変わるのだが、リベールは新興の国である”クロスベル帝国”を既に”国”として認めて、国交も行っているのだろうか?」
クローディア王太女に感謝の言葉を述べたオリヴァルト皇子はクローディア王太女にある事を訊ねた。
「…………はい。オリヴァルト殿下達にとっては複雑かもしれませんが、リベールは既にクロスベル帝国を”国”として認め、国交も開始しています。また、レミフェリアも”クロスベル帝国”を国として認め、リベールのようにクロスベル帝国から来た国交を開く為の使者と今後のクロスベルとの交流についての話し合いも既に始めていると聞いています。」
「メンフィルだけじゃなく、リベールやレミフェリアも既に”クロスベル帝国”を”国”として認めて国交も行っているなんて…………」
「まあ、メンフィルというエレボニアやカルバードを遥かに超えるとんでもない大国が”クロスベル帝国”の存在を認めている上連合まで組んでいるのだから、メンフィルと同盟関係であるリベールは当然として、メンフィルと何の縁もないレミフェリアもエレボニアのようにメンフィルに喧嘩を売ってメンフィルとの緊張状態に陥る理由を作らない為にも認めざるを得なかったかもしれないね。」
オリヴァルト皇子の質問にクローディア王太女は静かな表情で答え、クローディア王太女の話を聞いたトワとアンゼリカはそれぞれ複雑そうな表情を浮かべた。

「勿論、リベールやレミフェリアが”クロスベル帝国”を国として認めた事はメンフィル帝国の存在も関係はしていますが、クロスベル帝国の皇帝の一人であるヴァイスさんが国としての正当性を主張できる”尊き血”の女性を自身の第一側妃として婚約した事も関係しています。」
「ヴァイスが?一体どんな女性を彼は側妃に婚約したんだい?」
「それが…………ヴァイスさんが第一側妃として婚約した”尊き血”であるその女性はエレボニア帝国の大貴族である”四大名門”の一角にして貴族連合軍の”主宰”であったカイエン公爵のご息女の一人―――ユーディット・ド・カイエン公爵令嬢なんです。」
「な――――――――」
「カイエン公爵の娘がクロスベル皇帝の側妃になっただって!?」
「あのユーディット嬢が…………」
クローディア王太女の話を聞いたオリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、マキアスは信じられない表情で声を上げ、アルゼイド子爵は驚きの表情を浮かべた。

「…………確かに”四大名門”―――それもオルトロス帝の末裔である”カイエン公爵家”の”尊き血”も状況によっては、皇族としての正当性を主張する事が可能ではあるが…………」
「く…………っ…………社交界では兄上と並ぶ才能を持っている事から”才媛”と評された程のあのユーディット嬢が他国―――それも新興したばかりの国で、自身にとっての祖国であるエレボニアと戦争状態に陥っている国の皇の側妃として嫁ぐという事は、”四大名門”の貴族でありながら祖国であるエレボニアを裏切る事になると理解していて、何故クロスベルの皇帝と婚約を結んだのだ…………!?」
「ハアッ!?そのユーディットってカイエン公の娘はそんなに有能なの!?」
「まさかあのカイエン公の娘がルーファスさんと同じくらい凄いなんて…………」
「というかカイエン公って娘がいたんだ。」
ラウラは複雑そうな表情で呟き、唇を噛み締めて呟いたユーシスの言葉を聞いてアリサ達と共に驚いたサラは声を上げ、ガイウスは驚きの表情で呟き、初めて知った事実にフィーは目を丸くして呟いた。

「ユーディット嬢は才能ばかりでなく、性格もとても理知的な淑女で、父親であるカイエン公やその息子のナーシェン卿と違い、ユーディット嬢とその妹であるキュア嬢は決して権力を笠に着るような人物ではなく、平民達を想う心もあり、内戦中は自らの私財をなげうってまで民達に支援物資を送っていた話も西部での活動の際に耳にしたことがある。」
「そんな方があのカイエン公のご息女なのですか……」
「とてもあのカイエン公の娘とは思えないわね。」
アルゼイド子爵の説明を聞いたエマは驚き、セリーヌは戸惑いの表情で呟いた。

「で、でもどうしてそんなに凄くてオリヴァルト殿下にも協力してくれそうな大貴族の女性がクロスベルの皇帝に…………」
「…………多分だけど、彼女は”カイエン公爵家を護る為に”ヴァイスハイト皇帝と婚約を結んだのかもしれないね。」
「へ…………それってどういう事なんですか?」
エリオットの疑問に対して静かな表情で答えたアンゼリカの推測を聞いたアリサは戸惑いの表情で訊ねた。

「君達も知っての通り、貴族連合軍の”主宰”であったカイエン公は拘束された。そして当然内戦を引き起こした責任はカイエン公個人だけでなく、その実家である”カイエン公爵家”にも追及される事になるだろう。内戦を勃発させた主犯の実家なのだから、よくて”四大名門”からただの貴族への降格…………最悪は御家断絶――――つまり、”爵位剥奪”やエレボニア帝国からの永久追放処分をエレボニア帝国政府から命じられる可能性は非常に高いだろうね。だが、他国――――それもエレボニアと戦争している国であるクロスベルの皇帝に側妃として嫁ぐ事で”カイエン公爵家がエレボニア帝国の貴族からクロスベル帝国の貴族として鞍替えすれば”話は変わってくるだろう。」
「メンフィル・クロスベル連合がエレボニア帝国との戦争に勝利すれば、恐らくカイエン公爵家は大貴族としての地位を保ち続ける事ができるどころか、側妃であるユーディット嬢が産むご子息かご息女が次代のクロスベル皇帝に即位する事でカイエン公爵家が”クロスベル皇家”になる可能性は十分に考えられるな…………」
「あ…………っ!」
「つまり、そのユーディットって人はエレボニアの貴族でい続けたら父親のせいで御先が真っ暗になった実家の未来が危ういから、あっさりエレボニアを捨ててクロスベルに寝返ったんだ。」
「その狡猾さはある意味あのカイエン公とそっくりね…………まあ、父親と違って娘の方は”勝ち組”になったようだけど。」
「彼女がカイエン公の後を継いでくれれば、エレボニアの貴族達を抑えていずれは”革新派”と協力してくれる事も期待していたんだが、まさかヴァイス達側になるとはね…………ルーファス君達に続いて、エレボニアは失うにはあまりにも惜しい人物を更に失ったようだね…………」
「殿下…………」
アンゼリカとラウラの推測を聞いたエリオットは声を上げ、フィーはジト目で呟き、セリーヌは呆れた表情で呟き、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の様子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見つめた。

「ユーディット嬢の件を考えると、メンフィル・クロスベル連合はひょっとしたらエレボニアの貴族達――――特に貴族連合軍に所属していた貴族達の調略をしているかもしれんな。」
「ちょ、”調略”って事はまさか、エレボニアの貴族達までメンフィル・クロスベル連合に寝返るって事か!?」
「カイエン公爵家程じゃないけど、貴族連合軍に所属していた貴族達はエレボニアに所属し続けていたら間違いなく処罰を受ける事は目に見えているのだから、その処罰から逃れる為にメンフィル・クロスベル連合に寝返る可能性は十分に考えられるわね…………」
重々しい様子を纏って呟いたユーシスの推測を聞いたマキアスは信じられない表情で訊ね、サラは厳しい表情で考え込み
「ハハ…………私達と違って、数多の戦争を経験したリウイ陛下やヴァイス達なら敵国を内部から崩す為のそういった謀略も当然行っているだろうね…………改めて、メンフィル・クロスベル連合を敵に回した恐ろしさを思い知ったよ。例えエレボニアの滅亡を防げても、エレボニアはあらゆる意味でボロボロになって、完全に復興するには膨大な年数を要する事になるだろうね…………」
オリヴァルト皇子はエレボニアの未来を考えて疲れた表情で肩を落とした。
「―――その時が来れば、リベールを頼ってください。私やお祖母様を含めたリベールはエレボニアの友好国として、可能な限り御力になる所存です。」
「殿下…………」」
「―――ありがとう。今回の件が終われば、間違いなくリベールにも頼る事になるだろうが…………どれだけの年数がかかっても、受けた恩を必ず倍にして返すよ。」
クローディア王太女の申し出を聞いたユリア准佐は明るい表情でクローディア王太女を見つめ、オリヴァルト皇子は感謝の言葉を述べた。その後アリシア女王が謁見の間に戻ってきて結果を知らせた。


「―――お待たせしました。先ほどメンフィル帝国の大使館に連絡を取った所、明日の朝9時からなら面会可能との事でしたので、その時間にオリヴァルト殿下達が面会する事とその場に”中立の立場”としてクローディアが立ち会う事を承諾して頂きました。そういう訳ですから、クローディア。明日貴女は私の名代としてオリヴァルト殿下達に同行してください。」
「わかりました、お祖母様。」
「重ね重ねありがとうございます。」
アリシア女王は説明をした後クローディア王太女に指示をし、指示をされたクローディア王太女は頷き、オリヴァルト皇子はアリシア女王に会釈をした。
「ただ、リウイ陛下はクロスベル帝国と共に”エレボニア帝国征伐”を行うメンフィル帝国軍側の”総大将”として既にロレントから起っているらしく、殿下達が面会する相手は”メンフィル帝国大使の代理”―――つまり、リウイ陛下ではない為、その事は予め念頭に置いてください。」
「わかりました。ちなみにそのリウイ陛下の代理を務める人物はどのような人物なのでしょうか?」
アリシア女王の話に頷いたオリヴァルト皇子はある事を訊ねた。

「”パント・リグレ”という名前の男性で、その方はメンフィル帝国の貴族の一人で、リウイ陛下同様今は当主の座をご子息に譲って隠居の身であるとの事ですが、かつてはメンフィル帝国の”宰相”としてリウイ陛下とシルヴァン陛下、二代のメンフィル皇帝を支えた”リグレ侯爵家”の前当主との事です。」
「メンフィル帝国の前宰相ですか………」
「しかも二代のメンフィル皇帝を支えたのだから、外交方面は間違いなくオズボーン宰相以上の相当なやり手なのだろうな。」
「フム…………となると、2年前のリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下の結婚式の披露宴の際に挨拶をしたクレイン・リグレ宰相閣下の父君に当たる方か。やれやれ…………軍事面で例えるならファーミシルス大将軍閣下クラスの外交官だろうから、そんな宰相殿すらも”格下”に思えるような人物と交渉するなんて考えただけでも今から気が滅入ってきたよ…………」
「オリヴァルト殿下…………」
アリシア女王の説明を聞いたエマは不安そうな表情をし、ラウラは真剣な表情で呟き、考え込んだ後疲れた表情で溜息を吐いたオリヴァルト皇子の様子をクローディア王太女は心配そうな表情で見つめた。

「それと面会の際、パント大使の希望でそちらにいる皆さん―――”Ⅶ組”の方々も同席する事になりました。」
「へ…………ぼ、僕達”Ⅶ組”が?」
「何故そのパント大使という人物はこの子達の同席を希望したのでしょうか?」
自分達まで交渉の場に同席する事をまだ見ぬパントに希望された事を知ったマキアスは戸惑い、サラは困惑の表情で訊ねた。
「パント大使の話によると、パント大使のお知り合いの方が現在大使館に滞在していて、その方が一度”Ⅶ組”の方達がどのような方達か興味があった為、その方の頼みに応じたパント大使が”Ⅶ組”の皆さんの同席を希望したとの事です。」
「メンフィル帝国の大使の代理の知り合いがオレ達に…………」
「一体どんな人なんだろう…………?」
アリシア女王の話を聞いたガイウスとエリオットはそれぞれ考え込んだ。

「なお、Ⅶ組の皆さんの同席を希望した”対価”としてリウイ陛下の”帰還指示”によってメンフィル帝国に帰国した後メンフィル帝国軍に入隊したリィン・シュバルツァーさん達の事情については無条件で教えてくれるとの事です。」
「ほ、本当ですか!?」
「事情はよくわかんないけど、リィン達の事情を無条件で教えてくれるのはラッキーだね。」
リィン達の事情を無条件で知る事ができる事に仲間達と共に血相を変えたアリサは明るい表情を浮かべ、フィーは静かな笑みを浮かべた。
「わかりました。明日のパント大使との会談に向けて、現在リベール王国に滞在していらっしゃっている”空の女神”の一族の方々とも先に会って、可能ならば協力を取り付けたいと思っておりますので、私達はこれで失礼致します。」
「何故殿下が”あの方々”の事を…………もしかしてクローディア、貴女が教えたのですか?」
オリヴァルト皇子の話を聞いてオリヴァルト皇子達がエイドス達の存在を知っている事に驚いたアリシア女王だったが、すぐに心当たりに気づいてクローディア王太女に訊ねた。

「はい。エイドス様の頑ななご様子からして、正直協力を取り付ける事は恐らく不可能とは思いますが、それでもオリヴァルト殿下達は私達と違い、まだエイドス様達とお会いして話もしていないのですから、せめて当事者であるオリヴァルト殿下達もエイドス様と実際にお会いするべきかと思いまして。」
「確かにそうですね…………――――エイドス様達との会談はオリヴァルト殿下達にとっても貴重な経験になると思います。ですが、殿下達の考え方とエイドス様達の考え方は全く異なりますので、どうかそれだけは念頭に置いてください。」
「…………わかりました。ゼムリア大陸の為に自ら現代のゼムリア大陸に降臨なされたエイドス様達のご気分を害さない為にも今のお言葉、肝に銘じておきます。」
こうして…………グランセル城を後にしたアリサ達はリベール王国のボース地方のヴァレリア湖にある宿――――”川蝉亭”に滞在している”空の女神”――――エイドスとその両親や先祖と会う為に、”カレイジャス”に乗り込んだ後”カレイジャス”でボース市の空港へと向かい始めた――――

 
 

 
後書き
今回のBGMはクローゼ達がエイドス達のことについて話している間はイースオリジンの”Genesis Beyond The Biginning”、クロスベルの話の時は魔導攻殻の”動乱 ~旗国を大空に翳して~”、アリシア女王が戻ってきて今後のことについて話すときのBGMは空シリーズの”虚ろなる光の封土”だと思ってください♪そして次回の話はすでに察していると思いますが、ご存じ自称”ただの新妻”とその一族、後そのオマケ二名()が登場しますww 
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