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女神と星座の導きによりて

作者:草ナギ
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星37 洗脳

「真名さん?」

 名前を呼ばれ、階段下に居る青銅聖闘士、ペガサスの星矢とアンドロメダの瞬に目を向ける。
 来てくれて嬉しい様な、来てほしく無かった様な複雑な心境をしていた。
 真名が何故此処に?と思いながらも階段を上がる二人。
 あと数mという所で立ち止まる。

 「よく此処まで来ましたね。星矢、瞬」

 「あ、ああ。此処には居ないけど、氷河達のおかげだぜ!勿論、姉貴のおかげもあるけどな!」

 「そうですか……」

 その言葉を聞くと顔をふかせ、黙ってしまう真名。
 何か様子がおかしいと感じ始める星矢と瞬。
 
 「星矢、瞬。急いで私の横を走り抜けなさい」

 「「え?」」

 一瞬何を言っているのか分からなかった二人。
 横を走り抜けろ?

 「真名さん、此処は魚座の黄金聖闘士アフロディーテが守護している宮ですよね?彼が居るのであれば僕は戦わなければ「良いから!急ぎなさい!!」

 「「!?」」

 瞬の言葉を真名は遮り叫ぶ。
 星矢と瞬は見た。
 真名から微かに黄金のオーラが身体から出ている事に。

 「あ、姉貴?」

 「真名さん……貴女は……」

 「貴方達の今持てる一番早い速度で走り抜けなさい!何度も言わせるのではありません!!」

 悲鳴に似た叫びに身体が震える二人、とにかく言われた通りに走り抜けようとするが

 「え?」

 「は?」

 二人の身体の中心を貫かれた感覚が襲った。
 そう、”黄金の輝き”によって。

 「「う、うああああああ!!」」

 後ろへ吹き飛ばされる星矢と瞬。
 けれど、その二人の身体を受け止める者達が居た。

 「大丈夫か?星矢」

 「瞬、しっかりしろ」

 聞き覚えのある声が受け止めてくれた者達から聞こえ、慌てて振り向く。

 「紫龍!?生きていたんだな!良かった!」

 「氷河!無事だったんだね!」

 そう、紫龍と氷河が駆け付けて来てくれたのである。
 
 「駆け付けて来たのは俺達だけではないがな」

 「え?」

 その言葉に後ろを振り向くと、階段の下から黄金の輝きを放つ者達が現れる。

 「星矢、無事か」

 「アイオリア!」

 「真名、一体どうしたというのだ?」

 「ミロ?」
 
 「教皇、真名に完成したあの技を使ったのか……」

 「シュラ」

 「氷河、仲間たちを私達より後ろに下がらせろ。彼女の相手はまだ、お前達では無理だ」

 「カミュ……」

 四人はそう言われ、とりあえず黄金聖闘士達の後ろへ下がる。
 さっきの黄金色の攻撃といい、一体真名に何があるというのか……?

 「シュラ、カミュ。無事で良かったです」

 笑顔でそう言ってきた真名。
 だが、そのいつもの穏やかに輝いていた瞳は濁っていた。
 そんな瞳を見て顔を歪ませたが、カミュとシュラは返事を返す。 

 「ああ、貴女のおかげだ。真名」

 「お前には助けられてしまったな……」

 カミュとシュラの言葉に星矢と瞬は紫龍と氷河を見つめて

 「どういう事なんだ?」

 「まずは俺から説明しよう。俺は老師から封印する様に言われていた技、亢龍覇を使い、シュラと共に消えるはずだった」

 「な!?」

 「紫龍!?」

 「聞け、俺はこの通り無事だ。まだ続きがある。そこで天に昇っている途中に黄金の輝きに包まれた。それは黄金聖衣」

 黄金聖衣、そう聞いた星矢と瞬は驚きを隠せない。

 「な、なんだって!?」

 「ああ、正直俺も驚いた。どうやらシュラが俺を生かそうと自身の黄金聖衣を渡そうとしたらしいが、他の黄金聖衣が俺に纏いつき、守ってくれたらしい」

 「そ、そんな事が……」

 「そして、黄金聖衣を纏っていたおかげで、俺もシュラも少しの間気絶していただけに止まったという訳だ」

 そう聞いた二人は唖然としていたが、氷河が次の説明をしてきた。

 「俺も正直死んだと思っていた。だが、下から来たミロ達に助けてもらったんだ」

 「ミロ達に?」

 「宝瓶宮の居住部屋に真名さんの青薔薇があったそうなんだ。それを使い、まずは俺よりも重体だったカミュ、次に俺と、治療してくれたのだ」

 「そうだったのか……」

 「でも、真名さんの青薔薇で治療って先生の件で知ってはいたけれど、改めて凄いって実感するね」

 「ああ、そしてその後に聞いた事に俺と紫龍は驚愕した」

 「「え?」」

 「よく聞いてくれ、二人共。真名さんは……」

 氷河が何か言おうとしたその時、自分達が居る側の出入り口から、凄い速さで黄金の輝きが入ってくる。
 その輝きは真名の隣に降り立ち、こちらを見据えている。

 「あれは……」

 「魚座の黄金聖衣?」

 星矢と瞬は「まさか……」とまたもや驚愕した。
 
 「そうだ、もう分かっただろう?」

 魚座の黄金聖衣は一度強く輝くと真名の身体に纏い出す。
 
 「そう、真名さんは……」

 「”元”聖闘士は聖闘士でも」

 そして、”それ”は姿を現した。

 「「十二宮最後の宮、双魚宮を守護する魚座の黄金聖闘士!」」

 瞳は濁り、無表情で星矢達を見つめる魚座の黄金聖衣を纏う真名の姿であった。
 
 「な、何言ってんだ。二人共」

 「魚座の黄金聖闘士はアフロディーテではないの!?」

 黄金聖衣を纏った真名を見ても未だに信じられないでいる星矢と瞬。
 正直、紫龍も氷河の二人も半信半疑ではあったが、今のこの状況でやっと分かったのである。 

 「ああ、今の正式な魚座の黄金聖闘士はアフロディーテだ。だが、真名は女性だ。普通ならば女の聖闘士は女であることを捨て、仮面を付けて聖闘士となる。そのハズなのに、何故黄金聖衣を纏える?」

 振り返りはせず、真名を警戒しているカミュが会話に参加してきた。
 その言葉にシュラが答える。

 「真名は訳アリで仮面をしていないだけで、聖闘士を辞めた訳ではない。本人は”元”と付けているみたいだが、ある意味言葉の綾みたいなものだ。アフロディーテに黄金聖衣の継承が移ったとしても、どうやら魚座の黄金聖衣は仮面を付けていなくとも未だに真名を聖闘士として認めている様だな」

 「それはそうだ」

 シュラの言葉に同意する様に何処からか声がした。
 
 「教皇から認められ、黄金聖衣からも認められたのは本来は姉さんだからな」

 それはどうやら真名の背後から聞こえた声であった様である。
 柱から姿を現したのは……

 「アフロディーテ!」

 そう、真名の背後の柱から姿を現したのはアフロディーテであった。
 
 「私も、姉さんが纏うのであれば問題はない。それに……」

 アフロディーテは真名に近付き、頬を撫でる。
 それを何も感じていないかの様に、無表情のままで青銅四人を守るかの様に立つ黄金四人を見つめていた。
 
 「今の姉さんは教皇のいう事ならば何でも実行する。抗っている様だけれどね」

 その言葉を聞いた星矢と瞬は察する。
 先ほど「走り抜けろ」と言ったのは、自分達の行く道を邪魔しようとしている自分に抗い、先の道に行かせようとしたのだ。
 どうやら抗いきれなかった様ではあるが……。

 「それはどういう事だ!真名に何をした!」

 アイオリアが怒りを露にしてアフロディーテに叫ぶ。

 「姉さんは……幻朧魔皇拳を受けている。昔にも受けているから効果は薄いようだが、より完成された幻朧魔皇拳を受けたのだ。その洗脳はそう簡単には解けない」

 「な、何!?」

 「教皇にのみ許された魔拳……!」

 アフロディーテの言葉を聞いて驚く黄金聖闘士達。
だが、シュラだけが分かっていたかの様にため息をつく。

 「……やはり、その技を使ったのか」

 「シュラ?分かっていたのか?」

 カミュがシュラに問いかける。

 「恐らく真名の事だ。どんな事をしようとも、紫龍達の信じるアテナを傷つけるとは思えん。ならば、効果は薄くとも幻朧魔皇拳を使われるであろうと予想しただけの事」

 「確かに……真名らしいと言えば、らしいのだがな」

 シュラの言葉にミロが同意しながら苦笑する。
 
 「だが、悠長な事を言ってはいられん。真名が抗っている今はまだ大人しい方だが、もし真名が俺達の攻撃を受けた時、その魔拳は本領を発揮する」

 青銅の四人はその言葉を聞いて嫌な予感がよぎった。

 「い、一体どうなるんだ……?」

 しばらく無言が続き、目線だけ振り返るシュラ。

 「魔拳に抗っていた良心は無くなり、殺戮機械と化す」

 「そ、そんな!!」

 「なんとかならないのか!?」

 「一応方法はある……可能性は低いがな」

 その言葉を聞き、真剣に聞き入る四人。

 「方法は二つだ」

 「それは……?」

 シュラは一度、目を閉じて直に開くと星矢達を見つめ

 「一つ、目の前で死人を出す事。そして、もう一つが真名にしか該当しない方法……」

 「勿体付けないで早く言ってくれよ!」

 星矢が急かしてくるのを見て、もう一度ため息を吐き、意を決して言い放つ。

 「……精神力のみで魔拳の威力に勝つ事だ」

 それが一番低い可能性だった……。
 
 

 
後書き
はい!ここまでなんとか書けました!
星矢達に正体?がバレましたね!
立ちはだかるのは黄金聖闘士の真名!
しかも洗脳されているというね!
次回は戦闘になるんでしょうか……?(ガクブル) 
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