ある晴れた日に
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4部分:序曲その四
序曲その四
「よく駅前で踊ってないか?ブレイクダンスとかよ」
「ああ、知ってたか」
「その通りさ」
三人は陽気に笑って正道の言葉に答えた。
「よく知ってるな」
「そういうの好きなんだよ」
「そうか」
「で、高校でもダンス部に入るつもりさ」
「宜しくな」
外見は柄の悪いものであるが人柄は悪くはないらしい。気さくに正道達に笑って述べてくる。
「で、俺の名前はだ」
最初に名乗ってきたのは色黒の男だった。
「野本和馬っていうんだ」
「野本か」
「野本でも和馬でもいいぜ」
気さくに正道に返す。
「どっちでもな」
「じゃあ野本でいいな」
「ああ」
自然と呼び名が決まった。
「それでいいぜ。あとこの連中は」
「坪本巧馬」
「佐々将斗」
金髪と髭もまたそれぞれ名乗ってきた。
「野本とはずっと同じチーム組んでるんだよ」
「中学は違うんだけれどな」
「何だ、高校は違うのかよ」
正道は三人の言葉を聞いて意外といった顔を見せて応えた。
「そうは見えないけれどな」
「まあ付き合いは学校にいる時より深いしな」
「ああ」
三人は笑顔でそれぞれの顔を見合って言い合う。
「だからさ、そう見えるんだよ」
「俺達の絆は結構深いぜ」
「実はな」
ここで野本は笑いながら言う。
「このクラスには俺と同じクラスの奴がいるぜ」
「誰?それって」
「こいつだよ」
後ろを親指で指し示して桐生に応える。見ればその後ろには太った眼鏡の七三分けの背の大きい少年が席に座っていた。
「竹山陽っていうんだよ」
「ああ、野本君」
その竹山が席を立って彼の言葉に応えてきた。
「僕に何か用?」
「ちげーーーよ」
しかし野本は少し悪態をついた様子でその竹山に応えた。
「おめえのこと紹介してやってんだよ、ここの連中にな」
「そうなんだ」
「所謂オタクってやつさ」
野本は自分の隣にやって来たその竹山を皆にこう紹介した。
「趣味は読書に音楽鑑賞にパソコン・・・・・・あと何だった」
「テレビゲームだよ」
ぼそぼそとした口調で彼に答える竹山だった。
「それもしてるよ」
「そうそう。とにかくオタクでよ」
見れば実に好対象な二人だった。少なくとも彼と竹山では本当に同じ中学だったのかと不思議に思える程である。そこまで違っていた。
「それこそ小学校の時からな。こんなんだったんだよ」
「まあそうだね」
「そうだねじゃねえよ」
呆れた顔で竹山に言葉を返す。
「全くよ。いつもいつもそうやって大人しいから太るんだよ」
「別にいいじゃないか」
しかし竹山はこう言うのだった。
「人の趣味には立ち寄らないでもらいたいな」
「ああ、それはどうでもいいんだよ」
「じゃあ何で言うんだよ」
「御前の特徴つったらそれじゃねえか」
だからだというのであった。
「オタクっていうのがよ」
「そういう野本君はダンスオタクにならないかい?」
「俺もオタクかよ」
「そうだよ、オタクは一つじゃないんだよ」
今回はかなり説得力のある言葉だった。今まで押していた野本が逆に押されてきているのが正道達の目からもよくわかった。
「だから僕も君もオタクなんだよ」
「こんな奴なんだよ」
言い負かされた彼は竹山を指差しながら憮然とした顔で正道達に顔を向けて述べる。
「おかげで俺はずっといらいらさせられてるんだよ」
「その割には仲がいいね」
「親戚同士でもあるんだよ」
こう桐生に返した。
「母方のばあちゃんが同じでよ。それでガキの頃からずっと知り合いなんだよ」
「何だよ、御前等親戚だったのかよ」
これには正道だけでなく皆驚きだった。
「嘘だろ、それって」
「だからよ、こいつはデブなんだよ」
野本はそこを強調する。
「それに引き換え俺はこのイケメンだからな」
「イケメンっていうかチンピラにしか見えねえぞ」
「そうだよな」
今の野本の言葉に突っ込みを入れたのは野茂と坂上であった。
「その坊主止めた方がいいぞ」
「余計に柄悪く見えるぜ」
「これは俺のポリシーなんだよ」
色々言われたのが気に障ったらしくムキになった顔になっている。
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