ある晴れた日に
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31部分:噂はそよ風の様にその八
噂はそよ風の様にその八
「任せて。それじゃあね」
「御願いするわね。それでね」
「それで?」
「それとはまた別の話なのだけれど」
千佳はここで話を変えてきた。
「動物達の餌ってどうなってるの?今」
「鳥には稗で兎とかにはおからだけれど」
「そんな感じなのね」
「ええ、そうだけれど。それじゃあまずいかしら」
「いえ、別に」
少し考える目で言葉を返す千佳だった。
「それでいいわ。おからだと安いし栄養もあるしね」
「他には八百屋さんからもらった野菜の葉とか切れ端もね」
これもやっているというのだ。
「この学校鶏と兎が多いから」
「ええ。そっちも宜しくね」
「わかってるわ。じゃあ桐生君」
「うん」
桐生は明日夢の言葉に静かに頷いてから彼女に言ってきた。
「今日そっちに行くね」
「御願いね」
「行くって少年の家の店にか?」
春華はこのことを桐生に対して問う。
「あんた等何時の間にできてたんだよ」
「できてたっていうかそんなことないけれど」
「春華、何か誤解してない?」
「誤解も何も少年のとこに行くんだろ」
「うん」
「だったらそうじゃねえか」
春華はやはりここでも彼等の関係を疑っている。
「あんた等何時の間に」
「野菜の切れ端をプレゼントするのがそういう関係になるの?」
明日夢は怪訝な顔で春華に問い返した。
「プレゼントっていうか兎の餌を渡すんだけれど」
「それをカモフラージュにってやつじゃねえのか?」
「だからそういうのじゃないって」
あくまでそれは否定する明日夢だった。
「何でそうなるのよ」
「で、何処まで行ったんだ?」
春華はさらにワルノリしてきた。
「最後までいったのかよ。まあ十五になりゃそれもな」
「春華、ちょっと変な想像し過ぎよ」
ここで未晴が春華を咎めてきた。
「少年がそういう娘に見えるの?桐生君も」
「人間あっちに関してはわからねえぜ」
未晴に言われてもまだ言う春華だった。
「だからよ。違うか?」
「いい加減にしなさい。そんなことはないって」
「確証あるのか」
「ないわ」
それは否定する未晴だった。
「それはね」
「じゃあ結局わからねえってことじゃねえか」
「けれど。一つだけ言えるわ」
未晴ははっきりとした顔で言ってきた。
「この二人嘘ついてないわよ」
「むっ」
「これはわかるでしょ。少年も桐生君も嘘はついてないわ」
「それは確かに」
春華もこう言われると納得した。
「そうだけれどよ」
「少年って素直だしね」
凛は笑って春華に言うと共に明日夢の顔を見てきた。
「桐生君も真面目だしね」
「そうよ。だから嘘はついてないってわかるわ」
「だよな。悪い、少年、桐生」
春華は二人に対して謝って頭を下げてきた。
「気悪くしたよな、すまん」
「別にいいわよ。それはね」
「僕も。気にしてないから」
「そうか。それでも済まなかったな」
「いいっていいって。けれど私って素直なのかしら」
明日夢はそちらの方が気になるようだった。
「自分では自覚ないけれど」
「素直よね」
「うん」
凛の言葉に茜が頷く。
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