ある晴れた日に
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26部分:噂はそよ風の様にその三
噂はそよ風の様にその三
「如何にも女の子って感じじゃない」
「確かにそうだけれどね」
「咲は大好きよ」
にこりと笑っての言葉だ。
「パパもお兄ちゃんも慶彦君も皆褒めてくれるしね」
「慶彦君ねえ」
「何かあるの?」
「いや、ちょっと」
「私も」
ここで微妙な顔になる静華と凛だった。
「その名前にはあまりいい思い出がないのよ」
「阪神ファンととしてはね」
「そう、包容力のありそうないい名前じゃない」
咲にしてみればそうなのだった。
「咲この名前大好きなんだけれど」
「何か鯉好きみたいな言葉ね」
「そうね」
それを聞いた明日夢と茜が言う。
「何かどうにも」
「しかも色は真っ赤で」
「しかし。まあとにかく」
また恵美が言ってきた。
「ピンクハウスもいいけれどたまには大人っぽい服もいいわよ」
「そうなの」
「そうよ。ラフなのもね」
「それは恵美がスタイルいいからでしょ」
横から明日夢が彼女を見上げて言ってきた。
「背は高いしプロポーションいいし」
「そうそう」
茜も明日夢の言葉にうんうん、と頷きながら恵美を見上げている。
「まるでモデルさんじゃない」
「それだとどんな格好でも似合うわよ」
「素材が一番」
これが二人の結論だった。
「結局のところはね」
「素材さえよければ何でも似合うわよ」
「素材ね」
奈々瀬が二人の話を聞いてからちらりと今まで一言も話していない未晴に目をやった。彼女はいつものように静かに微笑んでいるだけだ。
「こっちで一番素材がいいのは」
「未晴じゃないの?」
凛が言った。
「やっぱり」
「私?」
「そう、あんた」
「確かにね。目立たないけれどね」
静華はその大きな胸を少し揺らして未晴に目をやった。
「顔もいいしスタイルもね」
「こいつこれでかなりいけてんだよ」
春華も言う。そう言う彼女にしろ凛にしろ全体のスタイルはいい。
「体育の時間つってもこの学校はなあ」
「ジャージだし」
半ズボンではないのだ。
「それがちょっと以上に残念ね」
「まっ、ブルマーとか死んでも嫌だけれどな」
春華は如何にも嫌そうな顔で今の台詞を述べたのだった。
「あんなの穿いたらそれこそ変態に盗撮してくれって言ってるようなもんだぜ」
「そうそう」
凛が春華のその言葉に頷く。
「陸上でも最近色々とあるのに」
「そういえば凛って練習の時はジャージ?」
「ええ、そうよ」
明日夢の問いに対して答える。
「赤とか黒が好きね」
「そうなの」
「それで競技の時は半ズボン」
基本であった。
「レオタードとかブルマーは着たことないわ」
「それがいいかもね」
「それでもねえ」
しかしここで凛は急に困ったような、嫌そうな顔になるのだった。
「うちの学校のジャージはね。ちょっとね」
「嫌とか?」
「夏暑そうじゃない」
彼女が言うのはこのことだった。
「だからね。それがちょっと以上にね」
「嫌なのね」
「はっきり言ってその通り」
本当にはっきりと言い切ったのだった。
「メイクだって落ちちゃうし、汗かいたらそれこそ」
「んっ!?けれど」
茜がここで凛のその顔を見て言った。
「凛ってメイク薄い方よね」
「あっ、確かに」
奈々瀬が彼女の言葉に頷く。
「そういえばどうよね」
「だから。陸上してるから」
その凛の言葉である。
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