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実の両親

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第三章

「御前の本当の父親はならず者だった」
「ならず者っていうと」
「働かず酒と博打、女にばかりうつつを抜かすな」
「そうした人だったんだね」
「そうだ、わし等とは面識はないが」
 それでもとだ、父は彦太郎に話した。
「お世辞にもまともな者とは言えなかった」
「そうだね、そんな人はね」
「それが御前の実父だった、福岡にいたそうだが」
「福岡でそんな暮らしをしていたんだ」
「そう聞いている」
「私達も会ったことはないの」 
 母も彦太郎に話した、三人で実家のテーブルに座りそのうえで話している、彦太郎は背広だが二人は和服でありそれがよく似合っている。
「一度もね」
「じゃあ聞くだけだね」
「そうなの、けれどね」
「本当の話なんだね」
「そう聞いてるわ」
「そしてお前の実の母親だが」
 父は今度はその親のことも話した。
「お前の実の父の交際相手の一人でだ」
「僕の実の父親がだね」
「働かせていたのだ、風俗だったという」
 その就職先はというのだ。
「それも非合法のな」
「非合法って」
「何でも覚醒剤まで使って引き留めていたという」
「僕の実の母親に覚醒剤を教えて」
「そうしてだ」
「随分酷い父親だったんだね」
「そうだったらしい、自分自身も覚醒剤を売って使ってな」
 そうしてというのだ。
「中毒にもなっていて金も得ていた」
「本当に酷い人だったんだね」
「そうだった、そしてお前の実の父親は覚醒剤の症状が進行して幻覚を見てだ」
「僕の実の母親をだったんだ」
「包丁を出して殺したらしい、その時お前も一緒だった」
「えっ、僕もだったんだ」
 彦太郎もその話には驚いた。
「そうだったんだ」
「そうだ、その時お前の実の母親はお前を何とか庇ってな」
「包丁で刺されてだね」
「死んだ」
「そうだったんだ」
「そうだった、そしてお前の実の父親は殺人と麻薬取締法違反等でだ」
「逮捕されたね」
 このことは言うまでもなかった。
「そうなったんだね」
「刑務所の中で死んだ」
「そうだったんだ」
「刑務所に入って一年程だったという、お前は孤児になったが」
「そこでかな」
「そうだ、わし等が引き取った」
 そうしたというのだ。
「養子としてな」
「そんな経緯だったんだ」
「そうだ、お前の両親はもういない」
「実のお父さんもお母さんも」
「そうなのだ」
「もうね」
 母がまた我が子に言ってきた。
「これまで話した通りにね」
「二人共死んでいて」
「お墓はあるわ」
「そうなんだね」
「お二人共ね」
「福岡にある」
 父が彦太郎に二人の墓の場所を話した。
「そこにな」
「福岡だね」
「そうだ、お二人のそれぞれのお墓の住所はもうわかっている」
 細かいこともというのだ。
「どの家のものかもな」
「全部わかっているんだ」
「実は私達は貴方を引き取った時にお参りしているの」 
 母は彦太郎にそのことを話した。 
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