ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第116話:RUIN STAGE Ⅲ
エックスとゼロは迫り来る小型メカニロイドを蹴散らしながら、リフトの足場を飛び移りながら移動している。
リフトは主にゼロが使っており、エックスはファルコンアーマーに換装してフリームーブで移動している。
「何なんだこれは…」
このステージに入った途端に頭痛に似たような物が襲い掛かり、ゼロは苛立ちが込み上げる。
何とかリフトから跳躍し、床に着地すると脳裏に映像が浮かんだ。
まるで走馬灯のようだ。
脳裏を流れていく何かの映像に時折ノイズが混ざる。
紅と金色が見えた…あれは昔の自分だ。
今のアーマーになる前のアーマーが見える。
無造作に伸ばされた両手が真っ赤に染まり、疑似血液の雫を落とす。
狂気に染まった青いアイカメラが見ているのは床に千切れたレプリロイドの腕と、内部骨格が剥き出しにされた残骸。
次の瞬間、映像が切り替わる。
次に見えたのは蒼いアーマーを纏った少年…見覚えのある少年、あれはエックス…いや、違う…よく似てはいるが違う。
エックスに似た少年が、黒いアーマーを纏い、どこか顔立ちがゼロに似ている少年と戦っているのが見えた。
「(俺は…あの黒いレプリロイドを知っている…)」
何時からかは分からない。
しかし何処かで、蒼いアーマーを纏う少年にしても何処かで見覚えがあるような気がした。
「ゼロ、どうしたんだ?」
「っ!!」
不思議そうに声をかけたエックスの声にゼロはハッとなって振り返る。
「どうしたんだ?疲れているなら少し休憩するか?」
「あ、いや…何か妙な映像がな…エックス、お前は何ともないのか?」
「映像?いや、俺は何ともないけど…」
疑問符を浮かべるエックスにゼロも腕を組んで唸るしかない。
『ゼロ…』
「Dr.ライト…」
「ライト博士!!」
突如現れたライト博士のカプセルに目を見開くエックスとゼロ。
『見たようだね、過去の記憶を…』
「過去の記憶…?」
『うむ、どうやらこの空間は様々な記憶が集まる場所のようじゃ…それは…わしが生きていた100年前の記憶も例外ではない。』
「あれは…100年前の記憶の映像だったのか……あの蒼いレプリロイドと黒いレプリロイドは一体……」
『あの子達は、レプリロイドではなくロボットじゃ…蒼いロボットがエックスの元となり兄とも呼べるロックマン…そして黒いロボット…フォルテは君の兄とも呼べる存在じゃ』
「兄…?」
「ゼロにも兄弟がいたんですね…」
『そうじゃよエックス。ワイリーは多くのロボットを造ってな。ゼロはエックス同様、最後のナンバーズ…つまり末弟であり、君の兄のフォルテは君の開発中で生まれた新しい技術を使った実験機じゃよ、構想自体は君の方が先だったようじゃがな』
「………」
何だか実感が湧かないが、ライト博士が嘘を言うような人物ではないと分かっているため、ゼロは何も言えない。
「ライト博士、ゼロの製作者は…」
『うむ、アルバート・W・ワイリー…かつてのわしの友であり、ライバルだった男じゃよ。同時に世界を震撼させた悪の科学者であった。』
「世界を震撼させた悪の科学者…そいつが俺を造ったのか…」
『わしが君の正体に確信を持てたのは最近だがね。』
「……なら、俺は…」
俯くゼロにエックスとライト博士が口を開いた。
『ゼロよ、生みの親が誰であろうと君は君じゃ。親のしたことを君が悩む必要はない。ワイリーがしてきたことは全て君が造られる前のこと。もう既にワイリーは死んでしまい、ワイリーの死後から100年過ぎているのじゃからな』
「そうだよゼロ。誰に造られたってゼロはゼロだよ。俺にとって大切な親友、ルインにとっては頼りになる兄さん。みんなの大切な仲間さ…きっとみんなもそう言うと思うよ」
『その通りじゃ。君が繋いできた絆を信じなさい』
「…ありがとう…エックス……人間や泣く機能を備えたレプリロイドならこういう時、涙を流すんだろうな」
ゼロには泣く機能がないために、こういう時に感情を上手く表現出来ない。
「さあ、行こうゼロ。ルインの所に少しでも進まないと」
「ああ」
2人はライト博士に会釈すると、奥に向かっていく。
『ワイリーよ…ゼロをそろそろ解放してやったらどうなんじゃ…?』
誰もいない場所でライト博士の呟きが響いた。
そしてエックスとゼロがステージの奥に向かうと行き止まりとなる。
『良く来た。さあ、オメガ…お前の真の力を見せてやれ』
「グオオオオッ!!」
「先程と何も変わってないじゃないか。確かにエネルギー反応は増しているが、それだけでは今の俺達には勝てんぞ」
ゼロの言う通り、目の前に現れたオメガはエネルギー反応こそ増大しているが、見た目は全く変化していない。
オメガの攻撃手段は把握しているのでどれだけ強化しても簡単に負ける気はしない。
『慌てるなゼロ…これから見せてやろう。オメガの真骨頂を!!』
「グオオオオオオオオッ!!!!」
オメガが蒼と紅の輝きを放ち、部屋全体を照らす。
咄嗟にエックスとゼロは目を庇い、光が晴れると驚愕に目を見開いた。
愕然とするエックスとゼロの眼前に聳え立ったのは、この空間に入る前に見たファイナルシグマWすら凌駕する常識外れの体躯を持つ巨人の姿であった。
右肩はゼロを、左肩はエックスを彷彿とさせる頭部のような形状をしており、武装も右腕がセイバーで左腕がバスターと言う、正にゼロとエックスの特徴を併せ持った姿である。
「………今までデカブツと戦うことはあったが、こいつは別格だな」
「くっ!!」
驚愕のあまりに呆然となるゼロとあまりの威圧感に冷や汗が止まらないエックス。
「エクシードバスター」
オメガがエックス達に向けて左腕のバスターから大型ショットを放った。
「っ!!」
悪寒を感じたエックスはガイアアーマーを纏い、ゼロもシールドを展開したが…。
「何!?」
2人の防御は意味を為さずにエックスとゼロは直撃は免れたが、余波だけで吹き飛ばされてしまう。
「余波だけでこれ程の威力が!?」
ファルコンアーマーに換装し、ゼロの腕を掴むと飛翔して体勢を整える。
「まさかここまでの化け物とはな…デカブツになったシグマが可愛く見えてきやがる……」
「ゼクシードセイバー」
今度は右腕のセイバーを振るうオメガ。
エックスは懸命にオメガの斬撃をかわす。
「くそ、スピアチャージショット!!」
大振りの一撃をかわしてオメガにスピアチャージショットを繰り出すエックス。
しかし、スピアチャージショットの貫通力を以てしても今のオメガには大したダメージにはならない。
いや、スピアチャージショットが細過ぎてオメガの巨体には効果が薄いのだろう。
「すまないゼロ。ファルコンアーマーではオメガに有効打を打てそうにない」
ファルコンアーマーからアルティメットアーマーに換装してオメガを見据える。
一応アルティメットアーマーにも飛行能力はあるが、空戦能力に特化したファルコンアーマーには及ばないために、エックスはゼロを庇いながらの戦闘は出来ない。
「大丈夫だ。自分の身くらい自分で守る」
エックスとゼロはバスターとセイバーを構えるオメガを見上げる。
あの巨体にはプラズマチャージショットさえ有効打にはならないだろう。
まともに通用しそうな攻撃は弱点となる特殊武器のチャージ攻撃やギガアタックやゼロの滅閃光くらいだろうが、ガイアアーマーのギガアタックであるガイアショットブレイカーはガイアアーマーが機動力に難があるため、接近が難しいために除外。
かと言ってファルコンアーマーのギガアタックであるスピアショットウェーブは拡散技であるためにオメガの急所を的確に射抜くのは難しい。
だからこそ、小回りの利く戦い方が出来てギガアタックの連発が可能であるアルティメットアーマーが選ばれた。
「まずは奴の弱点を見つけなければ…」
オメガの弱点となりそうな武器はトライサンダーかあの武器くらいだろう。
「トライサンダー!!」
パワーアップ前のオメガの弱点であったトライサンダーのチャージ攻撃を繰り出すが、今度は全く揺らがない。
「あまり効果はないようだな…!!」
ゼロもダブルチャージショットを放ってオメガの攻撃が通用する箇所を探す。
「スパイクロープ!!」
ならば今度はクラーケン以上にウィルスと縁のあるレプリロイドのローズレッドの特殊武器のチャージ攻撃を繰り出す。
巨大な茨の塊が凄まじい勢いでオメガに炸裂し、オメガの巨体が僅かに揺らいだ。
「少しは効いたか?」
「エックス、来るぞ!!」
「トリプルレーザー」
右肩、左肩、本体の目からレーザーを発射する。
エックスはホバリング、ゼロは空円舞で回避するとエックスとゼロは同時にバスターを構えた。
「スパイクロープ!!」
「ダブルチャージショット!!」
レーザーを放った直後の硬直を狙って本体の頭部に直撃させた。
「グウウ…」
直撃を受けたオメガの本体が呻いたのをエックスとゼロは見逃さない。
「そこか!!」
「エックス、一気に決めるぞ!!」
再びチャージスパイクロープを繰り出し、ゼロは滅閃光を繰り出す。
弱点に弱点武器と必殺技を立て続けに喰らうオメガの表情が歪む。
「とどめだ!!ノヴァストライク!!」
本体の頭部に向かって渾身のノヴァストライクを繰り出すエックス。
しかしオメガは動じることなく、角のような部分から巨大なエネルギー弾を放つ。
ノヴァストライクを発動していたエックスは自分からそれに飛び込むような形になる。
「ぐっ!?こ、これは…!!」
ダメージは大したことはないが、まるで動けない。
オメガがセイバーを構えるのを見たゼロはエックスを助けようとするが。
「エクシードバスターネオ」
「なっ!?ぐああああっ!!!」
左腕のバスターからオメガのチャージショットとも呼べる攻撃がゼロに放たれる。
咄嗟にゼロはシールドを展開したが、あまりの出力に耐えきれずにシールドが吹き飛び、ゼロは直撃は避けられたが吹き飛ばされてしまう。
「ゼクシードセイバーネオ」
無慈悲にエックスに向けて振り下ろされるオメガのチャージセイバー。
「ガイアアーマー!!」
咄嗟に防御力に秀でたガイアアーマーに換装するエックス。
刀身が床に叩き付けられるのと同時に凄まじい衝撃波が発生する。
まともにゼクシードセイバーネオの一撃を喰らったエックスはあまりの破壊力にもし、あれをアルティメットアーマーのまま受けたら、もしガイアアーマーの換装が間に合わなかったと思うと背筋が凍る。
オメガのチャージセイバーであるゼクシードセイバーネオの一撃は特殊合金のガイアアーマーの装甲を粉砕してしまった。
「ぐっ……」
ガイアアーマーはもう使えない。
つまりエックスは超絶的な守りを失ってしまった。
アルティメットアーマーに換装し直そうとするが、ノヴァストライクでは先程の二の舞になってしまう可能性がある。
「(考えろ!!オメガを倒す方法を!!)」
使い物にならなくなったガイアアーマーを捨てて考える。
クロスチャージショットでは威力が足りない。
オメガを倒すにはギガアタックを確実に当てなくてはならないのだ。
エックスは必死に頭を働かせる。
「エックス…あれをやるぞ」
「っ!!あれ…?」
「以前、シグマの基地を吹っ飛ばしたことがあっただろう。ギガクラッシュ…今で言うギガアタックでな…同じ機構を備えているなら出来るはずだ」
「しかしあれは…」
あれはボディパーツの性能だけでなくライト博士から後付けで与えられたプログラムで出来たことであり、今の自分では出来ない。
オメガの攻撃を必死にかわしながらエックスは何とかギガアタックの威力をアップさせる方法を考える。
「………………そうだ。1つだけあった。ファルコンアーマー!!」
エックスが選択したのはアルティメットアーマーではなくファルコンアーマーであった。
『(………何をするつもりだ?)』
「ゼロ!!滅閃光のエネルギーを俺に!!」
「任せろエックス!!滅閃光の全エネルギーを受け取れ!!」
滅閃光の全エネルギーを拳に纏わせたゼロは、それをエックスに直接叩き付ける。
あまりにも強力な一撃にファルコンアーマーに無数の亀裂が入るが、エックスは構いはしなかった。
「ぐっ…レイジングエクスチャージ!!」
更にレイジングエクスチャージを発動し、エックスはギガアタックの発動体勢に入った。
通常のスピアショットウェーブでは威力が足りないが、ゼロの滅閃光のエネルギーを受け、レイジングエクスチャージでファルコンアーマーのプログラムの性能を限界を無視して向上させると、あの時にライト博士から送られたプログラムと同等の効果を発揮させた。
それに危機感を抱いたのかオメガがエックスにバスターを向けた。
「エクシードバスターネオ」
バスターから再びフルチャージショットが放たれるが、それよりもエックスの行動の方が早い。
「ハイパースピアショットウェーブ!!!」
ファルコンアーマーは砕け散ったが、滅閃光のダメージを数百倍に増幅して放出した一撃は凄まじく、オメガの周囲に巨大な貫通弾を発生させてフルチャージショットを粉砕し、オメガを貫いた。
「グ…オオオオオオオオッ!!!!」
全身に風穴が空きながらもエックスにセイバーを向けるオメガだが、それよりも速くゼロが動いた。
「ずああああっ!!!」
2本のセイバーを抜いてオメガの頭部を斬り裂き、ロッド用のセイバーをオメガの頭部に突き刺す。
「エックス!!」
「スパイクロープ!!」
アルティメットアーマーを装着し、レイジングエクスチャージを維持したままチャージスパイクロープを繰り出す。
通常のチャージ攻撃よりも巨大で速い一撃はオメガの本体の頭部に炸裂し、粉砕したのだった。
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