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楽園の御業を使う者

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CAST39

「ふぅーん……この子が……ねぇ?」

「ま…極夜さん。愛梨嬢が怯えてるからその辺で」

「そうね」

車内で目を覚ました愛梨嬢。

車から降りた俺達三人を真夜さん達が出迎えた。

愛梨嬢は真夜さんと深夜さんの顔を知っていたらしく、顔を青くしていた。

「一色愛梨さん」

真夜さんが愛梨嬢に話しかけた。

「は、はい」

「白夜君の事は知ってるわね?」

「もちろんです」

うーわ足ガックガクじゃん…。

「私達は今回の件にはかかわっていません。だからこれは四葉真夜としてではなく、単なる白夜君の友人として言うわ」

まぁ、恋人とは言えんわな。

「もし貴方が彼に恩義を感じているならば、彼に何かあったとき力になってあげて」

愛梨嬢がコクコクと首を縦に振る。

「真夜。この子怯えてるわよ。さっき白夜君もいったけど」

「あらごめんなさい一色さん。もう行っていいわ。それと、もうこんなことが起きないよう気を付けるのよ」

「はい! ありがとうございました!」

それだけ言って愛梨嬢が脱兎の如く逃げ出した。

「白夜様白夜様」

「なんだよ水波」

「あの子白夜様に惚れてますよ」

なぬ?

「え? そんな素振りなかったけど?」

「はー、これだから白夜様は」

「え? いや…………………達也」

とりあえず達也に助けを求めてみた。

「ん? 一色愛梨がお前に好意を持っていてもおかしくはない。
殺されそうな所を助けたのだろう? 所謂『吊り橋効果』ではないのか?」

たしかにそういう事はあるかもしれない。

でもおれが聞きたいのはそうじゃなくて…。

「あの子そんな素振りあったか? お前にはどう見えた?」

「わからん。今は女だが元は男だからな。だが元から女性である水波がそう言うのであればそうなのかもしれない」

コイツ上手くかわしやがったな…。

「ああ、そういえば私が行った時白夜君愛梨ちゃんに膝枕してましたね」

「「へー…」」

あれ、なんか冷たい視線が…。

いや、わかってる。

「い、言い訳をさせてください」

「そんなの要らないので白夜ちゃんの処女ください」

「そうね、白夜君の初めてでも貰おうかしら」

対価が重い!?

特に水波の!











結局、あのあと分が悪くなった俺は逃げた。

そして水波と交代でオネエサマが俺の護衛についた。

要らないって言ったんだけどなー…。

で、何処に逃げ込んだかと言えばここ二日くらいで名前で呼び会う仲になった将輝の元だ。

千里先を見通す程度の能力で探しだし、隣に座った。

ちょうど将輝、俺、達也、通路の順だ。

「あー…白夜。彼女は、その…?」

将輝は真夜さんの事をなんとなく察している。

そして真夜さんと一緒にいる達也の事も察しているのだろう。

「四葉達也だ。お初にお目にかかる、クリムゾン・プリンス」

「一条将輝だ」

お? もしかして去年の防衛戦の立役者揃い踏み?

ちなみに、ジョージ(ちゃんと元に戻した)は現在将輝の妹ちゃんといるらしい。

「ちなみに、去年の沖縄戦で大亜連合軍にマヘーシュヴァラと恐れられた男がこの達也だ」

「なに!?」

「驚くのは早いぞプリンス。この小さいのは同じくヘイスーフーデイエと恐れられた魔法師だからな」

「!?」

将輝が滅茶苦茶驚いている。

「他言無用で願おう」

「あ、ああ、わかった」

「そうそう。おれは対外イメージってのもあるしな」

「言い出したのはお前だがな」

「閑話休題!」

「誤魔化したつもりかちっこいの」

「うるせークリムゾン・プリンス(笑)」

将輝が拳を握ってぷるぷるし始めた。

「きゃーこわーい(棒)」

達也のうでにしがみつく。

「…四葉殿っ…! そのペド野郎を一発殴らせては貰えないだろうかっ…!」

「ん? ああ。すまんな。それは出来ないが今夜辺りにこいつのメイドに悪戯するよう仕向けておく」

「ヲイ!?」

達也を叩くがあんまり効いてない。

能力を使わないと、見た目通りの力しか出せないのだ。

「ん?そう言えばさっき四葉殿の事を男って…それに達也って普通男の名前じゃ…?」

将輝のもっともな疑問。

達也に視線で聞くと、顔を背けられた。

「将輝。ちょっと話があるからこっち来て」

将輝の手を引いて通路へ。

そして会場の外に出る。

幸い今は試合中で外はすいている。

こちらを見る視線が無くなった瞬間。

━━なんでもひっくり返す程度の能力━━

将輝の性別をひっくり返す。

「な!?」

振り返ると茶髪の穏やかそうな美少女が居た。

あと巨乳。

「凄いだろ?」

まぁ、将輝が薄着だったのでちょっとセクシーになってるが。

「…………こないだのジョージのは」

「うん。俺だよ」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

沈黙。

ただひたすら沈黙。

「さ、戻ろうか『お姉ちゃん』」


客席に戻ると達也が呆れた顔と気の毒そうな顔をしていた。

「なんだお前もやられたか。気の毒だったな一条」

俺の頭越しに達也と将輝が会話を始める。

「………………幻覚か?」

「いや、白夜のは正真正銘性転換魔法だ。たしかお前の親友もやられていただろう?」

「………物質変換か?」

「さぁな。本人に聞け」

「…………四葉殿」

「達也でいい」

「達也。苦労しているんだな」

「なに、コイツのメイド程ではないさ」

「おいその言い方はやめて貰おうか。毎回水波に振り回されているのは俺だぞ」

「それだってお前が水波に無茶振りした仕返しだろう。そうでなくともお前の付き人ともなれば戦闘の回数も一度や二度ではあるまい」

まぁ、確かに収録帰り…時折野外収録中とかにも襲われるもんな…。

こないだとかドラマの撮影中に狙撃されたし…。

「白夜、これ戻るんだよな?」

将輝が不安げに尋ねる。

くそっ。物憂げな表情が絵になるような美少女になりやがって。

「大丈夫大丈夫。ちゃんとジョージは戻しといたでしょ?」

「ならいいんだが…」

「あ、でも女性っぽい仕草が染み付くかも。
なぁ達也?」

「黙れ」

前に連休中に達也を女体化させたら週明けにちょっとした動作に女性っぽさが出ていた。

「まぁでも、女性の体のメリットとデメリット知ってたらエスコート力上がるよ」

「白夜に同意見だ。一条、貴重な体験だからよく学んでおけ」

「……そうか…達也は慣れる程女にされているのか…。くっ…」

「俺に哀れみの目を向けるな。白夜の近くに居るとはそういう事だ。お前も例外じゃないんだぞ一条」

「体感してるよ」

二人揃って俺に視線を向けてため息を吐いた。

「な、なんだよ」

「「いや、なんでも」」

お前ら仲いいな。 
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