ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第101話:Enigma Laser Area
エックスがマッコイーンを撃破して間もなく、ハンターベースでは警報が鳴り響いていた。
「ハンターベース敷地内に侵入者!!あれは…ダイナモ!!」
ダイナモがハンターベースに襲撃をかけてきたのだ。
それはエックス達がいない現状において最悪以外の何物でもない。
マッコイーンを倒したエックスは水素を作るための施設を解放するためにすぐにハンターベースには戻れない。
ルインは簡易転送装置が壊れたために、武器ブローカーが所有していたチェバルでハンターベースに戻ろうとしているが、ハーネットかアディオンならともかく、チェバルではもうしばらくかかるだろう。
ゼロは3人が向かった場所で最も遠い場所であるエネルギー研究所に向かっているために、今から戻ってもらったところで間に合うかどうかは微妙なところだ。
「どうする!!?エックス達がいない今、このままではエニグマが…世界を救うための希望が…」
焦りを見せるシグナスを見て、アイリスは意を決して立ち上がる。
「総監、私が彼と戦います!!」
「何!?」
「無茶よアイリス!!あなたは戦闘用レプリロイドじゃないのよ!?殺されるのがオチだわ!!」
「戦闘訓練ならレプリフォースに所属していた時にしています!!それに、この力を使えば、私は兄さんと同等の力を…ここでエニグマが破壊されたら全て終わりですよ!!」
まだ戸惑っているエイリアだったが、アイリスの苦悩と決意の混じる瞳を見て、彼女にはエックスの姿がダブって見えたのか…。
「…分かったわ。でも、危なくなったら必ずここまで戻ってくること!!」
アイリスの出撃を承認せざるを得なかったのであった。
「すまんゼロ…」
司令室を飛び出したアイリスの背を見送りながら今はここにいないゼロに詫びるシグナス。
ギガ粒子砲・エニグマ
100年前の大戦時に建造されて以来、老朽化が進んで殆ど使い物にならなくなっていた大型の砲台である。
しかし今ではこれが地球を救う数少ない希望なのだ。
「ダグラスさん!!ゲイトさん!!」
「くっ…な、何故…非戦闘員の君がここに…!?」
「ア、アイリス…ぐっ…むぐぅ…」
絶叫するアイリスの目の前で胸を斬られたゲイトは膝をつき、首を絞められているダグラスが呻く。
恐らくエニグマを守らんと力及ばずながら立ち向かったのであろう。
辺りにはダグラスの部下である作業員やエニグマの整備に宛がわれたハンター達が倒れている。
「くっ、ア、アイリス…さん…」
「逃げて…下さい…早く…!!」
「っ…ダ、ダグラスさんを放しなさい!!」
拳銃をダイナモに向けながらアイリスは叫んだ。
ダイナモは手に抱えていたダグラスを無造作に背後へと投げ捨てる。
「がはぁっ!!」
強かに全身を床に叩きつけられたダグラスが呻く。
「ダグラスさん!!」
「おお、こいつは驚いたなあ。究極のレプリロイドの片割れのアイリスちゃんじゃないか。結局エックスさんもゼロさんもルインちゃんもお留守で、ここにいるのは弱いハンター達とアイリスちゃん1人?こりゃどうなってんのかねぇ?いくら潜在能力はあっても非戦闘員のアイリスちゃんを出すなんて…ひょっとして、ハンターの連中は俺を舐めてんのか?」
「(…どうやら私と兄さんの関係は知ってても、私がしようとしていることには気づいてないみたいね…ごめんなさいゼロ…)」
カーネルのメモリーチップを取り込もうとするアイリスだが、その前にダイナモに阻止される。
「お生憎様、アイリスちゃん。旦那から君のことはよ~く聞いてるんだ。君がお兄さんのメモリーチップを取り込むことでとんでもない化け物になるんだってこともね」
「っ…!!」
あまりの握力にカーネルのメモリーチップを落としてしまうアイリスに対してダイナモは薙刀型のビームサーベル・Dブレードを抜いた。
「アイリスちゃんに恨みはないけど、悪く思わないでくれよ。じゃあね」
ダイナモがブレードをアイリスに振り下ろそうとした瞬間。
「っ!!」
殺気を感じたダイナモは咄嗟に顔を横にずらすと、ダイナモの頬を高出力レーザーが掠る。
「調子に乗ってんじゃねえぞ糞野郎。とっととその薄汚ねえ手をアイリスから放せ」
高出力レーザーを放ったのはルナであった。
二丁の拳銃型レーザーショットであるAバレットを握り締めながら、ダイナモを睨み据える。
「糞野郎とは随分と酷い言い方だね。傷付くなあ」
傷付いたようにそう言いながらダイナモはブレードを構えてルナに突っ込む。
武装から見て遠距離戦に特化したレプリロイドだと思ったのだろう。
「残念だったな、俺のバレットにはビームコーティングが施されているからビームサーベルを受け止めるのは簡単だぜ。」
片方のバレットでダイナモのブレードを受け止めると予めチャージしていたもう片方のバレットを向ける。
「喰らいやがれ!!」
フルチャージされたチャージレーザーが放たれるが、ダイナモは咄嗟に後方に跳躍することで回避する。
しかしそれを見たルナが不敵に微笑んだ。
それにダイナモが訝しむが、チャージレーザーは壁に反射し、ダイナモの右肩を貫通した。
「くっ…反射!!?」
「リフレクトレーザー…このバレットのフルチャージのレーザーは、壁や障害物に反射する能力があるんだよ。どんな手練でも流石に反射の軌道は読みにくいだろ?さあ、覚悟しろよ!!人様の客に手を出しやがって!!」
「客?君はハンターじゃないのかな?」
「俺はただのジャンク屋さ。パーツを得るためにイレギュラーを処分して、そのパーツを売っ払って利益を得る…たまに実力を買われて用心棒をしたり…非合法なことをしている点はお前に近いかな?」
「成る程、ある意味同業者なわけね。それにしてもアイリスちゃんといい、君といい。可愛い女の子ばかり来るとは…僕は罪な男だねえ!!」
「生憎、俺はてめえみたいな男は好みじゃねえんだよ!!」
ショットを連射するが、ダイナモはダメージを感じさせない動きでレーザーの嵐をかわす。
「チッ!!流石に大人しく喰らわねえか!!」
「当然…喰らいな!!」
どこに隠し持っていたのかブレードを連続で投擲するダイナモ。
ルナはブレードの軌道を読みながら回避するが、それは隙となり、ダイナモは跳躍するとバスターからショットを放つ。
1発のショットが2つに割れて、左右に飛び散る。
「破裂弾か!!」
「それだけじゃあないよ!!」
投擲したブレードがブーメランのように戻って来る。
何とかギリギリでかわしてダイナモにバレットを向け、ダイナモとダイナモが持つブレード、そして投擲されたブレードをロックオンする。
「ホーミングショット…コネクションレーザー、発射!!」
ロックした敵、物体を連鎖的に電撃のようなレーザーを放って攻撃する一撃をダイナモに見舞う。
「やるねえ、そろそろ本気でやるかい?お互いに?」
「ご勝手に。俺にはてめえに構ってる暇はねえんだよ」
「そう…けど、危ないんじゃない?そろそろ本気出さない…と!!」
ダイナモが一気に力を入れると、ブレードを受けていたバレットが弾き飛ばされた。
「チッ!!」
「もらったぁ!!」
ダイナモが横薙ぎで振るったブレードでルナの体を両断しようとする瞬間。
「舐めんなああああっ!!!」
彼女の体が発光し、しばらくして光が消えた後には…。
「ふう…」
「っ…」
大きく息を吐いたルナと右腕を切断されて、膝をついているダイナモの姿があった。
「っ…その能力は…一体…?」
信じられない物を見たかのようなダイナモにルナはニヤリと笑った。
「秘密♪俺としては…お前の体の一部を手に入れられただけでも儲け物だぜ…」
「全く…信じられない物を見たよ…思いがけず力の入ったバトルになっちゃったけど…今日はこれで帰らせてもらうよ…今度はスポーツな感じで戦って爽やかな汗をかきたいね…シーユーアゲイン!!」
ダイナモは転送装置を使い、何処かへと消えた。
「…ふう、何とか追い払えたか…エニグマには何の損傷もなし…おい、アイリス、ゲイト。大丈夫か?」
「え、ええ…」
「な、何とかね……」
あまりの眩しさに目が眩んでいるのか、アイリスとゲイトの目は瞬きを繰り返している。
2人の手を引いて立ち上がらせる。
「さてと…おい、オッサン。生きてるか?」
「オッサン…言うなっての…と言うかこの扱いの差は何だ…」
倒れているダグラスをルナは足先でつついてみるが、痛みに顔を顰めてはいるものの、受けたダメージは大したことはないようだ。
「言葉が返せれば大丈夫だな。ほら、大将のトコに行くぞ」
アイリスの手を取ってシグナスの元に向かうルナ。
司令室では侵入者を撃退したルナを目を丸くしたシグナスとエイリアが迎えていた。
「あの光は…ただの目眩ましではないようだが、一体何なんだね?」
「さあ、何だろうなひ・み・つ♪」
同じことを何度もシグナスに聞かれるが、それを何故かルナは笑いながらごまかす。
「そうそう、エイリア。これ土産」
「え?キャアッ!!?」
回収したダイナモの右腕をエイリアに投げ渡す。
流石に腕を投げ渡されるとは予想していなかったエイリアは飛び退いた。
「ダイナモの右腕。そいつを解析すればいい物が見つかるかもしれねえぞ?」
「どういうこと?」
「ダイナモはシグマウィルスが蔓延しているコロニーにいながら発症した様子は見られなかった。もしかしたらシグマからシグマウィルスのワクチンプログラムを入手していたかもしれねえ。」
「成る程、シグマ本人が手渡したワクチンプログラムならばより確実にイレイズしたイレギュラーを正常に戻せる。分かった、ライフセーバーに伝えておこう」
とにかく、招かれざる来訪者がいなくなったことで、シグナス達は胸を撫で下ろすのだった。
そしてダイナモは依頼人のシグマから与えられた拠点で右腕の修理をしていた。
「…一体、何だったのかねえ、あれは……」
彼女の体が光り輝いた瞬間、気を取られたダイナモはビームサーベルで右腕を切断された。
それだけなら大して気にはしなかったが、問題はそこじゃない。
自分の右腕を切断したのは、ルナではなかった。
かつてのドップラーの反乱…別名、第三次シグマ大戦の時にシグマに操られたドップラーが世界中のレプリロイドを研究して造り出され、エックス達と戦い、最終的に敗れたヴァジュリーラFFであった。
ヴァジュリーラFFの姿となったルナが振るったビームサーベルで右腕を斬り落とされてしまったのだ。
「…何者…なのかねえ……」
コピーとして造られるレプリロイドは職業柄、よく見てきたが姿と能力をコピーする能力など聞いたことがない。
しかしこれはよく考えれば…。
「謎の能力を持つ気の強い可愛い女の子…これは退屈しなさそうだ。ルインちゃんに続いて楽しみが増えたよ」
新たな楽しみにダイナモは笑みを浮かべながら右腕の修理を待った。
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