徒然草
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221部分:二百二十一.建治・弘安の比
二百二十一.建治・弘安の比
二百二十一.建治・弘安の比
後宇多帝の頃であった建治・弘安の時代には葵祭の警護をする放免人が持つ槍に変わった趣の飾りを付けていました。その飾りは紺色の布を着物にして四着か五着は使っておりましてそれで馬を作って尾や鬣は燈籠の芯を使っていて蜘蛛の巣を書いた衣装等を付けまして短歌の解釈等を言いながら練り歩いた姿をよく見ました。これは面白いことを考えたものだと隠居した役人達が今でもこのことを昔話に出します。
近頃では年々贅沢になっていましてこの飾りも行き過ぎのものになったようであります。色々と着たいものを一杯槍にぶら下げましてそのうえで両脇を支えられながら本人は槍さえ持てずに息を切らせて苦しがっています。そうした姿はとても見るに耐えません。風情というものが全くありません。
近頃のそうした風潮は全く以って不快なものであります。まだ後宇多帝の御代の方が遥かにいいです。そうした風情を知っている人が少なくなってきました。今の様にただ贅沢にしたところで何の風情があるでしょうか。風流と贅沢はまた違うものであります。それを解しないでこうした派手な装飾ばかりというのはです。見ているだけで不愉快になってしまうものであります。
建治・弘安の比 完
2009・12・21
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