ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第49話:Snowman
ハンターベース襲撃から数日後、イレギュラーが各地で大量発生し、エックス達ハンターはイレギュラーの対応に追われていた。
現在、エックスがいるのは大スキー場の麓街…ラーガに訪れていた。
その街の中央に一晩にして巨大な白銀の塔が築き上げられていたのである。
そしてエックスはその元凶であるイレギュラーと交戦していた。
「見損なったぞバッファリオ!!この街をイレギュラーから守ってきたお前がこんなことをするなんて!!」
エックスのチャージショットとバッファリオと呼ばれたレプリロイドの冷凍ビームが激突し、相殺し合う。
バッファリオはバッファロー型のスキー場整備用レプリロイドでありながらも寒冷地での性能は極めて高く、絶対零度の中でも活動可能な程で寒冷地のみに限れば特A級ハンターにも匹敵する程の戦闘力を誇る。
「見損なった…?何も知らない癖に分かったような口を利かないでもらいたいな!!」
巨体に似合わぬスピードでエックスとの距離を詰めて殴り飛ばすバッファリオ。
「ぐっ!?」
「良く見てみろエックス。この美しい光景を、人類の存在を隠す純白と透明の世界!!これ程美しい光景は無いと思わないか!?この清き世界により人類は…」
「何を言っている…ドップラーに何を吹き込まれたのかは知らないが…罪もない人々の生活を踏みにじるのがお前の言う芸術なのか!?」
「失礼な!!」
ショットを放つが、チャージもしていない一撃ではバッファリオの掌に打ち消されてそのまま殴り飛ばされる。
「ぐあっ!!」
「人の話は最後まで聞け!!エックス、あのお方の素晴らしいお考えが理解出来ないのならこのまま凍り付いてこの美しい光景の一部になるがいい!!」
冷凍ビームで凍結されて身動きが取れなくなってしまい、そんなエックスに向かってバッファリオが突進してくる。
「(駄目だ!氷を砕く前にやられる…!!)」
バッファリオが激突する直前に1人の少年が間に入ったことでバッファリオの動きが止まった。
「き、君は…!?」
「…………」
「……ぐっ…ガ…ブモーーーーッ!!」
少年を見た瞬間に頭を抱えて苦しみだし、バッファリオを逃げ出すが、氷を破壊したエックスがバスターを向ける。
「待て、バッファリオ!!逃がさないぞ!!」
チャージショットを放とうとするが、エックスを庇った少年がエックスの腕にしがみついて止めた。
「(な、何なんだこの子は…?)君は…バッファリオの…知り合いなのかな…?」
バスターを元に戻すと、少年もまた離れた。
「…ついて来てよ」
そして少年に案内されたエックスは1つの雪だるまがある場所に着いた。
「これは雪だるま?枝を折って笑顔にしているからかな?とても温かい顔をしているね。でもどうしてこれを?」
「この雪だるまは…バッファリオと作ったんだ。今みたいになる前の」
「イレギュラー化する前のバッファリオと?」
「うん、俺…一緒に遊べる友達がいなくて。何時も1人で遊んでたんだ。そしてこの枝を折る前の雪だるまを作ったんだけど…何処か気に入らなくて怖そうとした時にバッファリオと会ったんだ。そしてバッファリオはこの枝を折って笑顔の雪だるまにしてくれたんだ。」
「そうなんだ…」
「そしてバッファリオは“ブスッとした顔で遊んでも楽しくないだろう?遊ぶなら心から楽しむべきだ”って言って俺の友達になってくれたんだ。」
それは自分が知るバッファリオそのものだ。
「そうか…バッファリオらしいな」
「でも、バッファリオはドッペルタウンってとこから戻ってきてからどんどんおかしくなっていったんだ!!本当は…あんな奴なんかじゃないのに!!」
「うん…分かってるよ…」
「あんたバッファリオの友達なんだろ!?バッファリオを元に戻してくれよ!!」
「…………」
少年からの頼みにエックスは何も言えない。
何せ今回のイレギュラー化の原因はケインでさえも見つけることが出来ないでいるのだから。
「…俺もバッファリオを死なせたくはない。最善を尽くすよ」
今のエックスに言えるのはそれくらいであった。
そしてエックスはこのエリアのハンター支部に向かい、ケインにある物を頼んだ。
「それではお願いします」
『う、うむ…しかしそれを使うとなるとアームパーツが使えなくなるかもしれんぞい?』
「構いません。俺の力は“救う”為の物ですから」
そして転送された物をバスターに組み込んでエックスは明日、バッファリオを捜すことを決意した。
そして翌日、エックスは街の惨状に驚愕することになる。
「麓の街が氷付けになっている!?たった一晩の間で…?バッファリオの能力が強化されているのか…ん?」
ふと、下に目を遣るとそこには雪だるまが置かれてある場所に向かう少年の姿があった。
エックスも追い掛け、雪だるまのあった場所に行くとそこには無惨にも壊されている雪だるまの残骸が散らばっていた。
「………(どうして…こうなるんだ…俺達は…所詮…機械なのか…?)」
小枝を拾ってそれを握り締める少年にエックスは何も言えずにこの場を去っていく。
そしてバッファリオを捜し回り、緊急時用避難ドームから悲鳴が聞こえて駆け込むと、バッファリオが暴れていた。
「止めろバッファリオ!!」
セカンドアーマーを装着してバッファリオに体当たりを喰らわせて転倒させ、そのまま抑え込む。
「早く逃げるんだ!!」
避難していた人々を何とか逃がすが、エックスはバッファリオに弾き飛ばされる。
「くっ!!」
何とか立ち上がってバスターを構えるが、完全に正気を失っているバッファリオに目を見開く。
そしてエックスに向けて巨大な氷弾を放ってくる。
「フロストシールドか!?」
バッファリオの技のフロストシールドはただ攻撃に使えるだけでなく、着弾したところに鋭利なトゲとなって相手の機動力を削ぐことが出来る。
エックスはショットで氷弾を迎撃しながらバッファリオの例のアレを当てようとするが、バッファリオの接近を許してしまい、顔面を鷲掴みにされて壁に何度も叩き付けられる。
「う…ぐっ!!」
何とか逃れるものの、頭部のダメージですぐに動けなかったが、バッファリオがエックスが逃れたことに気付かずに同じことを繰り返した為に何とか意識をはっきりと取り戻すことが出来たが…。
「(これが…本当にあのバッファリオなのか…?あの何時も穏やかで人当たりの良かった…)」
嘗てのバッファリオとはあまりにもかけ離れた姿にエックスは脳裏に少年の姿が過ぎって唇を噛み締める。
「バッファリオ…」
「ブモオッ!!」
エックスの声でようやくエックスを掴んでないことに気付いたバッファリオがエックスに攻撃する。
「お前は本当にこれでいいのか?何時も穏やかで人当たりが良くて、この街の人々からも…沢山慕われていたお前がっ!!そしてお前を友達だと言ってくれた子供の心を裏切るのか!?俺達レプリロイドはただの機械なんかじゃない!!」
「ブモーーーーッ!!」
殴り飛ばされながらもエックスは何とか立ち上がる。
「俺達には…レプリロイドには“心”があるんだ!!メカニロイドにはない考える力があるんだ!!だから…お前を慕う人々を…あの子をこれ以上傷つけるな!!」
全身に炎を纏わせてその炎を拳に集束させ、業火を纏った拳をバッファリオに叩き込んだ。
「戻って来いバッファリオ!!ラッシングバーナーーーーーッ!!!!」
繰り出したのは前回の戦いで倒したイレギュラーであるフレイム・スタッガーの特殊武器である。
バッファリオは寒冷地特化型であるために熱に弱いのでこの武器チップの転送を頼んだのである。
しかしこのセカンドアーマーのアームパーツは再現が不完全であるために特殊武器チャージはあまり使えない。
しかしこの一発でも熱に弱いバッファリオには充分過ぎる威力だ。
バッファリオの頬に拳が突き刺さり、勢い良く吹き飛ばされて壁に頭から叩き付けられた。
それによるショックのせいかバッファリオが頭を抱えて苦しみ始め、目が正気に戻る。
「うあああああ…!!僕は…何てことをしてしまったんだ…街を壊して…人々を…あの子の心を傷つけてしまった…」
「バッファリオ…」
「エックス、君のバスターで僕を裁いてくれ…!!罪は償わなければならない…僕の罪は“死”でしか償えないんだ!!」
「(何でこうなるんだ…確かにバッファリオには罪はある。その罪は償わなければならない…だけど…!!)」
バスターから放たれたチャージショットはバッファリオの横の壁を貫くだけで終わる。
「何故だ…何故撃ち抜いてくれない!!」
「出来るか!!確かにお前は罪を犯した。だけどここでお前を倒して何になるんだ!!生きろ…どれだけ辛くても生きて罪を償うんだ!!それがお前に出来る償い……ん?あ、あれは…あの子じゃないか…」
バッファリオの隣を通り過ぎて開けた穴から外を見るとバッファリオの友人である少年が必死に雪だるまを作っていた。
「…………あ、あの子は…どうして…」
「あの子はずっと雪だるまを作ってたんだな。イレギュラー化しても本当のお前はまだいるんだって信じていたんだ。バッファリオはどうなんだ?あの子の気持ちに応えてやれないのか?あの雪だるまに応えてやれないのか?」
エックスの言葉にバッファリオはドームを飛び出して少年の元へと向かっていく。
2人の仲の良い姿を見ていたエックスの胸に暖かいものが灯るのであった。
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