徒然草

二百八．経文などの

二百八．経文などの
　お経等の巻物の紐を結ぶのにあたって上と下から襷の様に交差させて二本の間から紐の先を横に引き出すことはこうしたことにあたってはよく行われるやり方でありあます。そう巻いてある巻物を華厳院の弘舜僧正殿は巻き直させました。それが何故かといいますと僧正殿が仰るには最近流行っている嫌な巻き方である。こうしたものはただぐるぐると巻いて上から下へ紐の先を挟んでいればそれでいいのである、と仰いました。
　この僧正殿はお年を召されていてこうしてことをよく知っている人でした。そのことを思い出させるお話であります。
　巻物の紐なぞ大したことではありませんがそれでもそこにはこだわりといったものがあります。ですから中々どうするべきかということを考える人がいるのであります。この僧正殿はそれでこの様にして結びなおさせたのです。ただそうして巻いているだけでいいのだと。何も交差させてといったようなまだるっこしいことなぞせずにただ巻いていてもそれでいい、こうしたやり方が昔のものでありました。ただ流行りが粋でいいかといいますと決してそうではありません。ですからこのやり方もいいものだと思います。そう考えさせられるお話であると思います。


経文などの　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　 ２００９・１２・８