徒然草
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195部分:百九十五.或人、久我縄手を通りける
百九十五.或人、久我縄手を通りける
百九十五.或人、久我縄手を通りける
ある人が久我の畔道をまっすぐに歩いていますと上は下着姿で下は袴という格好の男の人が木製の地蔵を田んぼの水の中に浸してそのうえでせっせと真面目にそのお地蔵様の木像を洗っているのでした。その人が一体何をしているのかと思って洗うその姿を見ていますとそこに貴族の身なりをした男の人達が二、三人やって来たのでありました。それその人達はそのお地蔵様を洗っているその人を見つけてこんなところにおられたのですかと言ってその人を保護して引っ張って行ったのでありました。この人が誰かといいますと何とこの人こそが久我の内大臣であられた源通基公であられました。
どうやら御歳を召されてそのうえでこの様な有様となってしまわれたようであります。この源通基公も意識がこちら側にあった頃は心の優しい立派な人でありました。ですがそうした肩もこの様な有様となってしまわれるのです。何故田んぼで木像を洗っていたのかはもう考えるだけ無駄でありましょう。そうした方になってしまわれたということです。そのことが非常に残念であり悲しいのでありますがそれを言っても詮無いことであります。まことに人というものはどうなってしまうのかわかったものではありません。この話を聞いてそのことを思った次第であります。
或人、久我縄手を通りけるに 完
2009・11・25
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