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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第39話:Giga Crash

 
前書き
アームパーツはアリゲイツ戦中に。 

 
エックスがライドアーマーに乗り込んで突撃したことはハンターベースでも動揺が走ったが、特にエックスの状態を知るエイリアの動揺はかなりのものだった。

「エックス…何て無茶を…」

「どうしたんじゃエイリア?」

まだエックスの状態を知らないケインは首を傾げている。

「今のエックスは腕がバスターにならないんです!!そんな状態で出動したら…」

「な、何じゃとおっ!!?」

バスターが使えない状態で出動したエックスにケインの叫びが司令室に響き渡った。

そしてエックスは攻撃を回避しながら何とか甲板に着地することが出来た。

「(バスターは使えない以上、俺に残されている武器はルインの武器とこのライドアーマーのみ…何とかライドアーマーを破壊されずにボスの元まで行かなくては!!)」

しかし、着地したポイントが悪かったのかレプリロイドとメカニロイドの大軍が群がってきた。

「くそ!!着地する場所を間違えたか…!!」

出来るだけ消耗を避けたいと言うのによりにもよって敵の密集地帯に着地してしまったようだ。

VAVAのような操縦テクニックがあれば被弾を抑えつつ立ち回ることは可能だろうが、残念ながらエックスにそれほどの技量はなく、波状攻撃を受けてライドアーマーを破壊されてしまう。

「くそ…」

爆風で吹き飛ばされたエックスは仕方なくルインの武器を構えたものの、セイバーもバスターも反応しなかった。

「ルインの武器まで!?」

頼みの綱であるルインの武器まで使えないと言う事態にエックスは攻撃を為す術なく受けてしまう。

正確にはルインの武器に問題があるのではなく、エックスが無意識に武器への出力を拒んでいるのだ。

「く、くそ…俺はみんなの盾にもなれないのか…!!」

このままではやられるのは時間の問題かと思われたが、ライト博士がボディパーツに保険をかけていたのか、ボディパーツの能力が発動された。

エックスを中心に広範囲にエネルギー波が放出され、レプリロイドとメカニロイドの大軍を殲滅した。

『エックス…』

「え?」

『何をしているのエックス?』

光の中にいたエックスは声に反応して振り返ると、そこにはルインがいた。

研究所にいる大破した姿ではなく、五体満足の状態でだ。

「君はどうして…」

『エックスが立ち止まってるから背中を押しに来たんだよ』

「え?」

目を見開くエックスにルインは微笑んだ。

『ねえ、エックス。ゼロが本心からあんなことをしたんだって思ってる?』

「それは…」

ルインの問いにエックスは答えられずに俯いてしまう。

『エックス…思い出してごらんよ?ゼロとの思い出…エックスを、私を助けてくれた最高の先輩はそんなことするような人だった?』

「っ!!」

ルインに言われて思い出した。

ゼロとの思い出…イレギュラーハンターに配属されたばかりで右も左も分からなかった自分に声をかけてくれた。

他にもイレギュラー相手に非情になれずに何度も危機に陥ると呆れながらも助けてくれた。

先の戦いの時だって…自分を庇って…。

『思い出した?』

「ああ…思い出したよ…俺は…俺は…っ!!何を疑ってたんだ…!!ゼロは何度も俺を信じて助けてくれたのに…今度は…俺がゼロを信じてやらないといけなかったのに…!!」

『良かった…エックスが思い出してくれて…私達は何時だってエックスと一緒に戦っているからね』

その言葉を最後にルインの輪郭がボヤけていく。

しかしもう大丈夫だろう。

「…ああ…そうだ。2人は何時だって俺と一緒に戦ってくれる…ありがとう…」

光が晴れた時にはエックスは完全に吹っ切れて新しいボディパーツの能力を再確認していた。

「これが、ボディパーツの新能力…ギガクラッシュか…ダメージをエネルギーに変換する機構を取り付けたことで防御力は前のアーマーより下がっているようだけど…」

しかし、これによって起死回生の一発逆転が出来るようになったようだ。

これは切り札として使えそうだ。

「さて、この艦の指揮者は何処だ?」

『知りたいか?』

「その声は…クラブロスと同じく行方を眩ませていたホイール・アリゲイツだな?」

『正解だ。今じゃこの艦の総指揮者になったんだよ。俺の好きな破壊も思う存分出来るようになったからシグマ様々だぜ』

「………」

元イレギュラーハンターでありながら、イレギュラー同然の思考を隠そうともしないアリゲイツにエックスの表情は険しくなる。

『俺の所への最短ルートを教えてやる。正義の味方のお前は当然来るよな?』

突如甲板の一部が開いたので、どうやらここが最短ルートへの入り口のようだ。

罠の可能性もなくはないが、エックスに逃げると言う選択肢はない。

「行ってやるさ」

入り口に飛び込んでオイルに満ちた部屋に着地する。

「オイル…?…水の代わりか?確かに奴は水中戦も出来るようになっているが………アリゲイツ…何処にいる!?」

部屋に満ちているオイルに疑問符を浮かべながらもエックスは周囲を見渡す。

「威勢がいいなエックス。だが、俺は気付いてるぜ?お前が…お得意のバスターを使ってないことをな!!」

「なっ!?(しまった!このオイルは接近に気付かせないためか!!)」

オイルの中から飛び出してきたアリゲイツはエックスのボディに噛み付いた。

「バスターが壊れてるのに飛び込んでくるとは馬鹿な奴だ。丸腰同然じゃねえか…自殺願望でもあるのかお前?」

「ぐっ!!放せ!!」

アリゲイツを殴るが、頑強な装甲を持つアリゲイツにはびくともしない。

「まあ、安心しな。手加減はしてやる!!ジワジワと痛め付けて殺すためにな!!」

エックスを投げ飛ばしてオイルの中に沈ませるとアリゲイツもオイルの中に潜った。

「くそ…(バスターが使えればあいつに有効打を打てそうなストライクチェーンやバブルスプラッシュが使えるんだが…)」

「スピンホイール!!」

回転しながら迫ってくる円盤状のノコギリがエックスに迫る。

壁蹴りを駆使してかわそうにも地形を這う能力を持つためにエックスの背中に傷をつける。

「ぐわあっ!!」

「そぉーれぇ!!捕まえたあ!!」

落下していくエックスに噛み付くアリゲイツ。

本来の防御力なら大ダメージは逃れられなかったかもしれないが、今のエックスにはボディパーツの恩恵があるためにダメージは小さい。

「中々固えな!!そうでないと潰しがいがないぜ!!」

バスターが使えないエックスに連続攻撃を仕掛けるアリゲイツ。

このままではダメージが蓄積し、倒されてしまうのは時間の問題だ。

「(バスターが使えれば…)」

いくらゼロへの疑念が無くなったとしても心の傷はそう簡単には癒えない。

しかしそんなエックスの背を押してくれるのは何時も彼女達だった。

『行くよ!!エックス!!』

『構えろ!!』

「この感覚は…!!」

3人で出来る合体攻撃が出来ないか試行錯誤していた時…初めてクロスチャージショットを放った時の感覚を思い出した。

エックスのアームパーツが変化して両腕にエネルギーがチャージされる。

「バスターに変形した!?使えないわけでは無かったようだが、それだけで形勢逆転は……!?」

アリゲイツのエネルギー感知器に異常が無ければだが、エックスの両腕にエネルギーが同時にチャージされていると言う普通ならばあり得ない状態となっていた。

「このパーツは…そうか…ゼロとルインが俺に力を貸してくれているんだ…行くぞアリゲイツ!!これが…このアームパーツの…ダブルチャージショットだ!!」

両腕のバスターから放たれたチャージショットはまるで意思を持つかのようにアリゲイツに向かっていく。

「ダブルチャージショットだと!?エックスにそんな機能があるなんて聞いてねえぞ!?」

元々評価が低かったB級時代でもチャージショットの火力はシグマは愚か、エックスを見下していたペンギーゴからも評価されていたエックスである。

そんなエックスの最大火力が2発同時に放たれたことにはアリゲイツも驚愕を隠せない。

ダブルチャージショットをまともに受けたアリゲイツは壁ごと消し飛んだ。

アリゲイツのDNAデータを回収したエックスはこの艦の搭乗員が逃げ出しているのを見て、アリゲイツの人望の無さを知った。

「アリゲイツの仇を取ろうともせずに逃げ出すか…力による結束の脆さが浮き彫りになったな…俺の結束は大丈夫だ…ルインが俺に思い出させてくれたから…ありがとうルイン…」

あの彼女はもしかしたら自分の弱さが生んだ幻影なのかもしれないが、それでもエックスは眠っている彼女に感謝した。

「さて、せっかく彼らが残してくれたんだ…この艦からシグマの本拠地のデータを暴き出す!!」

最後のボスを倒したエックスは残された艦の司令室に向かい、データを探し始めるのであった。 
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