この素晴らしい世界に文明の鉄槌を! -PUNISHMENT BY SHOVEL ON THIS WONDERFUL WORLD!-
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二丁
街道を、一人の男の子が歩いている。
年は五歳くらいだろうか。
その顔は諦めに染まっていた。
男の子が歩く街道の傍らに、少女が座っていた。
「ああ。いたいた。ここまで歩いた甲斐があったよ」
男の子が少女に声をかけた。
少女の肌は人のような肌色だが、所々に樹木が絡み付いて、否、樹木と化していた。
「あなた…だれ…?」
「俺?名乗るほどの者じゃないよ」
「そう…なの?」
「うん。そうだよ。それで君は『安楽少女』で合ってるかい?」
「貴方たちは…私達を、そう、呼ぶ」
「うん。そうか。なら安心だ」
男の子が、少女の隣に腰をおろした。
「なに、してるの?」
「ん?ここで寝ようと思ったんだ。だから」
男の子は続けた。
「君の木の実をくれよ」
少女が、『安楽少女』が目を見開いた。
「ドぎついのを頼む。さ、俺を食ってくれ」
安楽少女は男の子の襟首を掴み上げ……
「ふざけんな!テメェまだ子供だろうが!」
ひっぱたいた。
数年後
「ただいまリーア」
「おそかったわね、にゃーちゃん」
「今日は一撃熊が大量でな。肝を売った金で食材を買い足してきた」
「そ、ならいいわ」
帰って来たにゃんにゃんを出迎えたのは、安楽少女だった。
「お風呂わいてる?」
「沸かしておいたわ」
「ありがと」
「暇だったのよ」
「はいはい」
なお軽めのツンデレである。
「あ、爆発ポーションを頼みたいんだけど」
「いいわよ、やったげる。だからさっさと風呂に入ってきなさいな」
にゃんにゃんがリーアに十本の試験管を渡して、風呂に向かった。
「さて、やりますか」
リーアは渡された爆発ポーションを全て煽った。
「うえぇ~やっぱ変なあじ…」
と顔をしかめた物のそれだけだ。
体内でポーションが爆発する事もない。
リーアは微動だにせず、自身の体内に意識を向ける。
十数分ほどそうしていると、リーアの指先がプクッと膨らみ始めた。
それは次第に大きくなり、椿の実程の大きさになった。
「全部濃縮しちゃったけど…いいわよね…」
爆発ポーション十本分が濃縮された椿の実サイズの『バクハツブツ』が出来上がった。
リーアは自身の指から感覚を遮断し、栄養分を断った。
その指はたちまちしぼみ、紐のように細くカラカラになった。
そしてその指を掌からプチっと千切った。
「うん。いい出来ね。さすが私」
リーアがバースト・フルーツの出来を自画自賛していると、風呂場からにゃんにゃんが出てきた。
「あ、できた?」
「ええ。完璧よ。十本全部濃縮したけど良かったかしら?」
「うん。そのつもりだったよ」
するとリーアはニヤリと笑った。
「以心伝心とはこの事よね。私達の仲だものね?」
「やっ、やめろよ…」
顔を赤くしてプイッとそっぽを向くにゃんにゃんが面白かったのか、リーアはころころと笑う。
「さ、ご飯の用意するわよ、にゃーちゃん」
「おう」
モンスターとヒト。
相容れないなど誰が決めたか、そう言わんばかりに二人は互いを信頼していた。
はたしてそれは『愛』か。
それともただの『共依存』か。
それを問う者は、いない。
後書き
リーア
安楽少女
両親が蒸発し、絶望し自殺しようとしたにゃんにゃんを押し止めた。
なおツンデレ。
にゃんにゃんと同棲している。
物凄く頭がいい(長寿)上、植物と話せる。
体のサイズは栄養次第でどこまでも、掌サイズまで可能。
かけられた液体を実に濃縮する力がある。
ハームフルーツ
リーアが造る木の実。ほぼ毒だが、作ろうと思えばポーションを濃縮したものも創れる。
キュア・フルーツ
通常のポーションを濃縮した物で一粒で大抵回復する。
バースト・フルーツ
爆発ポーションを濃縮した物。
一粒は椿の実ほどで、爆発ポーション十本分が濃縮されている。炸裂魔法数発と同等。
バーサク・フルーツ
安楽少女本来のフルーツに手を加えた物で、痛覚遮断、神経興奮、好戦化等の力がある。
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