ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第7話:Prototype Weapons Plant
前書き
イレハンでは最初のボス扱いですが、オリジナルでもノーマルエックスで簡単に倒せるくらいに弱い。
昼食を摂ったルインとエックスは現在、元第4陸上部隊隊長のバーニン・ナウマンダーが占拠した工場地帯に潜入していた。
そして施設への潜入経路を探している途中でふと気になっていたことがあり、ルインに尋ねることにした。
エイリアは臨時オペレーターとして配属されたばかりなので、敵対しているハンターの情報はルインの方が知っているかもしれない。
「ルイン、ここに元特A級ハンターのバーニン・ナウマンダーがいるらしいけど、彼は一体どういうレプリロイドなんだ?」
第17精鋭部隊は他の部隊と連携を取ることも多いが、第4陸上部隊は陸上…特に砂漠での戦闘を得意とするためかあまり部隊同士での関わりが少ない。
「え?私も噂くらいしか聞いたことないんだよね。でもあまりいい噂は聞かなかったかな…バーニン・ナウマンダー…元第4陸上部隊隊長で、性格は粗暴。部隊でも嫌われ者で、シグマ側についた時、彼に付き従った部下はいなかったらしいよ」
バーニン・ナウマンダー
ナウマン象型レプリロイドの第4陸上部隊隊長。
動きこそ見た目に違わず鈍重だが、圧倒的な火力を有し、その武力を以って第4陸上部隊を束ねていた。
シグマの反乱に加わったのはその実力を今まで以上に試す機会だと判断したためであり、反乱に加担してからは工場地帯を大規模な兵器生産工場にしようとした。
トボけた外見とは裏腹に、自分より力の劣る相手は徹底的に潰すという残虐な面を持っているため部下にも嫌われており、反乱の際には誰1人として共に反乱へ加わることはなかったと言う。
「まずはここを反乱軍から解放しよう。相手は腐っても特A級ハンターだから油断禁物だよエックス」
「ああ」
そしてルインとエックスが同時に施設を駆ける。
守備隊らしきメカニロイドが襲い掛かるが、エックスとルインのバスターのチャージショットにより撃墜された。
2人はナウマンダーがいる中枢部を目指してひたすらに駆ける。
「大分進んだね…にしても妙だね…ここ一応、占拠されているはずなのにあまりにもメカニロイドとかの防衛戦力が少ない。」
一応緑色で盾と鎖付き鉄球を備えたレプリロイドもいるが、ハッキリ言って防衛戦力があまりにも少なすぎる。
「まさかナウマンダーが私達を誘っているの…?」
どうにも違和感が拭えない。
中枢部に近付いているにも関わらず、どうにも守備隊の数が少ない。
しかしその分比較的性能の高いレプリロイドとメカニロイドが各エリアを守備しているために突破は少し苦労するが、それでもこの数の少なさは一体何なんだろうか?
「一体どういうことなんだろうね…ナウマンダーは何を企んでるのか…ねえ、エックス…あれ?エックス?」
ルインは後ろに来ているはずのエックスの姿がいつの間にかないことに目を見開いた。
その頃、エックスは何かに誘われる感覚のままルインのいる場所とは別の場所に向かい、辿り着いた先には白と青で縁取られた円盤状の機械が場違いに置かれていた。
一瞬敵が仕掛けた罠かと疑ったが、エックスは慎重にそれに手を伸ばした。
それを感知したのか、円盤はふわりと浮かび上がり、やはり罠かと身構えた時、浮かび上がった円盤の下で白衣を着た老人のホログラムが映し出された。
恰幅がよく、白い髭を豊かに蓄えた人物だった。
『わしはトーマス・ライト。このメッセージをエックス…お前の未来に託す…』
「ライト…?俺は…俺はこの人を知っている……」
エックスの深い記憶を刺激する電子音声に、彼は知らず知らずのうちにバスターを下ろしていた。
「エックス!!敵地で1人だと危ないよ…って…こ、この人は…」
エックスを追ってきたルインもこのホログラムとして出ている人物に驚いた。
僅かに残っている記憶が、彼の正体を引き出す。
トーマス・ライト
数多くロボットを造り、エックスを造った研究者。
その間、ホログラムの老人は真摯な目で言葉を続ける。
『このカプセルに辿り着いたと言うことは…既に逃れられぬ戦いの中にあるのだろう。エックス…』
老人の言葉の意味を理解する前にエックスは彼の言葉に聞き入っていた。
彼を前にすると、何か大切な記憶を忘れてしまったもどかしさに襲われる。
『わしが遺した4つの力を…お前が正しく使ってくれると信じているよ…。ここに遺したのはフットパーツじゃ。カプセルに入りパーツを装着すれば…お前の脚部に内臓されたダッシュバーニアの機能が開放され、ダッシュによる高速移動が可能になる』
老人の代わりにしばらくフットパーツのビジョンが映し出された。
それは白と青を基調にしたフットパーツである。
『この力で未来を正しい方向に導いておくれ…。わしのエックスよ…』
「………」
老人の言葉にエックスは何も言えない。
何か彼に言わなければならない言葉があるはずなのに、何故か口から言葉が出てこない。
『そして…』
「え…?」
老人の視線がルインに向けられる。
『ルイン…だったね。君にはお礼をしなくてはいけない…』
「お、お礼?な、何をですか?」
少なくとも初対面である自分は彼に礼をされるようなことはしていないはずだ。
『私は、与えることが出来なかった。喜びも、穏やかな時も…それを君は代わりに与えてくれた…ありがとう。君には感謝してもしきれない。本来なら礼に君のパワーアップパーツを造りたいのだが、残念ながら…私には君の身体の仕組みが分からない。故に君のパワーアップパーツを造ることが出来ないのだ。申し訳ない』
「い、いえ…私は別に今の状態でも満足してますから」
『だが…君の中に眠る力を引き出すことは出来る』
「え?」
ライト『このカプセルに入ることで、君の力を引き出せる。君には複数のアーマーを換装することであらゆる局面に対応出来る力がある。このカプセルで引き出せるのは1つだけじゃが…どうする?』
エックスは老人とルインを交互に見遣り、その言葉にしばらく考えたルインは頷いた。
「お願いします。」
『分かった。では、まずエックス…カプセルに入りなさい』
一瞬の動揺の後にエックスは足を踏み出してカプセルの中に入ると、エネルギーが充填されていくと同時に温かいものに抱かれるような感覚が体中に満ちてゆく。
自分の足を見ると何時も見ていた青のフットパーツではなく、カプセルで見たものと同じになっていた。
今までとは格段に違う出力であるにも関わらずに以前から自分のもののように違和感が無い。
「次は私だね…お願いします」
今度はルインがカプセルの中に入るとエックス同様にエネルギーが充填されていくと同時に温かいものに抱かれるような感覚が体中に満ちてゆく。
形状が変わっていくアーマーは今までの朱を基調としたアーマーではなく緑を基調としたアーマーである。
ルイン・HXアーマー
頭部と背部に巨大なバーニアを持ち、ダブルセイバーを装備した高い機動力を誇る形態。
まるで最初からこの姿だったのかと思うくらいにアーマーの情報が電子頭脳にデータがインプットされていく。
「これが、私の中に眠っていた力なの…?」
全身から満ち溢れんばかりのエネルギーにルインは拳を握り締めると、隣にいるエックスに向き直る。
「行こうエックス」
「ああ」
ルインは頭部と背部のバーニアを展開し、エアダッシュとホバーを駆使し、エックスはフットパーツによって会得したダッシュで一気に中枢に向かう。
強化された機動力で進んでいくエックス達は徐々に中枢部へと近付いていき、奥に行けば行くほど温度は高くなっていく。
現在の温度は人間には立ち入ることの出来ない場所であり、エックスとルインは中枢一歩手前に到達した。
「いよいよだね」
「ああ」
奥へと進むと中枢部には発電所を統括するコンピューターが設置されており、そこにはこの施設を占拠したナウマン象型レプリロイドであり、元特A級ハンターのバーニン・ナウマンダーがいた。
「ふん、どうしてシグマめ…お前みたいなB級やこんな小娘の相手をしろなどと…」
「シグマはイレギュラーだ。そしてお前も…!!」
「確かにシグマはおかしな奴だ。エックス…お前がレプリロイドの未来だとか言ってな」
「…………」
「ふはは!!では未来を踏み潰すとするか!!」
「バーニン・ナウマンダー、あなたをイレギュラー認定し、処分します!!」
新アーマーの装備であるダブルセイバーを抜き放ち、その切っ先をナウマンダーに向ける。
「おらよっと!!」
巨体に似合わぬ身軽な動きでナウマンダーが大きく跳躍してくるが、エックスは即座にダッシュで攻撃範囲から抜け出す。
ルインもバーニアを展開しエアダッシュで上空に逃げると、ナウマンダーが床に着地するのと同時に凄まじい振動が発生。
「ぐっ!?」
あまりの振動にエックスが体勢を崩し、ナウマンダーはそれを見計らって右腕のバスターから高温の火炎をエックスに向けて放射する。
ホバーで滞空していたルインは一気に急降下して、エックスの腕を掴むと再び空中へと避難する。
そして火柱が消えたのを見計らって床に着地した。
「ありがとうルイン。助かったよ」
「いいってこと。それにしてもあの巨体を活かした攻撃は厄介だね…」
まともに喰らったらナウマンダーの重量も相まって確実にスクラップだ。
火炎で逃げ場を塞いでプレスによる戦法はとてもシンプルだが鈍重による機動力の低さを補うことが出来るために効果的だ。
「どうする?」
「手がないわけじゃないよ。エックス、バスターのチャージをしておいて…」
「分かった…」
ルインの言葉を信じてバスターのチャージを始めるエックス。
「どうした?もう終わりか?ならとっとと終わらせてやる。その綺麗な顔がぐしゃぐしゃになるのが楽しみだぜ」
残虐な笑みを浮かべながら言うナウマンダーにルインは肩を竦めながら口を開いた。
「そうかな?君が勝利を確信して勝手に盛り上がるのはいいけど、こっちとしては期待外れだよ」
「何だと?」
「動きは鈍いし、ご自慢の火炎もその程度、よく特A級になれたよねえ?もしかして特A級になれたのは試験の時に運が良かっただけじゃないの豚もどき君?あ、ナウマン象もどきか」
「てめえ…!!」
馬鹿にされ、体を大きく震わせるナウマンダーにルインは後一押しだと確信した。
「君よりペンギン君…ペンギーゴの方がずっと強いよ…」
ルインはセイバーのチャージをしながらナウマンダーにチャージ攻撃を放つタイミングを伺う。
「そうか…じゃあ、お前に教えてやるよ。俺とペンギーゴのどちらが強いのかをな!!」
犬猿の仲であるペンギーゴと比べられ、頭に血が上り、冷静な判断が出来なくなったナウマンダーは大きく跳躍すると、ルインに襲い掛かる。
ナウマンダーがルインに落下する直前に勢いよくセイバーを振るう。
「プラズマビット!!」
「ぐおっ!?」
速度は遅いが追尾性能を持つ電撃弾を放ち、完全に不意を突かれたナウマンダーは直撃を受けてしまい、感電によって動きが硬直する。
その隙を突いて、セイバーの衝撃波を繰り出すとナウマンダーの鼻を斬り落とした。
「エックス!!」
ルインが振り返ると、既にエネルギーのチャージを終えているエックスがバスターを構えていた。
「これで終わりだ!!」
エックスのバスターから放たれたチャージショットがナウマンダーの頭部に炸裂した。
チャージショットはナウマンダーの頭部を粉砕し、頭部を失ったナウマンダーはヨロヨロと後退すると仰向けに倒れて機能停止した。
「勝った…」
安堵の息を吐きながらセイバーを下ろすルインにエックスが歩み寄る。
「ルイン、大丈夫か…?」
「うん…ナウマンダーが思っていたより単細胞で助かったよ。」
ルインはセイバーを握り締め、セイバーで機能停止したナウマンダーの腹部を斬り裂いて内部機関を露出させた。
こういう剥ぎ取るような行為には抵抗を感じるが現在は非常事態のために仕方ないだろう。
「ルイン…何を…?」
既に動かぬナウマンダーの腹部を斬り裂いたルインにエックスは複雑そうな表情で尋ねる。
ルインはナウマンダーの無駄に膨らんだ腹部からDNAデータを採取する。
一時期ケインの元にいたルインはエックスの能力を知っているための行動だ。
武器可変システム。
エックスにはバスター内の端子にDNAデータを組み込むことで特殊攻撃を会得することが出来るのだ。
「エックス、バスターを見せてくれる?エックスのバスターにナウマンダーのDNAデータを組み込むから」
「な、何をする気なんだ?」
自分のバスターにナウマンダーのDNAデータを組み込もうとするルインにエックスは戸惑う。
「エックスのバスターの端子にナウマンダーのDNAデータを組み込んでバスター内の予備の武器チップにインストールすることでナウマンダーの火炎攻撃が可能になるはずなの…だから」
「DNAデータを組み込むって…出来たのか?俺のバスターにそんな機能があるなんて初めて聞いたぞ?」
「私もケイン博士に聞いただけだからね…多分理由としては大した敵も存在いなかった当時に教える必要はないと思ってたんだよ…」
ルインはDNAデータをエックスのバスター端子に組み込んでいく。
自分の武器にも組み込もうとは考えたものの、容量の問題で不可能なのだ。
ルインが老人に引き出された新たな能力であるアーマー換装システムによって更に拍車をかかっているのだ。
「出来たよ。エックス、バスターにナウマンダーのデータを組み込んだからナウマンダーの火炎攻撃…ファイアウェーブが使えるようになったはずだよ」
エックスはバスターに意識を集中させるとボディの色が青から赤へ変わっていき、バスターを撃つのと同じ感覚でしてみたら何時ものショットではなくナウマンダーの火炎放射が放たれた。
「リーチは短いから近接戦闘で役に立ちそうだね。これでエックスの戦略の幅が広がる…」
「ルイン…」
バスターから放射される火炎放射を複雑そうに見つめながらエックスは口を開いた。
「何?」
「これからの戦いのために強化が必要なのは分かるんだけど…これは…」
こういう死者から剥ぎ取るような行為にエックスは気が乗らないようだ。
確かにナウマンダーは紛れも無くイレギュラーで、それには弁護のしようがないし自分もしようとも思わない。
しかしそれでも死者から剥ぎ取る行為にエックスは抵抗を感じるのだ。
「エックスは優しいね……」
渋るエックスに向けたルインの目は優しい。
エックスの気持ちは痛いほど分かる。
いくら非常事態とは言え死者から剥ぎ取るような行為は自分もしたくはない。
「でもごめんね。私もエックスにそんなことさせたくないんだけど…私はエックスみたいに高い拡張性を持たないし、武器可変システムが使えないから…」
「…………」
ルインが自嘲しながらの言葉を聞いて、それはもし彼女が使えるなら彼女が使うというのだろうか?
「今の私じゃ、もっと無理なんだよね…アーマー換装が出来るようになって残りの拡張領域を失ったから」
「ルイン…」
それは仕方ないと思う。
ルインは自分と違って優秀な特A級ハンターだ。
戦闘型レプリロイドはランクによって強化の度合いが違って来る。
特A級の彼女は高水準のパーツで強化されており、それにアーマーを換装する能力を得たことで特殊武器を組み込む容量などないことは分かっている。
「(俺はいつまで彼女に甘えるつもりなんだ…)」
いくら優秀な彼女にだって限界がある。
自分が弱いせいでいつも彼女は傷を負う。
弱いままでは駄目なんだ。
今の自分では彼女を守るどころか危険に曝すだけでせめめて自分の身を守れるくらいには強くならなくてはならない。
生き残り、そして力なき者達の剣となり盾となるために。
「ごめん…俺は甘ったれていた。いつまでも君に頼っていてはいられないのに……」
「…………」
「ルイン、ありがとう…この武器。使わせてもらうよ」
「うん…」
「(俺はもっと強くなる…少しでも彼女の負担を減らせるように…少しでも強くなるんだ。)」
エックスは新たな誓いを胸に施設を後にするのであった。
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