同行二人
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第二章
「孫達には土産を頼まれた」
「四国のですね」
「ああ、そうした意味でもな」
「お遍路をされますね」
「そうしてくる、ではな」
「それでは」
こうしてだった、富田はお遍路の旅に出た、その間だった。
彼は四国を歩いて巡っていたがその際によく宿や寺の者に言われていた。
「こうしてお遍路が出来るのも」
「大師さんがいてこそ」
「はい」
そうだとだ、今彼は宿の少し年配の仲居に言われていた。
「そうですよ」
「大師さんが護ってくれるからか」
「出来ます」
そうだというのだ。
「まさに、それにうちの宿にもです」
「うちの?」
「はい、この宿にもです」
こう富田に話すのだった。彼に食事を出しながら。
「弘法大師様が来られたんですよ」
「それ本当か」
「二十年位前に」
それ位前にというのだ。
「来てくれたんですよ」
「それで本当の話か」
「私がこの目で見ました」
こう答えた仲居だった。
「まだ若い時に」
「あの人が来られたんか」
「それで一泊されました」
そうしたというのだ。
「とても穏やかで徳のある感じですよ」
「その人本当に大師さんか」
「はい」
確信を以てだ、仲居は彼に答えた。
「左様です」
「別の人じゃないんか」
「間違いないですよ、この宿の皆が言ってますよ」
「大師さんが来られたってか」
「はい、あの人こそが」
「信じられんがのう」
「それが本当にですよ」
仲居はあくまで言うのだった。
「あの方が」
「大師さんもお遍路をされてるんか」
「そうです」
また言い切った仲居だった。
「うちの宿にはその前から来られたこともあったそうで」
「二十年位前に来てか」102
「長い歴史の中で何度か」
「この宿に泊まられてるんか」
「そうです、あとこの四国にはです」
「ああ、大師さんに縁のある場所が多いのう」
「四国の生まれですから」
その為にというのだ。
「温泉なり何なりが」
「それはわしも知ってるわ」
「凄い方です」
空海、彼はというのだ。
「これ以上はないまでの」
「温泉を見付けて法力もかなりでのう」
「学識も凄く」
「あちらでも評判だったとかな」
遣唐使として唐に入りそこでも絶賛された、空海の学識と頭の冴えはそこまでのものであったのだ。
「しかも筆もな」
「とかくあらゆることに秀でた方で」
「日本で最初の天才と言われているな」
「そうです、そしてです」
「今もか」
「はい、お遍路の方々をお護りしてくれて」
そのうえでというのだ。
「お遍路にも回られているのですよ」
「それが信じられないんだがな」
富田はここでも自分の考えを述べた。
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