適量
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第二章
「ドイツ語の歌劇があってもいいのではないかな」
「ドイツ語のといいますと」
「ジングシュピールですか」
「あれのことですか」
「違う、ドイツ語の歌劇だよ」
皇帝は廷臣達に気さくに笑って話した。
「まさにね」
「ドイツ語のですか」
「イタリア語でなく」
「我々のこの言語で」
「それがあるべきですか」
「そうも思うがね。どうかな」
こう言ったのだった。
「このことは」
「それはどうも」
「幾ら何でも」
「歌劇はイタリア語です」
「このことは変わらないかと」
「果たしてそうかな。試してみないとわからないこともある、それに」
皇帝の目が光った、そうして宮廷達に笑みの中で光るその目でさらに語った。
「丁度ウィーンに今モーツァルト君が来ているじゃないか」
「何でもザルツブルグの大司教と揉めているとか」
「彼の後援者と」
「もうその関係の修復は無理の様ですが」
「あの神童がいますか」
「彼のことは覚えているよ」
ウィーンの宮廷に来た時をだ、この時は皇帝の妹に大きくなったらお嫁さんにしてあげると言って笑いを誘ってもいる。
「その彼に頼もうか」
「そうされてですか
「そのうえで、ですか」
「彼に作曲をさせて」
「ドイツ語の歌劇を作曲させますか」
「そうしてもらうとしよう」
こうしてだった、後援者と衝突しウィーンに残留しそうなモーツァルトに皇帝から直接声がかかった、ドイツ語での歌劇を作って欲しいと。
ここで彼は面白い脚本にも出会った、そしてその脚本家とも話がまとまり歌手もこれはという人物が揃った。それで友人達に満面の笑顔で言った。
「ここまで揃った、まさにね」
「天啓と言うんだね」
「神が君とドイツ語の歌劇に与えてくれた」
「それだというんだね」
「そう、まさに天啓だよ」
こう言ってだ、そのうえでだった。
モーツァルトは満面の笑みで作曲をはじめた、皇帝はこのことを聞いてまた宮廷にいる者達に対して語った。
「さて、後はね」
「作曲されてですか」
「上演を待つ」
「それだけですか」
「勿論朕も観る」
その歌劇をというのだ。
「どの様なものかな、実に楽しみだ」
「モーツァルト氏の音楽は高名ですが」
「ですがそれでもです」
「幾ら彼でもドイツ語の過激は無理では」
「イタリア語の歌劇では成功していますが」
「イドメネオもこれまでの作品もよかったです」
宮廷の者達もモーツァルトの音楽自体は認めていた、まさにミューズの子と呼ばれるまでのものはあるとだ。天才という言葉は彼の為にあるとだ。
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