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人理を守れ、エミヤさん!

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テロリストは斯く語りき





「忘れてはいけないのは、俺達はテロリストだということだ」

 保存食の干し肉を喰らいながら言った俺に、アルトリアは嫌そうに顔を顰め、オルタはさもありなんと頷き同意を示す。
 こちらも神妙に頷いたマシュの傍で、ネロが怪訝そうに首を傾げた。

「シェロよ、『てろ』とはなんだ?」
「ん? ……そういえばネロの時代にテロという呼び方はなかったんだったか」

 ネロは一世紀の皇帝だ。聖杯の力の影響か、彼女が過去の時代の存在だと、意識しないと忘れてしまっている。
 しかし、ネロが現代の人間に存在を置換されたとしても、ネロが現代の常識を網羅するわけではない。そのことを理解していなければならなかった。

「テロは正確にはテロリズムといってな――ネロにはクリュプテイアの反対と言えば伝わるか?」
「む……」

 クリュプテイアとは、古代ギリシアやスパルタの秘密勤務と称される制度である。国家監督官が派遣した若者が田園地方を巡回し、奴隷の反乱防止のため、危険視される者を夜間に殺害することを職務とした。
 転じてそれは奴隷側が反発し、体制に歯向かう活動を生み出した。――テロリズムである。
 テロリズムとは政権の奪取や政権の攪乱、破壊、政治的外交的優位の確立、報復、活動資金の獲得、自己宣伝などを達成するために暗殺や暴行、破壊活動などの手段を行使することである。
 そしてテロリストとは、それらの手段を政治的に行使する者のことだ。

「……むぅ。言いたくはないが、雅さに欠けるな」
「テロはテロだからな。雅もへったくれもない」

 ネロにとって最も身近なテロは、ローマ帝政の礎を築いた男――衰退の一途を辿っていたローマを、「強者」に盛り返したローマ最大の英雄ガイウス・ユリウス・カエサルの暗殺事件であろう。あれもまた、歴史的観点から見れば最大級のテロと言える。

「大勢は既に決している。ローマは滅び、残党は僅かに七人。特異点は磐石と言ってもよく、俺達はそれに抗う少数武装勢力でしかないのが現状だ」

 後は、ネロ・クラウディウスの死を以てして、人類史はめでたく終了だ。
 ネロが死なずとも、六日か七日でローマの滅びは確定したものとされ、やはり人類史は焼却完了となる。
 正直に言おう。

詰み(・・)だ。正攻法では何をしてもこの大勢は覆らん。敵サーヴァントを幾ら倒しても意味がない。抑止力によってカウンター召喚されたらしいサーヴァントもいるというのは朗報だったが、これも全滅済み。戦力の拡充はネロの召喚するサーヴァント頼みと来た」
「……言いづらいのですが、逆転の芽はあるのでしょうか?」

 肩を竦めた俺に、マシュが深刻そうに眉根を寄せて発言した。続いてアルトリアが言う。王としての観点で、だ。

「控えめに言って戦況は絶望的ですね。光明が全く見えてきません。ランサーの加入は心強くはありますが、正道に沿って行けばどうしようもないというのが私の見解です」

 そうだろうな、と俺は頷く。敵にこちらを攻める必要はない。一週間ほど防御に徹していれば、自動的に勝利は確定される。

 敵には暗殺された経験という、本来はあり得ない経歴を持つカエサルがいるのだ。人類最大クラスの名将が生前と同じ轍をむざむざ踏むわけもなく、そういった方面への警戒も強いだろう。
 だから俺は「詰み」だと言ったのだ。
 正道も邪道も、戦略戦術も、どの視点から見てもこちらの敗北は決まっている。せめて後一週間だけでも早くここに来れていたら、まだ話は変わっていたのだろうが……そんな「たられば」に意味はない。
 流石としか言いようがなかった。カエサルはもう勝利しているのである。戦略的に、戦術的に、国家的に、政治的に。故にダレイオス三世の単独の突出も放っておいた。……否、それは違うか。手綱の握れぬ狂戦士は不要として、放し飼いにされていたのかもしれない。獲物さえ間違わなければ、狂戦士も有用ではある。
 現状俺達はカエサルと戦うことすら出来ないというのが実情であり。まあ堅実な指揮官、現実的な王、正道の英雄は打つ手なしと言うだろう。その上で立ち向かうからこそ英雄と言われるのだろうが……。生憎と俺はそんな上等なものではない。

「だから、な。言ったろう。俺達はテロリストだってな」
「鎮圧されるだけの暴徒、ということですか」
「端的な評価をありがとうオルタ。ずばりその通りだよ」

 冷徹なまでの客観視が必要だ。オルタは――いや騎士王はそれができる王だ。
 杯を人数分出す。カルデアに通信が繋がった時にわざわざ送ってもらっていたのだ。それぞれマシュ、アルトリア、オルタ、ネロのグラスに手製の甘酒を注いでいく。ノンアルコールだが、味わいには自信がある一品だ。王様方には物足りないだろうがマシュには丁度いいだろう。無論、酒もある。

 まだこの場にはいない、ランサーのグラスにこれは度入りの酒を注ぐ。自分の物にはこっそりと渾身の一作、最も馴染み深い日本酒を注ぎ、一気に呷った。

 空になったグラスの底を暫し眺め、俺は深く深呼吸をした。そして、言う。全てを賭けた、一か八かの大博打。
 胃の腑に熱い液体が流れてくる。少しすると、腹の底から熱が回ってきた。いい酒だなんて自画自賛し、俺は透き通る思考のまま、心の奥底に酒ごと何かの感情を押し込んで……冷徹な眼差しで告げた。

「――自爆テロを仕掛ける」

 それは最悪の戦法。
 アレキサンダーは言ったそうだ。カルデアに目端の効く者がいたならブリタニアに現れるはずだ、と。
 幼い征服王がそう言って、実際それは正解だった。であれば、あのカエサルが同様の答えに至っていないわけがない。
 ブリタニアに敵がいる。仮にダレイオス三世を退けるようなら、それは一定の脅威足り得るとカエサルも認めるはずだ。ならば、こちらはある程度の知恵を持ち、ダレイオス三世を返り討ちにする程度に力があると考えるだろう。相手があのユリウス・カエサルだ、確実なことなんて何もないが……。
 構わない。読まれていい。こちらの勝利条件はカエサルに勝つ(・・・・・・・)ことではないのだ。

 ならば、戦うことはない。

 戦えないなら戦わない。勝てない相手に、無理して勝ちにいくことはないのだ。
 無視できないほど巨大な存在。
 恒星の如く煌めく伝説の名将。
 無視し難い、だからこそ(・・・・・)――無視する(・・・・)

「――失敬。エレガントに言い直させてくれ」

 正気を疑うような四対の目に、俺は微笑みながら訂正する。

「進退窮まった。斯くなる上は我ら火の玉となり、玉砕覚悟で敵本丸に打ち掛かる。万歳、神風特攻!」







 ランサー、クー・フーリンは、ダレイオス三世を完膚なきまでに粉砕し、猛る血潮を鎮めながら主人のもとへ帰還した。
 まず戦功一つ。それなりの働きだったはずだ。労いの言葉を期待しているわけではない。ただこれからの采配に大いに期待を寄せていた。
 何せ、今回のマスターは自分のことをよく分かっている。無理難題を吹っ掛けてくるはずだ。そしてそれをこなしてこその英雄であるとクー・フーリンは考えている。このマスターは――どんな命令を出すのか、実に楽しみだった。

 そうして主人達の待つ仮初めの拠点、召喚サークルの設置された所へ戻ると、クー・フーリンは思わず眉根を寄せた。
 味方のサーヴァント達、そしてローマ皇帝が揃って難しい顔をしていたのだ。唯一マスターだけが平然としたふうに酒を呷っているためか、奇妙な空気が流れている。

 こちらに気づいたのか、マスターが笑いながらグラスを差し出してきた。

「駆けつけ一杯」

 応、と受けとる。これがこのマスター流の労りなのだろう。それを快く受け取って、一気に飲み干し――

「ぶふぉっ?!」

 吹き出した。

「なんじゃこりゃあ!? 何、なんですか?! これは新手の苛めかなんかなんですかねぇ!?」

 喉を焼き、臓腑を燃やす炎の酒。――クー・フーリンの印象は劇物だった。
 先程まで見せつけていた無敵の勇者然とした姿はそこにはない。親しみやすく、身分の別なく付き合える気安いニイちゃんがそこにいた。
 ネロが目を丸くした。あの勇士が、こんな甘く美味でまろやかな甘酒(さけ)を飲んでこんな大袈裟にしているのがおかしかったのだ。

「なんと……かの大英雄ヘラクレスを彷彿とさせたランサーが、下戸だったとは……」
「いや、違うと思うぞ。――すまん。あんたの時代の酒という名の水と、俺の時代の酒は別物だと気がつかなかった」

 言って、マスターはネロの勘違いを正した。大体、ネロが飲んでいたのはノンアルの甘酒である。それにさえも満足感を得ているネロに言えたことではない。
 むべなるかな。ネロとクー・フーリンはほぼ同時代の英雄だが、一世紀のローマの酒はワインが主流で、それに次いでメジャーだったのが蜂蜜酒のアクア・ムルサというもの。言うまでもないが現代の酒の度数と比べると、酒好きからすれば天と地ほどの差がある。士郎からすれば、この時代の酒は濁った水程度。酔う酔わない以前に、酒とも思えない。無論神代の神秘を含んだ酒は別物として考えるが。
 古代の人間であるクー・フーリンとネロにとっては、現代の酒は度数が弱い。甘酒で充分酒として通用するし、そもそもぐでんくでんに酔っ払ったことなどないだろう。
 それが、いきなり現代の日本酒――特に士郎向けに調整してある手製の物を飲んでしまえば、驚いてひっくり返るのも無理はない。

 士郎の隠し持っていた日本酒の瓶に手を伸ばすネロ。士郎は気づくのが遅れ、気づいたアルトリアが制止の声を掛けた時にはネロはらっぱ飲みで日本酒を口にしていた。

「待ちなさい! 貴女にそれは――」
「ぶふぁっ!?」
「……」

 口に含んだものを一気に吹き出して、士郎はそれを頭から浴びてしまって固まった。
 皇帝云々以前に女として見せてはならない醜態を晒したネロは、あわあわと慌てながら弁解した。

「あっ、こ、これはだな……クー・フーリンが吹き出すほどの酒がどんなものか興味があってだな……? 余、余は別に悪くないぞ? いやむしろこんなものを平気な顔で飲んでおるシェロが悪い!!」
「……うん。そうだね。俺が悪いね」

 顔を赤くしているネロは、酒を飲んだことがないうぶな少女のようだった。それになんとも言えない気分で相槌を打ち、士郎は布を投影して顔を拭いた。
 自慢の酒を吹かれてこんなもの呼ばわりされて立腹しかけていたが、しかしクー・フーリンがなんとか自分の分を飲み干したことで機嫌を直した。

「ぷはぁっ。……最初は驚いたが、この火みたく体の中で燃える感覚は悪くねぇな、マスター」
「!! 分かるかランサー!?」
「お、おう……」
「やっぱり違いが分かる男なんだなぁクー・フーリンは! クー・フーリン『は』!」
「むっ! まるで余だけが違いも分からぬ小娘のように言いおって! よかろう、それはローマに対する重大な挑戦と受け取った! これに見よ我が勇姿! こんなもの容易く飲み干してくれる!」
「ああっ、止しなさいネロ! 貴女が酔ったら色々詰みます! シロウも止めてください!」

 ふふん、とアルトリアに羽交い締めにされたネロに得意気な笑みを向け、士郎はグラスに注いだ日本酒をこれみよがしに飲み干した。ぐぬぬ、と呻くネロの視線こそ最高の肴とでも言うかのような表情だった。
 とまあ、戯れ合いはここまでとして。うがああ! と暴れるネロをアルトリアとオルタ、マシュが三人で完全に身動きを封じている傍ら、士郎はクー・フーリンに向けて労いの言葉をかけた。

「ご苦労さん。流石はアルスター最強の戦士は物が違う。一つの神話で頂点に君臨する武勇は伊達じゃないな」
「誉めろ誉めろ。オレは誉められて伸びる性質なんでね。誉めた分だけ働くぜ、オレはよ」

 ちなみにアーサー王伝説も広義の意味で言えばケルト神話に属している。
 なのにクー・フーリンは知名度が低くアーサー王伝説だけが有名なのは……まあ今はどうでもいい。

「……ランサー。俺は決めたよ。『死ぬなら前のめり』だな」
「へぇ、腹が決まったか。良い面だぜマスター。男なら、死ぬと分かっていても突っ込まなきゃならねえ時もある」

 なんでもないように主人の決意を聞き、クー・フーリンは明るく歯を見せて笑い掛けた。
 恐怖の色を呑み、しかしそれに足の竦む恐懦はない。なるほどイイ男だ、オレの次にな、とクー・フーリンは笑った。そんなサーヴァントに苦笑して、その分厚い胸板を拳で叩く。

「特攻だ。敵のど真ん中に突っ込み、敵大将を()る」
「いいねぇ、好きだぜそういう分かりやすいのは。で、もちろんオレに先鋒は任せてもらえるんだよな?」

 当然のように、クー・フーリンは確信していた。主人の敵と一番に矛を交えるのは自分の役割だと。
 だが。信じがたいことに、士郎は首を振った。横に。

「いや。先鋒はない。俺はマシュとアルトリア、オルタとネロともう一人で敵の大将を討つ。あんたの席はない」
「……は?」

 ――途端。クー・フーリンの目が険悪に歪む。世界が死ぬほどの怒り。それを感じた途端、辺りは緊張する。

「それはオレが力不足だから、とでも言うつもりか? ダレイオスの野郎を相手に力は見せたと思ってたんだが」
「充分に見た。その上で言っている。クー・フーリン、お前に敵大将は任せられない」
「――いちおう、聞いとく。なんでだ?」

 その答え如何ではこれからの関係に遺恨を残すことになる。そんなこと、分かりきっているのに、士郎に気負った様子は微塵もなかった。
 あくまで自然に。士郎は言う。

「なあランサー。今、ローマはどこにある?」
「あ?」
「ネロがローマで、カエサルもローマだ。……だが勘違いしてないか? 敵の大将はカエサルじゃない(・・・・・・・・)んだぞ」
「――」

 言われてみれば、そうだ。クー・フーリンはカエサルというビッグネームに、勝手にカエサルを倒すべき敵と思っていたが……更にデカい敵を、デカいが故に見落としてしまっていた。

「俺達は六人でもう一つ(・・・・)のローマに挑む。ランサー。クー・フーリン。
 あんたは。
 一人で。
 カエサルというローマと戦え」
「――は、」

 軋むように、嗤う赤枝の騎士。

「俺達は敵本丸に乗り込み、神祖ロムルス単騎と戦う。その間、カエサルが邪魔だ。カエサルと、ローマ全てを、神祖から切り離すヤツがいる。――それをあんたに任せる。敵はローマ。世界の中心だ。それと、一人で、あんたに戦えと俺は命じる」

「――はっ。ははは。ははははははははははは!!!!」

 クー・フーリンは腹を抱えて笑った。
 大いに笑った。これ以上なく爆笑した。

 ――わかってる! やはりこのマスターはオレの使い方をよくわかってやがる!!

「いいねぇ、いいぞマスター! その命令確かに承ったぜ! たまらねぇ、たまらねぇなぁ! オレに世界と(・・・)戦えと来たか!」

 こいつはバカなのか、それともとんでもなく豪胆な指揮官なのか。ああどちらでもいい、やはり振り切れたバカとつるむのは楽しいもんだ!
 笑い転げていたクー・フーリンは、しかし次の瞬間には真剣な顔つきとなった。片膝を地につき、槍と盾を置いて顔を伏せた。それは臣下の礼だった。
 マスターとサーヴァントではない、本当の主人として、クー・フーリンは士郎を認めたのだ。

「アルスターの赤枝の騎士、クー・フーリン。これより我が槍は御身のもの。如何様に振るうも我が主人の意のままに。命令を、マスター! いつでも出撃の覚悟は出来ている!」
「――槍を預かる。代わりに俺の命運を預ける。行け、派手に戦い、力と知恵と勇気の限りを尽くして、ガイウス・ユリウス・カエサルを打倒しろ」
「承知!」

 立ち上がり様、クー・フーリンは槍を掲げた。空に向けて大音声を張り上げる。
 さあ兄弟! 出陣の命が下った! オレの往く道にテメェらがいないんじゃ話にならねぇ! 往くぜ、往くぜ、往くぜぇ!

 轟く豪炎。
 光の如くに眩い炎が起こり、その中から二頭の竜馬が駆け()でる。
 黒塗りの鋼鉄戦車を牽き、手綱を握るのは御者の王ロイグ。戦車を牽く竜馬は馬の王と称えられた灰色のマハ、黒色のセングレン。クー・フーリン生誕より、死ぬまでを共に駆け抜けた希代の名馬。
 革鎧と、赤いリネンのローブを纏った大男は、無言で己の胸を叩いて戦友の主人に礼を示し、仕草だけで戦車に乗るようにクー・フーリンに促した。
 ははっ! 高揚するままに乗り込み、クー・フーリンを乗せた戦車は走り出す。炎を纏った羅刹の戦車は見る見る内に遠ざかる。クー・フーリンはこれ以上何も言わず、背を向けたまま槍を掲げて勝利を約した。

「――シロウ」

 呼ばれ、士郎が振り返ると、そこにはどこか機嫌の悪そうなアルトリアとオルタがいた。

「私が、貴方の剣です。それをお忘れなく」
「――何を言うかと思えば」

 士郎は呆れ返った。

「とっくの昔に、お前の剣は預かってるだろう」

 苦笑し、士郎はオルタに己の愛機のキーを渡した。

「ほら、行くぞ。着いたら全部ランサーが片付けてましたってんじゃ、あんまりにも締まりが悪いからな」
「はい」
「はいっ」

 したり顔でキーを受け取り、オルタが武器庫つきのバイクに跨がった。アルトリアもすぐにドゥン・スタリオン号に飛び乗り火を入れる。
 士郎は武器庫(サイドカー)に乗り込んだ。ネロにはアルトリアの後ろに乗るように言う。
 そんな士郎に、

「あ、あのっ」

 マシュが、焦ったように声をかける。

「わ、わたしは……わたしも! 先輩のために戦いますから!」
「は?」

 一瞬、呆気に取られ、士郎は間の抜けた声を発した。
 マシュの顔が青くなる。その反応が、怖いものに思えて――

「バカ。俺の隣にお前がいなくてどうする。嫌だって言っても離さないから覚悟しろ」
「は――はいっ!」

 その言葉に。
 弾けるような笑顔を咲かせて、急いでマシュはラムレイ二号のオルタの後ろに乗り込んだ。


「――ところで余のサーヴァント召喚はいつにする?」


 あ。

 ネロの言葉に、全員が思い出したような顔をして。

 どこかで暗殺者が呆れたように嘆息した。








 
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