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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第57話:怒り爆発

賢と子供達を伸せたトラックが凄まじい勢いで走り去っていく。

「逃がすか!!プラズマ…」

「ケイオスフレイム!!」

「ぐあっ!?」

ミサイルを放とうとした時、デーモンがマグナモンに向けて火炎を放った。

「…お前…」

火炎の直撃を受けたマグナモンはデーモンを睨み据える。

「一乗寺賢は私が手に入れると言ったろう…!!貴様らは私のしもべ達と遊んでいるがいい…!!」

デーモンが上空に手を翳すとデジタルゲートを開いてそこから…。

「デジタルゲートを開いた…それにあそこから…」

ヤマトは目を見開いてデーモンが単体で開いたデジタルゲートを見つめると、そこから暗黒系デジモンの群れが飛び出してきた。

「我がしもべ達だ。戦闘力自体は貴様らが倒したスカルサタモンには劣る…しかし…」

デジタルゲートから飛び出した暗黒デジモン達は街を攻撃し始めた。

「ああ!?」

「街が!?」

攻撃されていく街を見た京と伊織が悲痛な叫びを上げる。

「時間稼ぎにはなるだろう。さあ、早くしなければこの街が廃墟になるぞ。レディーデビモン、マリンデビモンよ」

「「はっ!!」」

レディーデビモンとマリンデビモンがデーモンの前に出現した。

「私自らが奴らを追う。お前達は時間を稼げ」

「「御意!!」」

それだけ言うとデーモンは闇に紛れてこの場を去り、アルケニモン達のトラックを追い掛けた。

「待ちやがれ!!」

「ここから先は通行禁止よ」

レディーデビモンが大輔達の前に立ちはだかる。

「一乗寺賢の体には我々に必要不可欠な物がある。貴様らに邪魔などさせんぞ…」

マリンデビモンが邪悪な笑みを浮かべながら言う。

「何で…どうして…?どうしてこんな酷いことをするのよ!?」

京が怒りながら叫ぶ。

それを聞いたレディーデビモンが呆れたように答えた。

「さっき言ったでしょ?あの坊やの体には私達に必要な物があるのよ。それを手に入れるために必要なことをやっている…もしかしたら開花するかもしれないしね…!!」

「開花…?何を言っているのかは知りませんが、私欲のために無関係な人達を巻き込むなんて許せません!!」

「それが何がいけないのかしら!?冷酷非情!!それが私達、私達の生き方を邪魔するのなら女子供でも容赦はしない!!あなた達も自分のやり方に刃向かう者を屠って今があるんでしょ!!やっていることは私達と同じよ!!」

「「違う!!」」

レディーデビモンの言葉に叫ぶ京と伊織だが、構わず言葉を紡ぐ。

「違わない!!自分達にとって“悪”と感じる存在を屠ってきたからあなた達は存在する!!力こそが全てなのよ。どちらのやり方が正しいのかは後世の歴史と勝利だけが決めること!!」

レディーデビモンは手を手刀の形にし、それを鋭利な槍にする。

「ダークネススピア!!」

レディーデビモンの攻撃の標的にされたのは京だった。

「っ!!」

「京さん!!」

反応が遅れた京の顔が驚愕に見開かれ、ホークモンが盾になろうとしても間に合わない。

「…………」

「くっ!?」

マグナモンが間に入り、レディーデビモンの腕を簡単に掴み、レディーデビモンが必死に振り解こうとしても、力の差がありすぎてびくともしない。

「お前の言う通りだよ。俺達は自分の前に立ちはだかってきた敵を倒してきたから今があるんだ。俺達がしていることはお前らと大差ないだろうな…でも…俺はお前達が許せねえ。俺は世界よりも仲間や家族が大事だ。その仲間を…」

拳を強く握り締める大輔。

力が強すぎたのか皮膚が傷つき、血が流れ始めた。

「てめえらの勝手な都合で振り回そうとしているのが許せねえ…!!」

「はああああ…ミラクルグリッター!!」

D-3Xが大輔の怒りをマグナモンの力に変えてくれる。

仲間を傷つける者は許さないという純粋な想いに奇跡のデジメンタルが応えてくれた。

「そ、そんな…この力は…!?」

「げ、限界がないのか!?」

黄金の閃光に飲まれたレディーデビモンとマリンデビモン…そして付近にいた暗黒デジモンを粉砕した。

「でやああああ!!」

マグナモンは金色の閃光となって街を荒らすデジモン達を粉砕していく。

「大輔とマグナモンだけに任せてられるか!!アグモン、もう少しだけ踏ん張ってくれ!!」

「うん、行くよ太一!!」

この戦いだけ保ってくれればいいとアグモン達は再び立ち上がって進化した。

完全体に進化してこちらに迫る敵を迎撃する。

限界が近くなっているのか、メタルグレイモン達の動きが鈍いが…それでも体を動かして戦う。

「「………」」

「京さん…」

「伊織君…」

隣で悩んでいるデジクロスのパートナーにタケルとヒカリは、ゆっくりと歩み寄る。

「京さん、戦いたくないなら私達に任せて下さい」

「伊織君も無理して戦わなくてもいい。無理する必要はないんだよ」

「怖いなら戦わなくていい。戦いは戦いたい奴がやればいいんだよ。」

前から言い続けていたことだ。選ばれし子供としての役目が、楽しい事ばかりだとは限らない。いや寧ろ辛い事の方が多いくらいだ。ヒカリとタケルは前回の戦いで、大輔も異世界の戦いでそれを知っているからこそ、まだ何も知らない伊織達にこうやって逃げ道を作ってやっている。

「「…………」」

「本当に無理すんな。賢のことは俺とヒカリちゃんとタケルに任せて帰れ」

精神的に脆い部分がある伊織と京に殺伐とした戦場は絶対に似合わない。

せめて2人だけにはこんな恐ろしい光景を見せたくなかった。

「さあ、早く帰れ」

大輔の声はとても穏やかで先程まで激怒していたとは思えない程である。

「大輔さん…でも…」

「私達だけ…」

「いいんだ、伊織、京…。お前らはいい奴だもんな…タケルも言ってたろ?無理しなくていいって…今までありがとな」

それだけ言うと大輔はマグナモンとブラックウォーグレイモン、なっちゃんの元に向かう。

「マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!アンノウンクロス!!」

「マグナモンBW!!」

マグナモンとブラックウォーグレイモンをデジクロスさせ、マグナモンBWにさせると、ドラモンキラーでデビドラモンを両断した。

「(良いんだろうか?大輔さん達に戦いを押し付けて逃げるなんて…)」

伊織の耳に家を破壊され、一組の夫婦が悲痛な声を上げた。

「(…これは、許される事なんだろうか。悲しむ人々を救える力を自分は持っているのに、戦いたくないからと、人々を見捨てる事が正しいんだろうか…?)」

今は亡き父…火田浩樹はこんな息子を見たら何と言うだろうと思い、伊織は表情を引き締めた。

「戦います…」

「伊織君…」

「上手く言えませんけど…ここで逃げたら、僕…一生後悔すると思います。僕も…戦います…」

伊織の目はまだ揺らいでいるが、タケルは伊織の覚悟を信じた。

「分かった、一緒に戦おう伊織君!!」

「はい!!」

タケルと伊織、アルマジモンも戦場に向かい、残されたのはヒカリと京とホークモンのみ。

「……どうして…こんなことになるの…?」

大輔、ヒカリ、タケル、伊織…そして賢とずっと一緒にいれれば、それだけで良かった。

楽しくデジタルワールドを冒険出来れば、それで良かったのに。

「京さん…」

「どうしてこんな酷いこと出来るのよ…!?何で…!?どうしてよ…!!?」

あまりにも酷い光景に京は泣いていた。

悔しくて悲しくて、街を平然と荒らす奴らが許せなくて、そんな言葉に言い表せない様々な感情が溢れ出したように、京の頬を涙が伝う。

賢を己の私欲のために振り回そうとするだけでなく無関係な人々まで戸惑うことなく巻き込むデーモン達に京が受け継いだ愛情が、純真が、その行為を許せないと叫んでいた。

「京さん…戦いましょう?」

「ヒカリちゃん…」

京の手を握り締め、ヒカリが強い光を宿した瞳で見つめる。

「京さんの気持ちは正しいんです。何もしないで後悔するより、精一杯やって後悔した方がずっといいですよ…大丈夫、京さんは1人じゃない。辛い時は私達が傍にいますから」

「………」

「私も敵を倒すことだけが正しいとは思ってません。大輔君達だってそうです。戦うことはとても辛くて苦しいこと。私だって出来れば戦いたくなんかない。誰かが傷付くところなんて、見たくない。でも、その苦しさとは絶対に天秤に掛けられない物があるんです。」

そう言ってヒカリは戦場の方を見遣る。

マグナモンBWが高機動を活かしてかなりのペースで倒していくが、まだデジモンの数は多く、街は攻撃されていく。

京は涙を拭ってヒカリに向き直る。

「ヒカリちゃん…私も戦う。何もしないで後悔するくらいなら精一杯がむしゃらにやってから後悔した方がマシだわ!!」

「はい!!」

ヒカリ達も戦場に向かい、参戦した。

「京!?」

「私も戦うわよ!!何もしないで後悔なんかしたくないもの!!」

「そうか、行くぞ!!マグナモンBW!!ロングソード!!マテリアルクロス!!…ブラックマグナブレード!!」

ロングソードがマグナモンBWのデータを得たことで黒を基調とした長剣となった。

「喰らえ!!」

剣に闇と光のエネルギーを纏わせた状態で振るうと、エネルギー波が暗黒デジモン達に炸裂した。

デーモンが繰り出した暗黒デジモン軍団を全滅出来たのは今から十数分後である。 
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