魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第百六十六話
前書き
ドイツ編!
某日早朝
「やー、すまんね。ブリュンヒルデ。子兎を連れてちょっと狼狩りに行ってきてくれ」
ドイツ軍戦略機動兵器実証試験大隊シュヴァルツェアハーゼ、彼らが身を寄せる基地の司令官の執務室で、千冬は基地司令と向かい合っていた。
「どういう事だゲオルグ。ここの防諜は完璧だと言っていたのは貴様だろう」
「ん? ああ、いや。スパイとかそういう比喩ではなくてだね、ホントに狼を狩って欲しいんだ。
この近くで家畜の被害と数名の重傷者が出ていてねぇ」
「何故我々に? そもなぜ私に? 話を通すべきはシュヴァルツェアハーゼ隊隊長のクラリッサだろう」
「君の言うことなら聞くだろうさ」
事実、千冬がその気になればクーデターを起こせる程度には千冬はシュヴァルツェアハーゼの面々に慕われている。
「はぁ……。正式な書類を用意してくれ」
「おお、助かるよ。最近周辺住民から情報開示要求があってねぇ。
ま、その代わりの地域貢献だよ」
同日 訓練後 ブリーフィングルーム
「という次第で明日の訓練は中止だ。狼狩りに行くぞ。
まぁ、ピクニックとでも思えばいい。とは言え重傷者も出ている。狼ごときに貴様らが負けるとは思わんが、気は抜くなよ。
なお作戦開始はヒトマルマルマルからだ」
ブリーフィングルームに集められたシュヴァルツェアハーゼの実働部隊に千冬が通告する。
命令書を受け取ったクラリッサは目を丸くした。
「きょ、教官。このEOSの使用許可と言うのは…」
「私が提案しゲオルグが許可した。
貴様らは基地内でしかEOSを動かした事がないだろう?
さすがにシュヴァルツェアシリーズの投入は無いが、国連が各国に配備しているEOSならばゲオルグも良しとしたのだろうな。
現在EOSの装備を外して狩猟用の散弾銃に入れ換えている」
シュヴァルツェアハーゼはISの試験運用大隊なのであってEOSを扱う隊ではない。
配備されているEOS五機も国連から配備された物をそのまま使っている。
「話は以上だ。解散」
パッとシュヴァルツェアハーゼが散っていく。
残ったのはラウラとクラリッサだけだ。
「今日もですか教官?」
とクラリッサが千冬に尋ねた。
「ああ、ラウラには軍隊以外を知る必要があるからな」
「教官、私などの為にわざわざ時間を割いて頂く必要は…」
「いいから来い。クラリッサお前もだ」
「ヤー」
千冬の部屋にて。
「こうでしょうか」
「そうそう。そこをこうやってだな…」
「できました」
「ああ、その調子だ。軍隊料理だけでは味気ないからな。普通の料理も覚えた方がいい」
キッチンに立ち、千冬はラウラに料理を教えていた。
「やー…眼福ですねー…」
「喧しいぞクラリッサ」
「いいじゃないですかー。まるで姉妹みたいですよ。教官とラウラちゃん」
「まぁ、実際ある意味では姉妹なのだがな」
「……………」
「黙るなよクラリッサ」
クスクスと千冬が笑う。
「どうしたのですか教官?」
「なんでもないよ、ラウラ」
千冬がラウラの頭を撫でるとラウラは嬉しそうに目を細めた。
翌 09:58
「えーっとー…うん…怪我しないように頑張ってねシュヴァルツェアハーゼの皆さん。
あ、噛まれても任務扱いだから保険降りるけど狂犬病にはきをつけてね」
基地指令ゲオルグの気の抜けるような訓示の後、シュヴァルツェアハーゼが基地から出立した。
ガション…ガション…とわざと遅く歩くEOSに歩調を会わせての移動である。
周辺住民は何事かと彼らを見る。
「目立ちますね…」
最後尾を歩くクラリッサが呟く。
「仕方あるまい。訳のわからない部隊が訳のわからない基地に配属されているんだ」
ふと、千冬が隣を見る。
「ラウラ、はぐれるなよ」
「私は子供ではありません!」
「まだ子供さ…。お前は軍以外を知らんだろう」
「ぅー……」
そのやり取りを微笑ましい姉妹のやり取りのように見るシュヴァルツェアハーゼ実働部隊。
それはまるで自分が子供のように、軍人でないように扱われているようで、ラウラはいっそう劣等感を覚える。
暫くして、シュヴァルツェアハーゼ実働部隊は近くの森林の入り口に到着した。
「分隊単位で散会。常に通信状況に留意」
クラリッサの指示でシュヴァルツェアハーゼが散会する。
五人分隊が四つ、三人の分隊が一つ。
各班に一機ずつEOSが配置されている。
「クラリッサとラウラは私と来い」
「教官ならEOSと張り合えますからね」
「私なんてまだまださ。弟ならISすら瞬殺するぞ」
「またまたご冗談を」
「ふむ……なら今度やってみるといい」
千冬は持ってきたブレードをベルトに装具で固定した。
クラリッサは散弾銃、ラウラは自動小銃だ。
「教官、それで宜しいのですか? 一切の火器を持っていないようですが」
ラウラが不思議そうにきく。
「火器は得意ではなくてな。いざとなればお前の銃を借りるさ」
「当たらないと思いますよ教官?」
とクラリッサが言った。
「なに、気合いで当てるさ」
六班がそれぞれ森に侵入した。
木々は青々としているが、そこそこの日光は地上に届いている。
木の間隔も刀を振るのに十分な程だ。
『千冬、フォールドリング使う用意しといて』
コアNo.001の人格アリスが千冬に語りかけた。
『そこまでか?』
『何か嫌な予感がする』
『……わかった』
千冬が胸元に手を入れ、ネックレスを取り出す。
首の後ろの止め金を外し、通していたリングを抜く。
「………一夏」
「教官? その指輪は…?」
「ん? これか?」
千冬がラウラの目の高さに指輪を持っていく。
「これはな、私の弟がくれた物だ」
「教官の弟…イチカ、ですか?」
「ああ。自慢の弟だよ。私より強いしな」
千冬は嬉しそうに笑いながら、その指輪を左の薬指に嵌めた。
その恋する乙女のような微笑みはとても美しい。
強く厳しく逞しい千冬が見せた、見た目不相応な表情。
クラリッサはその意外な一面をみて、千冬も自分たちと同じ年頃の女性だと悟った。
そしてラウラは、心をざわつかせた。
自分が信じていた物とは違う、普通の女のような千冬の顔に、僅かな失望を覚えた。
だがラウラはそれを自覚するには幼すぎた。
軍での経験しかないのだ。
「ふふ…」
「っ!」
「さて、では行こうか」
二人がヤヴォール! と続く。
山狩りを初めて20分ほどが経った。
千冬に対し通信が入った。
『こちら第二小隊。住民を保護しました』
「住民だと?」
『はい。例の狼に襲われたそうです』
「プロフィールは?」
『ヨセフと名乗っています。職業は樵。
加えて猟銃で武装しています。自衛の為だそうです』
「ふむ………では一度合流しよう。お前たちは動くな。今から向かう」
『ヤー』
ピッと端末をスリープモードにして、千冬が二人を見る。
「聞いた通りだ。合流するぞ」
千冬と連絡があった第二班とは一番遠く、最後に合流する事となった。
「それで、その樵のヨセフというのは?」
「はっ、こちらです」
シュヴァルツェアハーゼの隊員が案内した先にいた者はフードを被ったぼろぼろの格好をしていた。
ヨセフが、そのフードを取る。
「あはっ…ついてるな」
千冬は、その顔に覚えがあった。
「っ!? 総員! 奴から離れろ!」
千冬が腰に差した刀で居合一閃。
ヨセフは大きく飛び上がり、後ずさった。
ボトリ、とヨセフの左腕が落ちる。
「教官!?」
「総員撤退! 奴は普通じゃない! “人間じゃない"んだ!」
突然民間人に斬りかかった千冬に、シュヴァルツェアハーゼが目を見開く。
「いいのかいブリュンヒルデ? 大好きな部下に嫌われちゃうよ?」
「構う物か! 貴様から護るためなら嫌われようと私は構わん!」
「勇ましいねぇ……」
ヨセフ…否、カルタフィルスが半ばから絶たれた左手を掲げる。
刹那、その背後から羽音が鳴り始める。
ブワっ! と風を起こし、現れたのはキメラだった。
蝙蝠の翼、蟷螂の鎌、そして、白い狼の体。
「どうだい? このキメラは? フランスで捕まえた狼を使ってるんだ。
ジェヴォーダンビーストの末裔だよ。
随分と血が薄まってはいるけれどね」
「カルタフィルス、生命倫理という言葉を知っているか?」
「技術の進歩に犠牲は付き物さ」
「下衆が…!」
キメラが、その顋を開く。
キィィィィィン………! と不快な音が響く。
千冬が咄嗟に遮音防壁を張ろうとした瞬間。
キメラの口から光条が放たれた。
「伏せろ!」
が、動揺していたシュヴァルツェアハーゼの隊員は初動が遅れた。
その内の一人の脇腹が、運悪く光条に貫かれた。
貫かれたのは、銀髪で、背の低い、少女だった。
悲鳴が上がる。
シュヴァルツェアハーゼは女性だけの部隊。
訓練の成績だけで集められた、『実戦経験を持たない』精鋭部隊。
「ミラージュ!」
千冬が左手を突き出すと、空気が揺らめき、光条を閉ざした。
「止血急げ!………何をしている! 落ち着けバカども!」
千冬の一喝に落ち着きを取り戻したシュヴァルツェアハーゼがラウラの傷を止血する。
「カルタフィルス…!」
千冬が掲げた左手を戻し、刀を構える。
「アリス! シンクロ!」
『シンクロナイズ・プリケイティブ・キャスト・サポート・システム起動』
右手の人差し指と左の薬指に着けた指輪が淡く輝く。
「闇の刃よ全てを斥け以て万物を絶て!」
千冬が構えた刀を横に一閃する。
十メートルほど間が空いているにも関わらず、カルタフィルスとキメラは飛び上がり、斬撃の延長線上から逃れる。
「お前たち! 私の後方90度から出るなよ!」
そこから千冬ががむしゃらに刀を振り回す。
刺突以外の全てを高速で幾度も繰り返す。
数十の斬撃を放った千冬は最後に四股を踏むかのごとく脚を地面に叩き着けた。
踏んだ場所にマジックサークルが展開し、地震が起こる。
そして、ガラガラと木が崩れ落ちた。
ちょうど千冬の正面60メートル120度が扇状に開ける。
そして、その中の動く者は居なかった。
「逃げ足の早い奴め」
千冬がコアNo.001.0のハイパーセンサーで周囲を探ったが、反応は皆無だった。
それはつまりカルタフィルスが先の攻撃を全て避け、ハイパーセンサーの範囲外に逃げ仰せたことをしめしていた。
「クラリッサ」
「は、はいっ!」
「後退するぞ。山狩りはまた今度だ」
「ヤヴォール!」
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