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思わぬ助け

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第一章

               思わぬ助け
 唐代初期の話である、天下は隋が滅んだ時の大乱からかなり落ち着き北の突厥との戦もなくなっていた。
 盗賊達もめっきり少なくなり天下は泰平を謳歌していた。それは冀州に住む豊かな庄屋李照も同じであった。
 父がこの前亡くなり今は美貌の妻である蓮花と共に住んでいる、蓮花は優しく気立てがよくしかもよく働く優れた女房だった。
 元々はある家から四人の娘達の末の娘で一人家に残っていたので妾でもいいから是非貰って欲しいと父が言われたのだがその娘を一目見てだった、李の父はその家の主である年老いた男に言った。
「見たところ娘さんは非常に聡明だ、しかも何かを宿している」
「何かを」
「そう、何か凄いものを持っておられる方なので」
 それでというのだ。
「わしの様な年老いた者の妾になぞ勿体ない」
「しかしこの娘もすっかり行き遅れてしまっていて」
「確かに多少歳は経ておられる」
 見れば二十五は超えている、三十近いであろうか。当時ではもう行き遅れもいいところの年齢である。
 しかしその娘を見てもだ、李の父は言ったのだ。
「しかしです」
「それでもですか」
「娘さんは非常に素晴らしい方」 
 このことがわかるというのだ。
「ですから」
「貴方の妾にはですか」
「しませぬ」
 このことをはっきりと答えた。
「それには勿体ない」
「ですがもう娘は」
「実はうちの跡取り息子が今一人です」
 李の父はここで彼のことを話した。
「嫁を迎えていたのですが流行り病で」
「そうでしたか」
「孫が二人います、上が男で下が女です」
 李の父は老人にこのことも話した。
「ですが」
「それでもですか」
「はい、今息子は妻がいません」
「では」
「はい、後妻になりますが」
 それでもというのだ。
「今は独り身なので」
「それで、ですか」
「息子の妻に下さい」 
 その娘をというのだ、こうして蓮花は李の妻となった。蓮花は血のつながらない李の先妻の子達にもとても優しくまたよくものを教えていたので李の子供達も彼女によく懐いていた。
 何の欠点もないと言っていい妻だった、だが李はその妻を見て思った。
「どうしてなのだろうか」
「ああ、あんたの奥さんか」
「蓮花さんのことか」
「そうだよ、あんな出来た女がな」
 それこそとだ、李は親しい者達に話した。
「ずっと長い間一人だったのか」
「嫁の貰い手がなかったのか」
「そのことか」
「ああ、それがな」 
 どうにもと言うのだった。
「不思議でならないよ」
「確かにそうだな」
「あんたの奥さんは凄い人だ」
「ただ奇麗なだけじゃない」
「賢くて働き者で優しい」
「しかも面倒見がいい」
 非常に優れているというのだ。
「そんな人がどうしてこれまで結婚していなかったのか」
「それは不思議だな」
「確かにな」
「全くだ、私の妻になったのはいいが」
 それでもとだ、李はいぶかしみながら言った。 
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