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永遠の謎

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628部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその五


第三十六話 大きな薪を積み上げその五

「ただ。お身柄を保護する為には」
「ご無礼があっても」
「多少のことはあっても」
「それは仕方ないかも知れません。陛下はご長身でしかもお力もありますから」
 王の長身がここでは考慮されるものになった。
「御薬を使うこともあるでしょうし」
「クロロフォルムですか」
「あれが一番です」
 王を。彼等から見れば保護するにはだというのだ。
「とにかく。陛下に害することはあってはなりませんね」
「はい、それはまことに」
「それだけは」
 彼等は少なくとも王を害するつもりはなかった。だがそれでもだ。彼等は王をその玉座から退かせることを決定したのだ。バイエルンの為に。
 会議の決定をホルンシュタインから聞いてだ。大公は。
 項垂れた顔でだ。こう彼に言ったのである。
「ではいよいよだな」
「はい、陛下の御前に向かいです」
「あの方に退いてもらうか」
「既に大公殿下の摂政就任の発表の準備もできています」
「全ては順調だな」
「ではお願いします」
 大公のまだ躊躇が見られる顔を見てだ。ホルンシュタインは決断を促した。
「その様に」
「わかった。ただ、だ」
「ただといいますと」
「私は一つ考えていることがある」
「それは何でしょうか」
「あの城達だ」
 王が築いているだ。その城達のことを話すのだった。
「陛下はあの城、ノイシュバンシュタインをお亡くなりになられたら消す様に仰っているな」
「はい、その通りです」
「あの城、いやどの城も残すべきだ」
 そうするべきとだ。大公は言うのだった。
「そして誰からも観てもらうようにしたい」
「それが殿下のお考えですか」
「いいと思うか」
「あれだけの巨費を投じてのものを消すのは無駄の極みです」
 ホルンシュタインの現実の利益の観点から話した。
「それはいいことです」
「そうか。それではな」
「しかし。何故そう主張されるのです?」
 大公の考えに賛成はしたがだ。ホルンシュタインは怪訝な顔で大公にその理由を問うた。
「城達を残されるべきとは」
「思うところがあってな」
 それでだと答える大公だった。
「それでだ」
「何かわかりませんがそれならいいと思います」
 やはり下世話な言葉では損得勘定から頷くホルンシュタインだった。
「何はともあれです。私はこれからグッデン氏と共にです」
「陛下の御前に向かうか」
「はい、そうさせてもらいます」
 こう言うのだった。
「そして陛下を」
「一年と一日だな」
「それだけの間です」
 期限がだ。語られた。
「それだけの間、陛下には我慢して頂きます」
「わかった。しかし問題はだ」
「ベルリンですか」
「ビスマルク卿は陛下にベルリンの議会に援助を要請されるよう助言されているが」
「それは知っています」
 ホルンシュタインも知っていた。そのことはだ。
 それでだ。彼は今はこう言うのだった。
 
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