カブソ
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第五章
女は自分はコーヒーを飲みつつミルクティーを飲む二人に道頓堀のことを昔から話していった。それは昭和はおろか明治の頃からだった。
瓦の建てものが並び着物に帽子、パラソルの身なりの者達が行き交っていた。その頃のことから話した。
大正になりハイカラになり昭和になってコンクリートも出来てだ、そのうえでなのだった。
空襲を受けて復興した、そうしてまた賑やかさを取り戻した。その中でだった。
「阪神も出て来たわ」
「阪神のカラーも」
「それもですか」
「そや、あと二リーグになるまで普通に強かったしな」
それまでの阪神はというのだ。
「戦前もな」
「ああ、そういえばそうでしたね」
「阪神ニリーグまでは強かったですね」
「ダイナマイト打線もあって」
「それで」
「もっとも戦前はこんなに色濃くなかったな」
道頓堀の阪神のそれはというのだ。
「もっとも」
「そうでしたか」
「その頃は」
「戦後強くなってな」
それでというのだ。
「今はな」
「この通りですか」
「道頓堀の一色になっていますか」
「そや、あと外国からの人は」
女もこの人達について言及した。
「昔はほんまな」
「いませんでしたか」
「そうでしたか」
「最近やで」
この辺りは麻友が言う通りだった。
「ほんまな」
「そうですよね、やっぱり」
「このことは」
「そや、まあそれもええことやろ」
女はコーヒーを飲みつつ二人に笑って話した。
「世界中の人が道頓堀、大阪の素晴らしさを肌で知ってくれるんや」
「そう思うとですね」
「そのこともいいことですね」
「うちはそう思うわ。大阪が外国人に占拠されたとかな」
そう言うことはというのだ。
「そう言うことはな」
「了見が狭いですか」
「そういうことですか」
「そう思うわ、これまで話した通り道頓堀はどんどん変わってる」
「それならですね」
「外国の人達が増えても」
「どないしやんや」
こう言って住むことだというのだ。
「それで済むわ」
「そうですか」
「それ位のことですか」
「これまでも変わってきたしこれからも変わる」
道頓堀、ここはというのだ。
「けれど一つ変わらんことがある」
「それは何ですか?」
「変わらないことは」
「ここが明るくて賑やかでええとこやってことや」
このことは変わらないとだ、女は笑って言い切った。
「このことはな」
「変わらないですか」
「そのことは」
「そや、明治から変わらんかったし空襲でもや」
この大きな惨劇があったがというのだ。
「それでも変わらんかった」
「それならですか」
「そのことは何があってもですか」
「変わらん」
女はまた言い切った。
「大阪、道頓堀がある限りな」
「そうですか」
「ここが素晴らしいところということは」
「そや、賑やかで食べものも美味しい」
そうしたところはというのだ。
「絶対に変わらへんで。そやから自分達もな」
「これからもですね」
「ここに来て楽しめばいいですね」
「そういうことやで」
女は二人ににこりと笑って話した、そしてだった。
二人にそれからも色々と話した、話が終わった時にはもう夜になっていた。麻友も葵も既に家にスマホで連絡を入れていたので問題なかった。
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