デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第25話:ヴェノムヴァンデモン
起こす方法が分からず、誰もが不安を隠しきれない中、空気を読めない者も当然いる。
「なあなあ、擽れば目を覚ますかな?」
「やってみようぜ!!」
「止めねえか馬鹿共!!」
ブイモンとテイルモンの何故か介入不可能な空間が消え(因みに介入しようとした馬鹿者は女性陣に連行されたのは言うまでもないだろう)、悪戯をして起こそうとする渋谷コンビにハニービーモンが叫んだ時、変化が起きた。
「ヒカリちゃん、おばさんとおじさんが…」
「お母さん!お父さん!!」
両親に駆け寄るヒカリだが、ヒカリの両親…否、捕らわれていた人々は上半身を起こし、両腕を前に突き出した体勢で何かを呟いていた。
何の感情も込められていない無機質な声で紡がれるのは、アンデッドデジモンの王の名。
【ヴァンデモン様…ヴァンデモン様…ヴァンデモン様…ヴァンデモン様…ヴァンデモン様…ヴァンデモン様…ヴァンデモン様…ヴァンデモン様…】
「お母さん…お父さん…?」
ゾッとなって後退するヒカリを咄嗟にテイルモンが支えた。
「ちょっとちょっと…本気で何事よこれ…?」
「あ、姉ちゃん。いたんだ」
「結構前からいたわよ!!あんた達が気付いてなかっただけで…さっき私達と一緒に来た人も今も眠っているだけって言ってたわ」
「眠っているのに何で?」
「さあ?」
ジュンもお手上げとばかりに首を振った。
「ふむ…」
「賢君、どうしたの眉間に皺寄せちゃって?」
顎に手をやりながら考え込んでい賢に気付いたミミが尋ねた。
「いや、まるであのヒント…予言のようだと思いましてね。あったでしょう?“人々が、アンデッドデジモンの王の名を唱えた”とね。」
【あ…】
賢の言う通り、確かに今の状況とあの予言は当てはまるではないか。
もしかしたら予言が現実のものとなろうとしているのかもしれない。
頭を悩ませている最中も人々はアンデッドデジモンの王の名を呟くのを止めない。
この場に満ちる不気味さと狂気が加速するのを感じた。
少しして、ヤマトとヤマトの父親の裕明、そして光子郎と光子郎の両親を連れた悠紀夫が部屋の中の異常さに目を見開きながら、険しい表情を浮かべた。
「これは…蝙蝠の予言だけでなくアンデッドデジモンの予言まで的中するとは…」
「蝙蝠の予言も当たったのか?タケル?」
「うん、空を沢山の蝙蝠が覆ったんだ。そして倒れていたデジモンを…」
思い出して寒気がしたのか、タケルは身震いした後、腕を擦る。
蝙蝠が身動き出来ない、抵抗する暇すら与えられないうちに食い尽くされる光景はあまりにも凄絶な物だった。
「蝙蝠、そしてアンデッドデジモンを呼ぶ声…か…」
「ならば3番目の予言…“時が獣の数字を唱えた時、アンデッドデジモンの王は獣の正体を現した”…これは一体何なんでしょう…?」
「大体その獣の数字って何だよ?」
「666…ヨハネの黙示録に出てくる数字のことだ」
賢達の疑問に答えたのは裕明である。666を時間にすると…。
「ちょっと待て、そのヨハネの黙示録とやらを時間にすると…6時6分6秒じゃねえか?」
ハニービーモンの言葉に全員がハッとなった。
「今…何時だ…?」
ブイモンの疑問に太一がデジヴァイスの時計を確認した。
「………もうすぐだ…」
現在の時刻は丁度6時。
もしこの予言が本物ならば、ハニービーモンの推測が正しければ、後6分しか残されていない。
「車で行こう!!」
太一とヤマトはパートナーを連れ、裕明が運転する車でヴァンデモンと戦った建物付近へと向かっていった。
残された面子は…。
「………」
「大輔君、お兄ちゃん達大丈夫かな?」
「大丈夫、今は太一さん達を信じて、俺達はすぐに動けるように体を休めとこう。」
1年間もの戦いで培った経験から大輔は休めるうちは休むことにしていた。
少しでも万全な状態で予言に記された脅威に抗うためにだ。
「ふっ、良い判断だね。確かに今のワームモン達は体力が万全じゃない。休める時は休むべきだ。」
「ビッグサイトには確かコンビニがあったよな、あそこで食べ物を取ってこよう。少しでも万全な状態で挑もう」
体力とエネルギーの補給を最優先させるべきだと大輔は判断し、コンビニに向かうことに。
「随分と冷静な判断ね」
「前に無茶してブイモンが進化出来なくなってエラい目に遭ったからなあ…」
「ああ、無茶してお腹を空かしたブイモンが進化出来なくなって、しばらくグルルモンに追いかけ回されたもんね…」
遠い目をする2人。
あれは無茶は禁物と言う神様からの注意だったのだろうか?
「大輔、チョココロネにメロンパンにジャムパン、クリームパン、こしあんパン、新発売のアップルカスタードクリームパンが食いたーい。テイルモンはネズミだからチーズでいいだろ」
「黙れ!!と言うかそんなに食べるのあんた?」
「ブイモンの胃袋はブラックホールだよ。僕はおにぎりが食べたいな」
「…コンビニの人達も今は非常事態だから許して…くれないよなあ…とほほ…」
「だ、大輔君。私もお金出すよ!!」
「まあ、僕もお金を出すよ」
「ヒカリちゃん…賢…!!俺の財布の救世主だー!!って言うか母さんも今回くらい払ってくれてもいいじゃん」
「駄目よ、ブイモンの世話はあなたがするのよ」
「ドケチ」
ケチな母親にむくれながら食料を求めてコンビニに向かう大輔達。
しばらくして薄くなった財布を嘆かわしく見つめている大輔が帰ってきた。
「美味い美味い♪」
「…美味しい…」
ブイモンはパンをバクバクと食べ、テイルモンはチーズ入り蒲鉾を食べていた。
「(本当にテイルモンはネズミなんだね)」
「ヒカリ、何か言った?」
「ううん、別に」
怖い顔になってヒカリを見遣るテイルモンに対してヒカリは満面の笑顔で答えた。
「もう少し静かに食べなよ…」
一番静かに食べているのはワームモンだった。
他のメンバーも空腹では戦えないからとコンビニに向かっていった。
「俺達も何か食いに行こう!!」
「賛成!!」
「ポイズンパウダー!!」
「スノーボンバー!!」
「「あががが…」」
毒鱗粉で麻痺し、雪球に埋もれた渋谷コンビ。
しばらくして全員が空腹を満たした後に太一達が戻ってきた。
復活したヴァンデモン…ヴェノムヴァンデモンの姿はビッグサイトからでも視認出来ていた。
「ヴェノムヴァンデモン…ヴァンデモンらしい姿と言えばそれまでだけどな…」
「みんなをどこかに移せないか!?」
「いや、無理だよ。我々だけで全員を避難させるのは不可能だ。」
大輔がヴェノムヴァンデモンを見つめながら呟く。
そして太一の問いに悠紀夫が今も尚、ヴェノムヴァンデモンの名を呼んでいる人々を見遣りながら言う。
ここにいる全員を運ぶなど、デジモンの力を借りても時間が圧倒的に足りない。
「だったら方法は1つ。単純明快…ヴェノムヴァンデモンをデータの塵一つ残さず消し飛ばしてやる!!それだけだ!!」
「ふん、確かにそれ以外に方法はない。今度こそ闇に葬ってやる。」
エネルギー充填完了。
フルパワー状態のブイモンが覇気を放ちながら叫ぶ。
テイルモンもまた今度こそヴェノムヴァンデモンを仕留めると心に決めた。
「よし、少数精鋭で向かおう。ヴェノムヴァンデモンの所に向かうのは僕、ブイモン、テイルモン、パタモンだね」
【ええ~!?】
「お前達が行っても危険すぎるんだよ。今は状況を見てな…庇うこっちの身にもなれよ」
「いくら満腹になっても体力までは全快じゃないでしょ?あなた達は残っていなさい。」
少なくてもブイモン達ならばヴェノムヴァンデモンと戦える可能性がある。
ヴェノムヴァンデモンの攻撃を受けて簡単に戦闘不能になる仲間がいては庇うのも大変だ。
だからここに残ってもらう。
「悔しいけど、テイルモン達の言う通りよ。みんな、そうしよう」
そう言ったのは、他でもないピヨモンだった。
ヴァンデモンにさえ敵わなかった自分達が行ったところで足手まといにしかならないと思ったのだろう。
当然納得出来ない者もいるわけで。
「ちぇ、何だい何だい。後輩の癖に…」
ボツリと呟いたゴマモンだが、しかし不運にもブイモンに聞かれて背後を取られていた。
「独り言ならもう少し聞かれないように気を配るんだったな…ブイモンコンビネーション!!」
「あああああああ!!!?」
「よし、行こう」
頭にたんこぶの山を築き上げ、顔に青痣を作り、全身蓑巻きにされたゴマモンが床に転がった。
「「はーい…」」
「容赦ないわね…」
「何だテイルモン知らないのか?口で言っても分からない奴は拳で黙らせろって言葉を?」
「知らないわよそんな言葉…」
げんなりした表情を浮かべるテイルモン。
車を悠紀夫にも出してもらい、大輔達増援組はそちらに乗ることに。
「………ほんの数日前までは平和…とまではいかないけど普通だったのにな」
荒れ果てた街並みを見遣りながら大輔は呟く。
「後悔しても始まらない。今はそれよりも僕達に出来ることをしよう」
「…ああ」
近くまで来た大輔達は即座に飛び降りたブイモン達を進化させた。
「デジメンタルアップ!!」
「ブイモンアーマー進化、マグナモン!!」
「ワームモン進化、スティングモン!!スティングモン超進化、ジュエルビーモン!!」
「テイルモン超進化、エンジェウーモン!!」
「パタモン進化、エンジェモン!!」
マグナモン、ジュエルビーモン、エンジェウーモン、エンジェモンの4体が勢い良く突撃した。
「スパイクバスター!!」
「ホーリーアロー!!」
「ヘブンズナックル!!」
ジュエルビーモン、エンジェウーモン、エンジェモンの3体が必殺技を叩き込み、少し揺らいだところをマグナモンが飛び込んだ。
「マグナムパンチ!!」
勢いを加算した一撃はヴェノムヴァンデモンの巨体を大きく揺るがしただけでなくヴェノムヴァンデモンを転倒させた。
「効いたか…」
「そのようだ…邪悪な力め…」
「もう一度、滅ぼしてくれるわ」
「みんな、気を引き締めて…来る!!」
槍を構えたジュエルビーモンが言うとヴェノムヴァンデモンが動き出す。
「ヨクモ…」
「ん?」
「ヨクモ、ヤッタナアアアア!!タイラントサベージ!!」
「マグナムパンチ!!」
起き上がった瞬間、憤怒の表情で巨大な腕を振るうヴェノムヴァンデモンに対してマグナモンも拳を振るって激突させた。
威力は全く互角。
ヴェノムヴァンデモンも、そして体格差をものともしないマグナモンも全く揺るがない。
「エンジェウーモン、ジュエルビーモン、エンジェモン!!マグナモンのサポートを!!」
「「「分かった」」」
現状、まともなダメージを入れられるのはマグナモンだけなら、攻撃しやすいように仲間達にサポートしてもらう。
「ヴェノムインフューズ!!」
「ミラクルグリッター!!」
ヴェノムヴァンデモンの光線とマグナモンの光が激突し、拮抗する。
マグナモンはヴェノムヴァンデモンに気付かれないように顔を潜めた。
「(どうしたんだ俺は!?体に思うように力が入らない…まさか…)」
「ヘブンズチャーム!!」
ヴェノムヴァンデモンの顔面に光線が炸裂し、攻撃の勢いが弱まり、マグナモンの光はヴェノムヴァンデモンに炸裂。
威力の大半が殺がれたのか、ヴェノムヴァンデモンの外郭を焦がす程度だが。
「プラズマシュート!!」
両手の間からプラズマ弾を作り出し、一気に発射したが、プラズマ弾は見当違いの方向に飛んでいく。
「なっ!?」
マグナモンも目を見開きながら驚愕するとエンジェモンが尋ねてきた。
「どうしたんだ!?何が…まさか、パワーが大きすぎて制御出来ないのか…?」
「くっ、こんな時に…!!」
「また来るぞ!!みんな!!」
マグナモンが溢れ出るエネルギー制御に手間取っていた時、大輔が叫んで注意をうながす。
再びヴェノムヴァンデモンが攻撃体勢に入っていた。
口から灼熱の業火を放とうとしているのだ。
「インフェルノ!!」
「ライトオーラバリア!!」
バリアを展開して防御すると大きく飛翔して巨大なプラズマ弾を作り出す。
「これなら外さねえ!!こいつで完全に消え去ってしまえええええ!!」
ヴェノムヴァンデモンの巨体すら容易に飲み込みかねない巨大な電撃の塊がヴェノムヴァンデモンに向かって落ちていく。
「……グアアアアアア!!」
ヴェノムヴァンデモンは逃げるのではなく両手を前にして受け止めた。
「なっ!?これを受け止め…この…いい加減にくたばれえええ!!」
プラズマ弾に更なるエネルギーを注ぎ込み、巨大化、更に強化するがヴェノムヴァンデモンはそれでもヴェノムヴァンデモンも耐え抜く。
「マグナモンの攻撃も効かないのかよ!?」
「いえ、違います。パワーが強大過ぎてマグナモン自身が制御出来ていない。今のマグナモンは最初に進化した時の半分…それ以下のパワーかもしれませんよ?」
人間である賢から見ても最初に進化した時と比べて明らかにパワーダウンしている。
それでも完全体の力は遥かに凌駕しているが。
「グググ…畜生…ゴキブリ並みかそれ以上にしぶと過ぎるんだよお前…!!」
「グアアアアアア!!」
マグナモンとヴェノムヴァンデモンの力比べが続く。
それを見た悠紀夫はパソコンを開いて光子郎に向き直る。
「光子郎君だったかな?」
「え?はい…」
「もう一度予言の続きを確かめてみよう。もしかしたら、この状況を打開出来るかもしれない。」
「…はい!!」
光子郎と悠紀夫はパソコンを開いて予言の解読を開始した。
「この“天使達がその守るべき者の最も愛する人へ光と希望の矢を放ち、聖騎士が守るべき者の最も信頼する者に奇跡の光を放った時、奇跡が起きた”と言う天使達と言うのは、恐らくはあの2体を指しているのだと俺は考えている」
悠紀夫が見つめるのはマグナモンとヴェノムヴァンデモンの力比べの余波からみんなを守っているエンジェモンとエンジェウーモンの姿。
「はい、僕もそうだと思います。そしてこの聖騎士は…」
「恐らくはマグナモンのことだろう。一応マグナモンのデータを調べてみてくれ」
光子郎がデジモンアナライザーでマグナモンをスキャンすると確かに聖騎士型と出た。
「では、あの3体の守るべき人は大輔君、ヒカリさんにタケル君…。次は最も愛する人と信頼する者だけど…」
「大輔君が最も信頼する人物と言えば、一乗寺賢君だ。何度も背中を任せてきた親友…それ以上に信頼出来る者などいないさ」
悠紀夫は大輔が信頼する人物は賢だと確信する。
そして次の問題は…。
「なる程、ではヒカリさんとタケル君の愛する人…」
「ふむ…恋愛ではないのは確かだろうが…」
タケルとヒカリはまだ恋愛を意識するような歳ではないし…光子郎が頭を悩ませる。
「親愛…家族だよ、親、兄弟だ。」
光子郎の父、政実の助言を得て予言の謎は殆どクリアした。
しかし…残りの問題が存在する。
「でも、この“矢”と“光”の部分は一体…」
「光の部分は分からないけれど、ローマ神話に出てくるキューピッドは愛の矢を放つわ!!」
光子郎の母、佳江の言葉に賢はハッとなる。
「なら、話は簡単です。太一さんがエンジェウーモンの光の矢を、ヤマトさんがエンジェモンの希望の矢を、そして僕がマグナモンの奇跡の光を浴びればいいんです。そうすればこの状況を打開する何かが生まれるはず…」
「ちょ、そんな簡単に決めて大丈夫何ですか!?」
「だったら他に方法があるんですか?ヴェノムヴァンデモンを確実に倒す方法が…」
他に打開策があるのかと聞かれた光子郎は口を閉ざすしかなかった。
「確かに…他に方法がないなら…」
「やってみる価値はあるな…」
太一とヤマトもそれしかないと悟ったらしい。
「大輔!!マグナモンの奇跡の光を!!」
「エンジェウーモンの光の矢を!!」
「エンジェモンの希望の矢を!!」
「俺達に向けて放つんだ!!」
「でも、そんなことしたら…」
「お兄ちゃん達が死んじゃうかも…」
ヒカリとタケルが躊躇する中、大輔はマグナモンに指示を飛ばした。
「マグナモーン!!こっちに戻ってきてくれーっ!!」
「いや、戻れと言われても…」
「当てなくてもいい!それを爆発させてヴァンデモンを吹き飛ばせー!!」
「そ、そうか!!行けえええ!!」
鎧の両肩、両腰のミサイル格納部が展開され、そこから合計8発の誘導ミサイルが発射された。
誘導ミサイルはプラズマ弾に吸い込まれていき、大爆発を起こしてヴェノムヴァンデモンを転倒させた。
そしてマグナモンはすぐさま大輔の元に戻る。
「大輔、どうしたんだ?」
「実は…」
大輔はマグナモンに手短に説明する。
この状況を打開するために賢に奇跡の光を放って欲しいと。
「…いいのか?」
どちらも死に繋がる結果になりかねない。
マグナモンは本当にいいのかと尋ねた。
「頼むよマグナモン。どうせこのままやっても状況が悪化していくだけさ」
「だったら少しでも可能性がある方法を取らないとな」
「そうだな、頼む!!」
「よし…ヒカリちゃん、タケル…準備はいいよな?」
「「…うん」」
マグナモンとエンジェウーモン、エンジェモンが並ぶ。
「賢ちゃん…」
「ジュエルビーモン、心配しないで僕が死ぬわけないでしょ?」
「僕じゃないだろ?僕達だ」
「まあ、そうですね…」
賢の言葉にヤマトが訂正を入れるとジュエルビーモンは溜め息を吐いた。
「仕方ないな…」
「「止めないの!?」」
アグモンとガブモンがジュエルビーモンを見上げる。
「ああなった賢ちゃんは止められないんだ。大輔にしかね。その大輔もやる気なんだ。誰にも止められない」
「俺の無茶はいつもの事だろう?」
「ここは俺達に任せろ!…怖いか?」
太一がアグモンに問い、続いてヤマトもガブモンに言った後、太一に問う。
「怖くない…と言えば嘘だ…」
「俺もだ…」
顔を見合わせるヤマトと太一の2人はお互いの手を強く握り締める。
「俺が逃げないようにしっかり掴んでいてくれ…」
「俺の方こそ…おい、お前も入るか?」
「僕はマグナモンと大輔を信じているので、どんな状況も馬鹿みたいなとんでもないパワーで必ず何とかしてくれる大輔達を、だから僕はこのままでいいです。」
失敗するとは微塵も思っていない。
大輔と賢の付き合いの長さを感じさせた。
「ヴェノムヴァンデモンが動き出した。3人共、急いでくれ!!」
大輔が促すと3体は頷いて準備に取り掛かる。
「ヒカリちゃん、タケル!!エンジェウーモン達を信じるんだ。太一さん達を信じるんだよ!!」
「大輔君…うん、分かった…私の光を!!」
「僕の希望を!!」
3人の紋章の輝きがそれぞれのパートナーにエンジェウーモンとエンジェモンは矢をマグナモンは光を。
「奇跡を信じよう…」
「奇跡を…」
「奇跡よ…起きろ!!」
マグナモンが叫んだ瞬間、光と矢がそれぞれの対象にぶつかった。
「アグモンワープ進化、ウォーグレイモン!!」
「ガブモンワープ進化、メタルガルルモン!!」
「ジュエルビーモン究極進化、バンチョースティングモン!!」
光が収まると、3体の究極体デジモンが生まれると言う奇跡が起こっていた。
しかもそのうちの1体はロイヤルナイツにも劣らないバンチョーの1体だ。
「さあ、始めようぜ。本当の戦いを…!!」
マグナモンの力強い言葉が周囲に響き渡った。
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